緊急事態宣言が発令され、よりいっそう外出自粛が求められる中でも、食料品の買い出しなど、どうしても必要な外出はあるもの。しかし相変わらずのマスク不足…そこで、布マスクを作る人たちが増えています。
政府も布製マスクの配布を発表し、海外でもアメリカのCDC(疾病予防管理センター)が布マスクのつくり方を公開。さらには小池百合子東京都知事が連日の会見で着用している柄入りのマスクに話題が集まるなど、主に「人にうつさない」効果で注目されている布マスク。
Mart webでは、なかでもマスクをつくることで前向きな気持ちになったという水野直子さんに取材をしました。
まずはお手本をコレクションしながらYouTubeでつくり方をチェック
雑誌や実用書の編集を経て、現在は4匹の猫たちと暮らし、猫専門ソーシャルアパートのオーナーをしているという水野さん。
「マスクが無い無いと言っても、行列する性格でもないし、必要に迫られて、私も皆さんと同じようにマスクの手づくりをはじめたんです。
裁縫がとりたてて得意なわけでもなく、最初は、一体どこからはじめたらいいか、ひとりで途方に暮れていましたが、ご存知のようにYouTubeにはつくり方情報があふれているので、それを参考にチャレンジしました。但し、私はまずは素敵なお手本はないかしら?と当初はコレクターの道にはまりました。
すると、ある、ある、ある!おしゃれで工夫を凝らしたマスクのコレクション。しかも、マスクを収納する“マスクケース”とのセットは衛生面、機能性の併備グッズの優れもの。日本人はこういう時は、極めますよね」
日本のマスクの歴史は明治時代初期に遡るそうで、当時は工場用の粉塵よけだったとか。マスクの内側に真鍮製の網に、フィルター機能の布地を張り付けたものだったそうです。
当時は工業用に限られたマスクが、にわかに注目を浴びたのが、大正8年のインフルエンザ(注:いわゆる「スペインかぜ」)の大流行です。予防品としてのマスクは、まさに今のコロナウィルスの防疫対策と同じですね。いずれにしても当時のマスクは物々しい形状ですから、今の簡易マスクとは大違いだったようです。
フィルター機能にこだわりつつ、自分らしいマスクづくりへ
いざ自分なりのマスク製作にとりかかろうとしたとき、ガーゼや細ゴムなどの素材が品薄なことに気づいた水野さん。あれこれ工夫を凝らし、素材調達に要すること数週間。ようやく自分なりのマスクが出来上がったそう。
自分なりに微調整できるまさにオーダーメイドマスクは、装着感もばっちり。
「一番大切なのは、フィルター機能です。しっかりつくり過ぎて小さい子供さんが、息が苦しいらしく、鼻の孔を出してマスクを装着しているのを見ましたけど、あれでは意味がありませんからね。
きちんと息ができるマスクをつくってあげてほしいな、と思います」
実際につけてみて気づいた、マスクの「思いもよらなかった効果」とは
実際にマスクを装着して大きな気づきがあったのだという水野さん。
「マスクって、実はフェイスの欠点隠しに使える完璧なビューティ・グッズだということに気づきました。優しいピンク系は肌の色を明るく綺麗に見せてくれるし、ブルー系は小顔に見せてくれます。
私は鼻が低めなのですが、マスクの鼻の位置をちょっとだけ高くして縫い、鼻が高く見えるように工夫してみたり。さらにその上、気になるほうれい線、しわやしみ、たるみ。み~んな隠せるんです。
そしてもう一つの利点として、何だか心理的にも自己防御、というか『心理的ソーシャル・ディスタンス』も自然にとれてしまう優れものだと感じました」
「その上、これだけ色々数を揃えていれば、その日のファッションにコーデするのも楽しくなってきます。おしゃれな服を着たときは可愛い花柄、気持ちを上げたいときはライオン柄など遊びのある元気の出る柄を選んでみたりする。
逆に、同じアウターでもマスクを替えればイメージが変わる。こんな欝々とした社会状況ですから、少しでも気分を上げるためにマスクをつけて元気を出しましょうよ。カラフル、シック、エレガント、カジュアルと、いろいろなファッションにあうものがつくれると思いますよ」
コロナウィルスの早期終息が待ち遠しいですが、マスク・エチケットのマナー習慣を含め、マスク嫌いの欧米と異なり、日本には、コロナウイルスが終息したその後も、日本独自のファッション文化として根付くのではないかと、水野さんは考えているそう。
何かと後ろ向きになりがちないま、まずは、おしゃれな手づくりマスクで気分をあげませんか?
取材・文/神林充香