1年以上続くコロナ禍のなかで、何となく景気が悪いなと肌で感じている人も多いよう。それなのに日経平均株価がなぜか高水準をキープしているのは不思議に思いませんか？ そのからくりについて、森永卓郎さんに教えていただきます。
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今月解説いただいたのは
エコノミストの目線で見る！森永卓郎さん
経済アナリスト。日本専売公社（現たばこ産業）ほか数々の企業に勤務後、現在は獨協大学教授。専門分野はマクロ経済、計量経済、労働経済、経済政策。『がっちりマンデー‼』（TBS）、『情報ライブ ミヤネ屋』(YTV)などにレギュラー出演中。むずかしい経済を明快に解説するわかりやすい語り口に定評がある。
日経平均株価3万円突破ってすごいこと？
3万円台をつけるのは、1990年8月以来、30年６カ月ぶり
なぜバブルが起きるの？
誰かが投資した商品が値上がりして利益を得る
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それを見た周りの人が買い、より値上がりする
▼
買わないと儲け損なうと考えた人が買い、さらに値上がり
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本来の価値よりグンと高値に
＼森永卓郎さんが考える／日経平均株価の現状と今後
■今は投機家が株価を吊り上げている状態
■景気回復後の金融引き締めで暴落の可能性あり
■アメリカの長期金利が2%になったら黄色信号、3％になったら赤信号
■バブル崩壊後に株価が今の1/3になる危険も
日経平均株価が高いのはバブルが起きているため
日経平均株価が約3万円前後の高値となっています（2021年2月末時点）。新型コロナウィルスの感染拡大で景気が悪いのに、なぜ株価が上昇しているのでしょうか。私は、バブルが起きているからだと思います。
かつて17世紀のオランダでチューリップの球根に家1軒分の値段がつくバブルが起きて以来、人類は100回近いバブルを経験してきました。
バブルのメカニズムは簡単です。①誰かが投資した商品が値上がりして利益を得る、②それを見た周りの人が買うから一層値上がりする、③今買わないと儲け損なうと考えた人々が買いさらに値上がりする、というものです。こうした事態が続くと、投資商品の価格は本来の価値を無視して上がり続けます。それがバブルなのです。
金融引き締め政策で株価が暴落する可能性も
ただしバブルは必ずはじけます。私は、今の株価バブルは崩壊寸前だと考えています。ノーベル経済学賞を受賞したアメリカのロバート・シラー氏、そしてジョン・キャンベル氏が、シラーPERと呼ばれる株価の割高指標を開発しました。この指標が一定期間25倍を超えるとバブルが崩壊する、というのが今までの法則です。
2000年のITバブルのときは72カ月、2008年リーマンショック前の金融バブルは52カ月で崩壊しました。そして今回のバブルは2月末で81カ月も続いています。なぜそんなに長いのでしょうか。多くのバブルが金利が上がるとはじけますが、今は新型コロナウィルスの影響で経済が疲弊していて、中央銀行が金融引き締めに出られません。その足元を見透かして、投機家たちが株価を吊り上げているのです。
ただ、今後ワクチンの効果が表れて、経済が回復すると、金融引き締めが可能になります。つまり、景気の回復とともに、株価が暴落するという皮肉がことが起こるのです。
景気回復に先駆けて、まず長期金利が上がります。私はアメリカの長期金利が2%になったら黄色信号、3%になったら赤信号だと思います。バブルが崩壊に向かうと、株価はオーバーシュートして下がります。今の3分の1になることもあり得るので注意が必要です。
※掲載中の情報はMart誌面掲載時のものです。
Mart2021 5月号 最近気になるNEWSな言葉「日経平均株価3万円突破のナゾ」 より
イラスト／熊野友紀子 編集／倉澤真由美 構成／長南真理恵
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