お風呂でのおもちゃ遊びが「浴育」につながる ~「第79回日本公衆衛生学会総会」発表内容を公開~
株式会社バスクリン(本社:東京都千代田区 社長:三枚堂正悟)は、お風呂の場を、家族のふれあい機会やしつけ、教育に有意義に活用してほしいとの思いから、入浴習慣と健康、QOL(生活の質)、生活習慣の関連について調査、研究を行ってきました。
東京都市大学人間科学部早坂信哉教授の研究グループとの共同研究で、親の幼少期の入浴の思い出に関する得点※1とその要因について検討したところ、思い出の高得点者は、「入浴時の会話」「お風呂でおもちゃで遊ぶ」などのコミュニケーションが良き思い出として関連していることが確認されました。入浴剤使用有無での思い出得点は、入浴剤使用者で高く、その理由として、「会話を楽しんだ」「お風呂が好きだった」が関連し、入浴剤非使用者では、「あまり覚えていない」が関連していました。以上から、幼少期の入浴の思い出が、現在の入浴剤使用にも関連する可能性があると考えます。
本研究成果は、2020年10月20日~22日に開催された第79回日本公衆衛生学会総会(オンライン開催)にて発表した研究成果をまとめたレポート内容を元にしています。
※1 入浴に関する幼少期の思い出について、「とても楽しい思い出」10点「まったく思い出がない・とても嫌な思い出」を0点とした場合の得点(整数)
【まとめ】
・幼少期の入浴の思い出は、成人後の「浴育」意識、親子の会話、おもちゃで一緒に遊ぶなどのコミュニケーション、ふれあいと関連がある可能性が考えられました。
・幼少期の入浴の思い出が、現在の入浴剤使用にも関連がある可能性が考えられました。
・弊社の現在までの研究結果も踏まえ、入浴、入浴剤が、「しつけ」や「教育」の場とする「浴育」につながっていることが考えられました。
【幼少期の入浴の思い出と要因、および入浴剤との関連】
背景と目的
日本では、身体の清浄効果のみでなく、日常的な疲労やストレスからの回復、及び健康のための入浴習慣が普及しています。入浴は、身体を温める、清浄にする、リラックスするなど、健康に良いと考えられますが、幼児に対する入浴習慣と健康に関する調査報告は少ないのが現状です。
株式会社バスクリンでは、2015年より東京都市大学と共同で、入浴習慣が子どもの生活や身体活動、健康など、成長発達にどのように影響するかについて、明らかにすることを目的とし、研究調査を行ってきました。その結果、親の入浴嗜好(しこう)は、「入浴意識」「幸福感」「QOL」と関連があり、「親の幼少期の思い出」と関連があることも示されました(2019年第78回日本公衆衛生学会にて報告)。
今回、親の幼少期の入浴の思い出について、理由も含め評価することで、入浴と子育てに関する要因を探ることができると考え、親の幼少期の入浴の思い出に関する数値による評価、その要因について検討することを目的としました。
方法
調査期間:2018年11月~12月
調査対象:関東地方の5か所の保育所に通う計266名の幼児の保護者
調査方法:留め置き式調査による横断研究で実施しました。
調査項目:性、年齢、入浴習慣等基本情報、入浴時の意識、思い出等
解析方法:単純集計、マンホイットニーU検定、多変量ロジスティック回帰分析※2をSPSS ver.25を用いて解析しました。入浴に関する幼少期の思い出得点を2値化(低得点(0-6)=0 、高得点(7-10)=1 目的変数)し、その理由(説明変数 無=0 有=1)との関連について、多変量ロジスティック回帰分析を行いました。入浴剤の関連は、入浴剤使用有無で2値化(目的変数)し、その理由(説明変数)との関連を同様に解析しました。
※2 ある事象が発生する確率を複数の要因によって予測(または説明)する解析手法
本調査は、東京都市大学医学研究倫理委員会の承認を得ております。
結果
1.幼少期の入浴の思い出の得点高低と理由の関連 –全体-
幼少期の入浴の思い出の得点高低と理由による検定では、「しりとりやなぞなぞで遊んだ」「会話を楽しんだ」「お風呂が好きだった」「おもちゃで遊んだ」「生活・工夫などお話ししたこと」を理由として回答した数に有意な違いがありました(表1)。
多変量ロジスティック回帰分析の結果、幼少期の入浴の思い出の得点高低と、「会話を楽しんだ」「お風呂が好きだった」「おもちゃで遊んだ」「アルファベットやひらがな、数をかぞえた」が有意に関連しました(表2)。
adjusted OR:多変量で調整したオッズ比(ある事象の起こる確率と起こらない確率の比率)
95%CI:95%信頼区間(母平均が95%の確率でその範囲にあるということを表す)
p value:有意水準(0.05未満で有意に関連)
本研究では、入浴に関する幼少期の思い出に関係する理由について、思い出が高得点であると、低得点よりも、「会話を楽しんだ」「お風呂が好きだった」「おもちゃで遊んだ」「アルファベットやひらがな、数をかぞえた」を選択する割合(adjusted OR)が大きくなっていました(4.00~14.08倍)。
2. 幼少期の入浴の思い出の得点と理由の関連 -入浴剤使用有無での層化解析-
現在の入浴剤使用有無での多変量ロジスティック回帰分析の結果、入浴剤使用者では、「会話を楽しんだ」「お風呂が好きだった」、入浴剤非使用者では、「あまり覚えていない」との理由がそれぞれ有意に関連しました(表3)。
本研究では、入浴に関する幼少期の思い出に関係する理由について、入浴剤使用者は非使用者(さら湯)よりも、「会話を楽しんだ」「お風呂が好きだった」を選択する割合(adjusted OR)が大きく、「あまり覚えていない」を選択する割合(adjusted OR)が少なくなっていました。
入浴剤使用有無での思い出の得点は、入浴剤使用者の平均得点が6.90に対して、入浴剤未使用者の平均得点が6.10と入浴剤使用者で有意に高得点でした。
3. 入浴剤を使用する理由(複数該当 上位6項目 回答数順)
未就学児のいる家庭において、入浴剤を使用する理由として、「温まる」「疲労回復」「リラックス」などのほか、「色・香りの情緒発達に期待」「入浴中のコミュニケーション」の理由が特徴的でした。
冬:温まる、疲労回復、リラックス、入浴中のコミュニケーション、色・香りの情緒発達に期待、保湿・乾燥防止
夏:リラックス、色・香りの情緒発達に期待、入浴中のコミュニケーション、疲労回復、温まる、気分転換
結論
幼少期の入浴の思い出は、成人後の「浴育」意識、親子の会話、おもちゃで一緒に遊ぶなどのコミュニケーション、ふれあいと関連がある可能性が考えられました。現在の入浴剤使用者は、幼少期の入浴の思い出の得点は高く、入浴剤使用有無での層化解析における得点高低での有意な関連理由がそれぞれ異なることから、幼少期の入浴の思い出が、現在の入浴剤使用にも関連がある可能性が考えられました。
以上の結果から、幼少期の入浴時の会話やコミュニケーションが良き思い出となり、現在の入浴剤使用に関連している可能性が考えられました。入浴剤使用の理由は、「入浴中のコミュニケーション」「色・香りの情緒発達」などであること、及び、弊社の現在までの研究結果も踏まえ、入浴、入浴剤が、「しつけ」や「教育」の場とする「浴育」につながっていることが考えられました。
株式会社バスクリンは「健康は、進化する。」をスローガンに、お客様の健やかで心地よい生活の提供をめざしてまいります。
企業プレスリリース詳細へ
PR TIMESトップへ