産婦人科医の高尾美穂先生が、相談者の心に寄り添って優しくアドバイス!番外編の今回は、Mart読者の子ども世代にまつわるお悩みにお答えいただきました。第10回の前編は、子どものピルの使用についてです!
教えてくれたのは
高尾美穂先生
産婦人科専門医・婦人科スポーツドクター・ ヨガ講師。産婦人科専門医として、女性の健 康をサポートしつつ、それぞれのライフステージ・ライフスタイルに合った治療を提案す る一方、スポーツドクターとして、女性のプロアスリートへのサポートも行っている。
【相談テーマ】小6の娘にピルって使えるの?
相談者:Nさん(46歳)
東京都在住
11歳の女の子の母
パート
初潮が来ていれば、ピルを飲んでも成長に影響はないと考えられます
Nさん:最近、小6の娘に初潮が来ました。でもまだ周期が不安定なようで……。
高尾先生:初潮を迎えてから2〜3年は、なかなか安定しづらいですね。予定をしていなかった時期に始まってしまうということもよくあります。
Nさん:今後、移動教室、受験、旅行に生理が重なると不安に思っているようです。大人だと生理日の移動にピルを使用しますが、子どもも同じようにしても大丈夫ですか?
高尾先生:子どもがピルを使うことで、成長に影響を与えるのでは……と心配される方も多いですよね。一般的にエストロゲンという女性ホルモンの分泌量が増えると、骨の成長がストップしはじめて、身長の伸びが鈍くなるとされています。初潮が来た時点でエストロゲンが分泌されているので、すでに骨の成長が終わりかけている状態。そのため、ピルを飲むことによる骨の成長への影響はあまりないと考えられています。
Nさん:子どもだと副作用が大きいということはありますか?
高尾先生:副作用については大人も子どもも差はありません。ピルを飲むことで、吐き気、乳房の張り、不正出血やむくみなどが起こる可能性があります。加齢に従って血栓症のリスクが増加しますが、子どもではほとんど心配ないでしょう。
Nさん:そうなんですね。ちょっと安心しました。
2カ月前に婦人科に相談すると、選択肢が広がります
高尾先生:子どもの場合、生理が始まって数年は周期が安定しないことも多いです。そのため、婦人科に相談するなら早めがおすすめです。
Nさん:そうなんですね。どうやって生理をずらすのですか?
高尾先生:方法は2つあり、生理を前に移動する方法と、後ろに移動する方法があります。前に移動する場合、ずらしたい生理のひとつ前の生理が始まった5日目から2週間ほどピルを服用します。そうすると服用を止めた2〜3日目後に、次の生理が始まります。
Nさん:いつもより早い時期に、次の生理が来るということですね。後ろに移動させる場合は?
高尾先生:ずらしたい生理予定日の5日前からピルを飲みます。ピルを飲んでいる間は体の中に女性ホルモンがある状態のため、生理が来ません。生理が来てもいい日まで服用し続け、止めると、2〜3日後に生理が来ます。
Nさん:なるほど。
高尾先生:注意点としては、もしマイナートラブルが起こる場合は、大事なときに体調が悪くなることもあります。またずらしたい期間中は毎日服用しないといけないので、旅行中などでも同じ時間に服用し続けるよう注意しないといけません。
Nさん:生理周期が安定していない子どもだと、ピルを服用しようと思ったら生理が来た!なんてこともありそうですね……。
高尾先生:それはあり得ますよね。もし可能であれば、ずらしたい生理の2ヶ月前に婦人科で相談してみてください。2ヶ月前の生理を遅らせたり早めたりすることで、ピルの服用期間を短かくするなど、一度だけでずらそうとするよりは工夫できることがあるかもしれません。
Nさん:内診などあると子どもは緊張してしまいそうですが、大丈夫でしょうか?
高尾先生:ピルの処方だけであれば、話を聞くだけなので大丈夫です。お母さんのかかりつけ医などに、ぜひいっしょに連れて行ってあげてください。
【高尾先生のお悩み処方箋】大事な用と生理を重ならないようにするには?
1.初潮が来た後であれば、ピルにより成長への影響は大きくないと考えてOK
2.生理を移動したい場合、ひとつ前の生理からピルを服用し続けるのが確実
3.可能であれば2ヶ月前の生理前に相談に行くと、選択肢の幅が増える
後編は、「子どもの生理のお悩みに親はどう対処する?」です。ぜひご覧ください!
撮影/中林 香 取材・文/酒井明子 編集/倉澤真由美