コロナ禍で大きく変わった、人とのコミュニケーションの取り方。寂しいなと思う一方で、アツヒロさんは「むしろこれが快適」とおっしゃいます。どうやらそこには、この環境だからこそわかった価値観などがある模様。なんとなく気分が落ち込みがちな日々ですが、これを読めば、私に今できることがありそう!とポジティブ転換できるかも!?
もっと自分のために生きてもいいんじゃない?
ーー制約がある今だからこそできることがあるんじゃない?
佐藤 今までって無意識にたくさんの人に会いすぎてたと思うんだよね。選ぶ前に決まってたり、誘われたからなんとなく行ってみたり……。正直言うと、あれは、気を紛らわすのに近い感覚だったんじゃないかなと思う。
編集部 え⁉ それはどういう意味ですか?
佐藤 制約のある今の状態には、発見があるってこと。今回のコロナ禍で、自分にとって無駄なものがなくなって、今必要なものだけが残った。それが、「空白の時間」。だからこそ、それを大事に使ったほうがいいんじゃないかな。
編集部 アツヒロさんはどう空白の時間を使っているのですか?
佐藤 たとえば、今までやらずに諦めていたことや、やろうと思っていても始めていなかったことをやるチャンスだったりもするよね。俺の場合は、憧れもあったけど、苦手だった筋トレを始めた。それも、家でできる自重トレーニング(気がつけば1年継続!)。体が整うことで「続けた自分への自信」も生まれ、そして今はそれが「健康食」にもつながった。そういう「自分のための時間」がつくれるようになったのは大きいよ。
ーー自分のこと決めつけないほうがいいよ
編集部 コロナ禍で、より大事だと最近言われがちな「想像力」や「妄想力」について、アツヒロさんはどう考えますか?
佐藤 妄想して、想像力で形にしていくものだから、どちらも確かに大切だよね。俺も打ち合わせで、いろいろなプランを言ってみるけど、それはあくまで妄想から出たアイデアベース。一貫性もないし、前回と真逆のことも言うし。そこから想像力を使って、スタートラインに立つって感じだよね。
編集部 そんなに大切な妄想力と想像力。どう身につけたらいいのでしょう?
佐藤 よく「ポジティブな想像力を使って」と言われがちだと思うんだけど、これは、人によってはちょっと難しいのかなと思う。例えば、なんでもネガティブに考えてしまいがちな人は、これまでの人生で、なにかそう考えてしまう体験をしている可能性があるからね。
編集部 (優しい考え方だけど、もう一歩前進したい!)根本的には解決しなくても、少しでも世界が広がる方法ってないんでしょうか?
佐藤 (笑)。自分でなに言ってるかわかってる?めちゃくちゃ難しいこと言ってるよ(しばし考える、考える、考える……)。うーん。そうだな、「信じる勇気」じゃない?
編集部 誰かを信じるってこと? それとも、自分を信じるってことですか?
佐藤 自分のことを「私ってこうだから無理なの」と決めつけないってことだよ。そういう発言を聞くたびに、「自分が決めちゃってるからできないんじゃないの?」と思うし、できない未来を想像するより、できる未来を信じたほうがいいじゃん。ま、友達にならストレートに言っちゃうけどね。
編集部 それって、自分のことをネガティブ人間と決めつけず、そう思いそうになったら、ポジティブな言葉に言い換えてみるってことですか?
佐藤 俺もたまにあるんだよ。究極にへこむと、「俺って本当にダメだなあ、もうどうしていいかわからない」って。でも、24時間そんなこと思ってたらしんどいじゃない。だから、そこに「もうひとりの自分」を登場させるの。
編集部 もうひとりの自分?(想像力の限界です……)
ーーダメだなあと思ったら「もうひとりの自分」で強制終了!
編集部 アツヒロさん、「もうひとりの自分」ってまったくわからないんですが……。
佐藤 これじゃダメだなあと思って落ち込みそうになったら、頭の中に登場させるのが、「もうひとりの自分」。その自分に、「ちょっとちょっと。それ、頭の中だけの感情ですよ」ってつっこんでもらうの。もちろん1回や2回のつっこみじゃダメなときもある。ぐちゃぐちゃ悩んでたって、現実は変わらないことは知ってるんだけど……。そうやって、つっこみを何回も繰り返して、転換していくんだよ。落ち込む時間が長引いたら、もうひとりの自分に強制ストップをかけてもらう。大切なのは、「第三者目線の自分」がつっこみ役でいるということ。そうすると、ネガティブにのみ込まれないで、なんとかなるから!
編集部 (ほう……)。第三者目線の自分をつくれる自信がないです……。
佐藤 いや、俺も基本的にないから! そこをなんとかしようと……ああ、もうこのインタビュー、3時間もたってるよ(笑)。よし、また今度話そ!
<Profile>
佐藤アツヒロさん
1973年神奈川県生まれ。1987年、光GENJIとしてデビュー。2000年『ララバイまたは百年の子守唄』で初舞台を踏み、以降、数々の作品に出演し舞台俳優として高い評価を得る。
【編集後記】
すみません、長くなっちゃって……(苦笑。そして、いろいろお話いただきましたが、編集都合で次に持ちこしたものも)。ばしっと対策案を言えるアツヒロさんは達観しているのだろうか……と思いきや、そこは同じ人間。私たちと同じように現在進行形で悩んで解決して……を繰り返しているからこその言葉なんだろうなと感じたのでした。ときどき、ディベート?に近いテンションになりがちなこのインタビュー。アツヒロさんの深い信念を引き出せるよう、頑張ります!
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編集/菊池由希子 WEB構成/富田夏子
2021年7月号
佐藤アツヒロさんのひとり語り こじらせ男子でなにが悪い Vol.24より