これまであまり深く考えたことがない「同意」という言葉。真の「同意」を得ながら暮らすことは、人と良好な関係でいるために、とても大切なことなのです。一冊の本を通して、子どもに伝えたい「同意」の大切さを紹介します。
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子どもに知ってほしい「同意」。大人は、どうすればいい?
翻訳家 中井はるのさんに聞きました!
他人への接し方に気づける一冊です
「木の葉のホームワーク』(講談社)で第60回産経児童出版文化賞翻訳作品賞受賞などの経歴を持つ、児童文学の翻訳家。「大人でも説明するのが難しい『同意』について、誰でもわかるように書いてあるので、ぜひ読んでほしいです」
子どもを守る言葉『同意』って何?
YES、NOは自分が決める!
レイチェル・ブライアン作
中井はるの 訳
大人にとっても新鮮!親子で「同意」について考えるきっかけに
動画『お茶と同意』の作者であるレイチェル・ブライアン氏が描いた初の書籍。同意の大切さを、絵を交えながら子どもにわかりやすく解説。『子どもを守る言葉『同意』って何? YES、NOは自分が決める!』¥1,600(集英社)
同意=心からの「YES」が言えるということ
この本のテーマとなっている「同意」とはどういうことなんでしょう?
中井さん「何かをするときに、相手に同意を求めることがありますよね。その際に『心から〝YES〞と答えること』が同意です」
それは、普通のことではないのですか?
中井さん「例えば、本当は断りたいのに〝NO〞と言えず、不本意または怯えた状態で〝YES〞と言うことはないですか? それは本当に同意してはいませんよね。私もこの本を読んで、そのことに気づきました。大人ですらそういう状況は起こりやすいのに、子どもはなおさら言えません。心からの同意でないと、後からトラブルが起きたり悩んだりと、心身によくないですよね」
同意する基準は、人によって異なりますよね?
中井さん「〝大丈夫〞だと思うことは、人によって違いますよね。〝大丈夫〞と〝大丈夫じゃない〞の境目を、〝境界線〞といいます。自分の〝境界線〞を超えて無理だと感じたら、イヤだと伝えていいんです。その表現の仕方、断り方を、子どもは周囲から学ぶんですよね。そのため身近な大人が『同意』を理解していることは、とても大切です」
\大丈夫なことの見極めが大事/
自分のことは人に強要されずに、自分の感覚を信じて決めるよう、小さなことから教えてみましょう。
生活に同意を組み込んで子どもにも習慣化を
どうやって子どもに教えてあげるのがいいんでしょうか?
中井さん「毎日の生活のなかで、子どもに対して『どうしたい? どっちがいい?』と聞くことを習慣にすることだと思います。私自身も振り返ってみると、『こっちの洋服でいいよね?』など、忙しいと親の都合で子どもにYESを強要していたことがあったと反省しています。このような状況が続くと、子どもは自分の意思が尊重されなくても仕方がないものだと思い、自尊心が育たないこともあるようです。また他人に対しても、無理やり同意させてしまうかもしれません。それが過度になると、いじめにつながる可能性もあります」
子どもが相手に無理に同意させていたら、どうしたらいいですか?
中井さん「子どもが他人に対して同意を強要していたら、逆の立場に立ったらどう思うか考えさせてみてはどうでしょう。その場できつく注意するより、落ち着いたときに絵に描いたり、この本を読むなどして、焦らずに説明してあげたいですね。日常のなかで大人が子どもの同意を確認することを習慣にしていれば、子どもも自然と同意の意味を理解していき、染みつくと思います」
\基本的な決定権は子どもに/
子どもの同意は尊重すべき。ただ、安全や健康のため従わせなければいけないことも。
イヤなことを断る勇気は相手に誠実ということ
でも、大人でも子どもでも、つい同意してしまうこともありますよね。
中井さん「はい。〝同意しない〞ことや、〝行動してみて考えを変える〞ことはよくないと思ってしまいがちです。でもそうではないと、この本は教えてくれています。特に身体に関することは本人が決めるべきとも」
同意せざるをえない、断れない状況のときは……?
中井さん「同意しない=NOと言うことは、相手に対して不誠実ではないと私は思います。無理にYESと答えたことで、あとでトラブルが起こることもあります。一度は同意したことでも、やっていくうちに無理だと思うこともあります。でも、同意できないまま続けることは、相手に対して失礼なことだと思うんですね。だから、相手ときちんと話し合うこと。同意できない部分を話したり、わからない部分は相手にしっかり聞けるといいですね。迷ったら返事をする前に、少し時間をもらうのもいいと思います。私はこの本から、同意しないことは悪いことではないという勇気をもらいました。子どもに同意の大切さを伝えるため、ぜひ保護者の方にも読んでいただきたいです」
\無理やりの同意はNG!/
自分にも同意できないことがあるのと同様に、他人もそうだと子どもに伝えていくことが重要です。
《COLUMN》
ー子どもがいじめる側にならないためには?ー
子どもへの気持ちの確認を大切に
「子どもは心や体への暴力を、大人から学習します。同意のない状態が続くと、人の境界線を侵害するようになることも。頭ごなしに叱ると、より孤立を深めることもあります。安心・安全な環境でいじめる行為をする前の理由を聞き、大人が一緒に解決策を考えることが大切です」
お話を聞いたのは……
NPO法人CAPセンター・JAPAN
Child Assault Prevention=子どもへの暴力防止に取り組む団体。子どもへの暴力の予防教育を、子ども、保護者や教育者に行っている。
Mart2021 3月号 子どもと一緒に考えたい 大人も気づかされる「同意」のおはなし より
撮影/白倉利恵(光文社写真室) 取材・文/酒井明子 編集/高田愛子 構成/上原奈緒
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