店内に入って商品を手に取ると、カメラが自動でどの商品を何個取ったかを記録し、そのまま店を出てクレジットカード決済したり、セルフレジで支払いができて、便利な無人決済店舗。この新しい形のお店が増えていくことで、生活にどのような影響があるのでしょうか?
今月解説いただいたのは
崔 真淑さん
エコノミスト。大和証券SMBC金融証券研究所(現・大和証券)に勤務し、最年少女性アナリストとして主要メディアで解説者に抜擢される。現在はGood News and Companies代表、カオナビ社外取締役、昭和女子大学研究員。日経CNBC『崔 真淑のサイ視点』ほかテレビ東京、NHK、BSスカパー!等で経済解説を行う。身近に感じる経済解説が人気。
無人決済店舗とは?
AIやキャッシュレス決済を活用し、レジでの決済を担う従業員をなくしたお店のこと。天井に取りつけたカメラが来店客を追跡し、手に取った商品を認識。出口ゲートを出るとアプリなどと連動したクレジットカードで支払うタイプや、出口付近の精算機の前に立つと商品の合計額が表示されて生産するタイプなどがある。
なぜ無人決済店舗が注目されているの?
- 少子高齢化で人材確保が難しいため
- 他業種より生産性の低い小売業の収益アップが期待されるため
崔 真淑さんが考える「無人決済店舗の登場で生活はどう変わる?」
人手不足に対応し収益アップが期待できる
最近、セルフレジだけでなく、小売りの無人決済店舗を目にする機会が増えました。特に、コンビニエンスストア(以下、コンビニ)の参入が目立っています。
無人決済店舗の始まりと言われているのはアメリカのAmazonですが、この分野には中国のテクノロジー企業も参入していて、数年後には無人決済店舗が当たり前になる可能性があると考えられます。それではなぜ、これほどまでに無人決済店舗が注目されているのでしょうか?
コンビニの全国店舗数は2021年3月末時点で約5万8000店と、もはや社会インフラとして認識されています。しかし、日本では超少子高齢化による人手不足から、こうした社会インフラが持続できなくなるのではないかと懸念されてきました。
それなら、賃金をアップして人手を確保すればいいと思うかもしれません。ところが日本の小売業界というのは、他業種よりも生産性が低い傾向にあり、働き手の賃金をアップすることが構造的に難しいのが現状です。
こうした働き手不足や生産性改善のために、各企業が無人決済店舗の導入に積極的になっていると考えられます。
無人化で「人」の仕事に求められるものが変わる
ただし、今の無人決済店舗は「巨大な自動販売機」としての側面も強いため、完全無人店舗では商品の多様性に限界があるという指摘もあります。
例えば、無人決済店舗の場合は、できたてのおでんを販売するには、提供方法に工夫が必要になりそうです。
この無人決済店舗の広がりは、私たちの生活に、大きく2つの影響をもたらすと考えられます。
まず、無人決済店舗の増加は、たしかに便利ではあるものの、クレジットカードでの決済などキャッシュレス決済の利用が必須なお店が多い、ということです。過疎地での無人店舗の拡大が期待されているものの、キャッシュレス決済にあまり馴染みがない人には、利用するのは少しハードルが高いかもしれません。
そしてもう一つは働き方です。無人決済店舗では、レジの仕事へのニーズが変化する可能性も。これからの時代に、働き手が企業に求められるニーズは何かを再考すべきときかもしれません。私もデジタル化に負けないよう、ブラッシュアップ中です!
今回のまとめ
無人決済店舗が増えることで……
- キャッシュレス決済の必要性が高まる
- デジタル化で仕事へのニーズが変わる可能性がある
※掲載中の情報はMart誌面掲載時のものです。
イラスト/熊野友紀子 編集/倉澤真由美 構成/Mart編集部
2021年11月号
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