「そこもう一度読んでみて」
_____「わかりました」
「そこの語尾、もう少しこうしてみたらどうだろう」
_____「そういう意味でしたら、例えばこんなのはどうですか」
佐藤アツヒロさんの連載「こじらせ男子でなにが悪い」の制作過程は、構想を練るところから原稿になるまで、作家の先生と編集者が小説をつくりあげていく形と似ています。
「彼」のつむぐ言葉は、その生きざまそのもの。ときに鋭く、ときに柔らかくふわりと軽やかな一方で、しっかりとした芯があり……。毎号かかげるテーマに向けて、それらを何度も調整していくのです。
撮影においても、それは同じ。最初に大きな枠組みをつくっても、決してはじめからゴールは決めない。衣装、ヘアメーク、その場の空気、そしてカメラマンとの呼吸の合わせ方。それらすべてが合わさって、新しい「彼」独自の世界が生みだされます。
たとえば、左ページのカット。用意されたのは、とてもレトロな車両のみ。子供たちの歓声が小さく聞こえるなか、「彼」を取り巻く世界だけまるで異空間のよう。そっと窓枠に腕をのせ、撮影がスタート。その表情、その視線のやり場……。読む人それぞれが思いをめぐらす、自由な世界。
撮影/ATSUHIRO SATO
「ねえ、ここ寄っていい?」
撮影終わり、すっと立ち寄った場所。その視線の先は、カタカタカタ……とレール上を走る鉄道模型。じっと黙って見つめたあと、ふっと笑ってその場を去りました。「好きな電車はこういう感じのもので……」と、そのあとそんな話が話題にのぼったのでした。
撮影/ATSUHIRO SATOH
※模型の展示は常設ではありません。ご了承ください。
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