Mart WEEKENDERのNanaさんは6歳の双子の女の子のママで、主に住宅の設計をしている建築士さんです。仕事で活躍しながら子育てもして、時間を見つけては登山をしています。Mart WEEKENDER特別インタビュー、今回はNanaさんに忙しい中で登山を続ける理由や、仕事や子どものことなどを話してもらいました。
双子の子育てや仕事の両立はしんどい! けど登山のおかげでがんばれています
登山にはまったきっかけと、つらかった子育て
Nanaさんはフルタイムで働く建築士さん。産休明けは土日休みの本社勤務で働いていましたが、1年前から建築士として現場に復帰しました。現在は週に2~3回テレワーク、打合せのある日は出勤しているそう。出社すると帰宅が遅くなることも多いとか。
「仕事の日はとにかくハード! 出社日は保育園のお迎えを実家の母に頼み、特に打合せのある日は帰りが21時頃になるので、子どもと過ごす時間は激減しました。住まいづくりは大変だけど、やりがいはある。でももう少しゆとりをもって子どもと接する時間があれば……と常々思っています。お風呂・夕飯のときに一緒に過ごせなくなったり、土日祝のイベントに、一緒に行ける機会がなくなってしまったり(祖父母頼み)。ただ全力で仕事している母を見て、子どもたちにも何かを感じてもらえたら嬉しいなと思いますね。日頃のストレスがあればあるほど、山に行けた喜びは大きいです(笑)」。
社会人になってから山にはまる
Nanaさんの初登山は2011年。現在のご主人に誘われて、学生時代最後の記念に富士山に登ったのだそう。
「絶好の登山日和だったのですが、高山病や永遠に続く坂道に心が折れ、そのときは二度と登りたくないと思ったのが正直な感想です。山道具の基本装備一式を揃えていたので、社会人になった休日に軽い気持ちで尾瀬ヶ原にハイキングに行きました。不慣れな生活でストレスや疲れがたまっていましたが、とても癒されて、山っていいなって感じたのです。次に北アルプスの唐松岳に山小屋泊して登山をしてすっかりはまり、2013~16年は年に20回以上行きましたね。辛いときほど山に行くと充電できて、またがんばれるんです。残業100時間を超えるハードワークのなか、山で『誰からも電話がかかってこない』『無音な状態で過ごせる』のは最高のリフレッシュになりました。また黙々と登ることで、頭の中の考えを整理できることも登山の魅力ですね」
妊娠で山に行けなくなった
小屋泊→テント泊→長距離縦走→積雪期登山とステップアップをし、まだまだ登りたいという時期に妊娠したNanaさん。山をしばらくお休みしなくてはいけなくなりました。
「2017年双子を出産しました。切迫早産による2か月の入院生活のとき、ちょうどインスタグラムの流行がピークになったころで、みんなが楽しそうに山に登っているのを見て、山に行きたいのに登れないことが辛かったです」
出産後はますます大変だったのだとか。
「育児は本当に死にたいぐらいしんどかった! 仕事って頑張れば成果も出るし、達成感もあるのに、育児は期待外れのことばっかり。頑張っても結果を残せた気になれない。だけど自分が頑張らなくてはいけない。その上、山でリフレッシュもできない。間違いなく、人生で一番しんどかったです。SNSで繋がった山ママたちが、ベビーキャリアで子どもと山へ行くのを見ていて、すごく羨ましかったですね。うちは双子だから、一人で2人を連れて行くなんて考えられなかったし、スーパーに行ったり、小連れで遊ぶことも難しく、行動範囲がかなり限られて、なんとか生きているという状況でした」
その後山に登ることはできましたか?と尋ねると、
「産後、半年のときに一人で高尾山へ登れたことが大きな思い出になっています。山は1年ぶり。登山口で授乳して子どもたちを預け、次の授乳までの間に登っておりてくるという2時間のハイクでしたが、今までにない感動がありました。一人で山の中を歩いていのがこの上なくうれしかったです」
双子の娘が3歳になったあたりから本格的な親子登山へ
裏山さんぽから少しずつ子どもたちといろんなところを歩き、かのちゃん、りのちゃんが3歳になったころ、親子登山ができるようになったそう。
「4歳のとき夫の単身赴任で完全ワンオペ育児になったことで、子どもたちを預けて山に登りにくくなってしまったのもあり、一緒にいろんなところに登るようになりました。山を選ぶ際には自分が登ったことがある山で、距離・標高差・コースタイムをチェックして選んでいます。2023年現在、計44回親子登山をしていますが、山小屋泊、テント泊もデビュー! 非日常を体験したり、いろいろな景色を見たり、大きな経験になっていると思いますね。子どもたちと登ることで改めて低山の魅力も知り、もっともっといろいろな山を見せてあげたいと思っています。山の効果かはわかりませんが、保育園ではトップクラスの身体能力です(笑)。体感がよくなるのでどんなスポーツも上手ですね。運動会でも男の子にまじってリレーのアンカーになり、子どもたちは大喜びしていました」
登山することで充電し、仕事も育児もがんばれる
Nanaさんにとって「週末を楽しむ」ことは、平日に、また生活全体にどのような影響を与えているのでしょうか。
「仕事が辛いときもなんとか乗り切ることができています。私の場合は”山”ですが、休日の楽しみで心身ともに充電できるからこそ、仕事を頑張れると思いますね。仕事をしているときも、次の山のことで頭はいっぱい(笑)。休みの日でも電話やメールが多く、どうしても見ちゃうし、対応しちゃいますよね。 圏外なら絶対に確認できない。山にいると音がないことの静けさにびっくりします。何も聞こえないって、こんなに静かなんだと。本当にデトックスになります。また、わたしも幼いころの非日常的な体験は記憶に残っているんですね。なので子どもたちにとっても、知らないところへ行ったり、食べたり、体験することは、いい経験や刺激になると思っています」
撮影/中林 香 取材・文/湊谷明子