産後に痔や残尿感に悩まされ……。2人目を考えていますが、また同じことが起きますか?【高尾美穂先生のお悩み処方箋】

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産婦人科医の高尾美穂先生が、相談者の心に寄り添って優しくアドバイス!Mart読者世代である30~40代女性の人には言いづらいお悩みにお答えいただきます。第19回は、出産後の体の不調についての悩みです!

悩める女性の心を軽くしてくれる!高尾美穂先生


産婦人科専門医・婦人科スポーツドクター・ ヨガ講師。産婦人科専門医として、女性の健 康をサポートしつつ、それぞれのライフステージ・ライフスタイルに合った治療を提案する一方、スポーツドクターとして、女性のプロアスリートへのサポートも行っています。雑誌やテレビほかさまざまなメディアでも、女性のお悩みへの優しいアドバイスが好評です。

【相談テーマ】出産後の痔や残尿感が辛い……

相談者:Wさん(30歳)
愛知県名古屋市在住
1歳の母
会社員

こまめなトイレが残尿感の原因になることも

Wさん:1年前に出産をしたのですが、その後にいぼ痔や残尿感にしばらく悩まされました。

高尾先生:それらの症状は今も続いていますか?

Wさん:出産後1ヶ月で少しましになり、3ヶ月くらいで気にならなくなりました。今は悩んでいないのですが、2人目を考えているので、産後また同じことが起きたらと思うと怖いです。何が原因だったのでしょうか。

高尾先生:残尿感については、出産後の女性にそこまで多く見られる症状ではありません。一時的なものだったなら膀胱炎だったのかもしれませんね。または、妊娠で子宮が大きくなり、膀胱が圧迫されていた可能性もあります。その状態になると、膀胱に貯めておける尿量が少なくなって、尿がそんなに貯まっていないのに尿意を感じてトイレに行く、これをくり返すうちに、膀胱のまわりの筋肉が上手く使えない状態になっていて、おしっこを絞り出すことができない。そのため、尿が残りやすくなっているのかもしれませんね。

Wさん:対策はあるのでしょうか?

高尾先生:前回のお悩みでも提案した、膀胱トレーニングが効果的です。残尿感があるとどうしてもトイレに行く回数が増え、余計に貯めておける尿量が少なくなってしまいます。トイレに行きたいと思ったときにギリギリまで我慢してみて膀胱のまわりの筋肉を鍛えると、尿を貯めておきやすくなり残尿感も改善されると思いますよ。

Wさん:なるほど。こまめにトイレに行くのが逆効果になることがあるんですね。

高尾先生:ただ膀胱炎や妊娠の影響以外の可能性もあると思うので、その症状が長く続いたり、改善しない場合は泌尿器科で相談するのがおすすめです。泌尿器科で排尿後にエコー検査をすると、膀胱にどれくらい尿が残っているか確認できます。その結果によって原因が見えてきて、対策が変わってくると思います。

高尾美穂先生

便秘をしない体づくりで痔の予防を

Wさん:痔は出産後によく起こるのでしょうか?

高尾先生:妊娠ではお腹の中に圧力がかかるため、 肛門近くの腸が圧迫されることも。また、出産でいきむことも原因となり、痔になる人は少なくありません。

Wさん:私だけではなかったんですね。少し安心しました。

高尾先生:人に相談しづらい悩みだと思いますが、決して珍しいことではないですよ。

Wさん:妊娠や出産がきっかけになりやすいということは、もし2人目を出産する場合はまた同じようなことが起こるのでしょうか?

高尾先生:そうですね。痔についてはまた起こる可能性は高いです。ただ年齢も若く前回もすぐによくなっているので、もし同じことが起こっても早く回復すると思います。

Wさん:でも当時はすごく辛かったので……。何か対策はないのでしょうか?

高尾先生:妊娠中は水分不足になりやすく、どうしても便秘になりやすいです。また出産後も授乳の影響で、同じく便秘になりがち。便秘でいきむ時間が長いと、どうしても痔のリスクは高くなります。そのため妊娠前から便秘にならない生活を身につけておくといいでしょう。

Wさん:食物繊維をとったり、まめに水分補給をしたりといったことをすればいいでしょうか?

高尾先生:そうですね。あとは、マグネシウムをとることも大切です。ただ、妊娠中だとサプリメントを飲むのは避けたいだろうと思います。その場合は、ミネラルが多く含まれる硬水を飲むのがおすすめです。

Wさん:まずはそういったことからやってみるといいんですね。対策がわかりましたが、それでも今後のことを考えるとやっぱり不安もありますね。

高尾先生:トラウマがあると余計に怖いかもしれませんが、前回もきちんと治っているし、あまり不安になりすぎないようにしてくださいね。思ったよりも多くの人が悩むことなので、みんなに起きがちなんだなと思うと気が楽になるかもしれません。

Wさん:意外に起きやすいことなんですね。

高尾先生:はい。もし症状がひどければ1人で悩まずに、早めに肛門科を受診してみてください。今の状態に合った治療法を提案してもらえますし、つらい場合は手術でスムーズに改善させることができます。解決法があると知っておくだけでも気が楽になりますよ。

Wさん:そうですね。とりあえず普段から、お通じのよい生活を送れるように過ごしてみたいと思います。

【高尾先生のお悩み処方箋】出産後の痔や残尿感への対策

  1. 残尿感は膀胱トレーニングが効果的
  2. 便秘をしない体づくりを心がける
  3. 妊娠中は特に水分補給を。便秘には硬水がおすすめ
  4. 症状がひどければ早めに肛門科受診で治療を

撮影/中林 香 取材・文/酒井明子

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