「マンガばかり読むのが気になる」「斜め読みをしていて、じっくり読んでくれない」など、絵本から児童書に移る時期はいろいろと悩みが出てくるもの。 そこで今回は、読者から寄せられたお悩みにお三方からアドバイスをいただきました! 今後の児童書選びの参考にしてみてください!
お悩みに答えてくださったのはこの3人!
教育アドバイザー 佐藤亮子さん
英語教師として勤務し、結婚後、奈良県に移って専業主婦に。三男一女を東大理科Ⅲ類合格へ導いた母として、育児・教育法に注目が集まる。明朗快活な子ども好きの情熱家。
子育てインフルエンサー 木下ゆーきさん
笑いを交えた子育て情報を発信。7歳の息子、1歳の娘の父。ユニークなオムツ替えや子育てモノマネ動画など、その発想力と表現力で絶大な人気を誇る。メディア出演やトークライブも。
クレヨンハウス 子どもの本売り場担当 馬場里菜さん
約5万冊の絵本と児童書を揃えるクレヨンハウスに、7年勤務。選書や、HPやSNSなどでの情報発信、イベントの企画を行う。毎月の新刊会議で、お店に置く本を決めている。
Q.読書習慣をつけるにはどうしたらいい?
A.身近に本を置き親が読む姿を見せて
「親が本を読んでいる姿を見せることも大切です。大好きな人が本を楽しんでいれば、子どもも読んでみようという気持ちに。それから、家の中の手の届く場所に本があることも重要。本棚から選んで、読む喜びも発見できると思います」(馬場さん)「うちは3歳までに1万冊の絵本を読むのを目標にしていました。日常の風景に本がある環境をつくり、私が日々読み聞かせを。読み聞かせに年齢制限はありません。児童書へ移っても、親が感情を込めて読む声から内容の面白さが伝わり、読書の楽しさが浸透するはず」(佐藤さん)「子どもとしっかり会話をしていれば、そのときに興味を持っていることがわかります。それを親がキャッチし、読書に生かしてあげて」(木下さん)
Q.斜め読みばかりでじっくり読んでくれません
A.つまずきのクリアや対話で親がフォローを
「飛ばして読んだり、理解ができない部分があったりするのは、知らない世界が描かれた本という可能性があります。うちの子も、向田邦子さんが描く、独身の働く女性の心情をイメージできないため、理解できないことがありました。それは私が専業主婦だったからなのですが(笑)。子どもがイメージできない物語の背景を、親が隣できちんと解説して、つまずきを一つ一つクリアしてあげることも大切です」(佐藤さん)「『早く読みたい!』と先を急ぐのは、好奇心が刺激されている表れ。悪いことではないと思います。気になったら、またあとから読むと思いますし、親子の対話の中で『ここ、どうだった?』と聞いて、一緒に振り返ってみてもいいと思います」(木下さん)
Q.いつも同じ本ばかり読んでいるけどこれでいい?
A.子どもの好奇心が大切だから問題なし!
「大人でも行きつけのレストランがあったり、いつも聴く音楽があったりするように、〝帰ってこられる、落ち着ける本の世界〞があるのは、いいことだと思います。何度でも面白く読める本は、むしろ名著。安心していても、いいと思いますよ」(木下さん)「子どもが楽しんでいて、ウケていることが大事。一時は同じ本ばかりでも、いいと思います。興味を持つことがいちばんですから。そのうちに読書自体が好きになり、他の本も読むようになりますよ」(佐藤さん)「同じ本を何度も噛みしめて読めるというのは、素晴らしいことだと思います。同じ物語でも、その時々で多角的な視点でとらえることができて、本の中での体験を深めることにもなると思います」(馬場さん)
Q.読ませたい本に興味ナシ。子どもが選ぶ本だけで大丈夫?
A.楽しさが身についたら少しずつ広げればOK
「本を読む行動のきっかけは、あくまで子どもの興味から。無理やり読ませても、読書自体への苦手意識ができてしまうので、子どもの選択に任せてもいいと思います。洋食屋さんでハンバーグが食べたいのに、ミックスフライを頼まれるのは嫌ですよね。それと同じです。ただ、ハンバーグにトッピングをするように、親が『こんな味もあるよ』という感じで、関連したものをすすめてみるのはいいと思います」(木下さん)「子どもが読みたい本と、+αで大人がすすめる本の両方が身近にある環境をつくり、どちらを選んで読むかは、子どもの成長のタイミングや気分に任せてみてもいいのでは。『自分で選んで読む』というモチベーションが、まず素晴らしいです!」(馬場さん)
Q.絵本からの切り替えはどうするとスムーズ?
A.耳から鍛えたりゲーム化する工夫を
「長い文章を読むのが苦手なら、ゲーム感覚で身につける方法が。読み間違えたらチェンジするルールにして、親子で交代しながら声に出して読みます。すると子どもが真剣になって一所懸命文字を追い、レベルアップを目指して長く読めるように」(木下さん)「お母さんの肉声が流れている環境が大切。まずは何も考えずに読み聞かせをするうちに、子どもの耳は鍛えられます。そこから理解力が増し、だんだん自分で読めるように」(佐藤さん)「いきなり文字の多い本を読んでも楽しさにつながらない場合があるので、挿し絵の多い幼年童話から読んでみては。文字を読む楽しさと、絵から想像する楽しさを、バランスよく体験できると思います」(馬場さん)
Q.マンガばかり読むのが気になります
A.想像力を徐々に鍛えて、ステップアップを
「読むのがラクなマンガを入り口に、学習につながる歴史マンガや科学マンガを読んだり、ページ数の少ない、絵本と小説の中間くらいの児童書から始めたりしてみては。『これが読めたなら!』という達成感が次なる読書習慣へとつながりますよ」(佐藤さん)「マンガも想像力を働かせる立派な教材になりうると思います。動物や恐竜、乗り物、宇宙、自然環境など、関心のあるテーマの学習マンガから、もっと文字の多い本へと移行していくといいと思います」(木下さん)「子ども自身が好きで読んでいるマンガのジャンルに近い児童書をすすめてみると、興味を持ってくれやすいと思います。文字だけで情景が浮かびにくいのなら、マンガから想像力を養うのも一つの方法です」(馬場さん)
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撮影/相澤琢磨(光文社写真室) イラスト/ itabamoe 取材・文/鹿志村杏子 構成/Mart編集部
2020年6・7月合併号
絵本の次に選びたい「育つ児童書」 より