ニトリホールディングスが島忠に、など、生活で身近な企業も行っている「TOB」。ニュースで言葉は聞くけれど、何をしているの?どんなことが起きるの?と思ってしまいますよね。そこで、崔 真淑さんがわかりやすく教えてくれました!
解説いただいたのは
\女性の目線で見る!/
崔 真淑さん
エコノミスト。大和証券SMBC金融証券研究所(現・大和証券)に勤務し、最年少女性アナリストとして主要メディアで解説者に抜擢される。現在はGood News and Companies代表、シーボン社外取締役、昭和女子大学研究員。日経CNBC『崔 真淑のサイ視点』ほかテレビ東京、NHK、BSスカパー!等で経済解説を行う。身近に感じる経済解説が人気。
TOBとは? その目的は何?
株式公開買い付けのこと。買い取る「期間」「株数」「価格」を公開したうえで、取引所の外で目的の株式を買い付けます。上場会社を買収したり、経営の実権を握るために行われます。
持ち株比率によってできることが変わります
【持ち株比率と株主の権利など】
100%
…… 完全子会社化が成立
3分の2超
…… 取締役の解任、合併や解散など会社経営で重要なことを決められる(株主総会の特別決議ができる)
50%超
…… 役員報酬の変更や会社の余剰金を株主に増配するなどの使い道を決められる(株主総会の普通決議ができる)
3分の1超
…… 株主総会の特別決議を単独で否決できる
\崔 真淑さんが考える/
TOBでどんなことが起きるの?
- 企業再編によりサービスや商品の質がよくなる可能性が
- TOBに関連した会社で働く人は、働く環境や待遇が変わるかも
TOBについて詳しく解説!
コロワイドが大戸屋ホールディングスに対して、ニトリホールディングスが島忠に対して、伊藤忠商事がファミリーマートに対してなど、今年はニュースで「TOB」が報じられることが多くありました。このTOBとはどんなことなのでしょうか。
TOBとは、ある上場企業の株式を、買い取る「株数」「価格」「期間」を提示し、通常の株式市場ではないところで、その上場企業の不特定多数の株主から株式を買い付けること。一般的に上場企業を買収したり経営権を握ったりしたいときに行います。たとえばコロワイドの場合、大戸屋ホールディングスを買収して傘下に置きたいと考え、TOBを行いました。
しかし、TOBは非常に手間もコストもかかります。不特定多数の株主に告知するには宣伝コストがかかりますし、高い価格を提示しないと株を売却してもらえないのです。そんな手間がかかるTOBですが、今年に入り急増したのはなぜでしょうか。
2020年にTOBが急増した理由
この背景には、新型コロナ感染症の影響で経営が行き詰まった企業と、コロナをチャンスに伸びている企業とで明暗が分かれていることがあります。実際、ニトリは2020年3〜8月期の純利益が前年同期比
35%増と絶好調です。もちろん、家具業界の企業がすべて順調なわけではありません。これまでの取り組みがコロナ特需につながった企業と、そうでない企業との差が拡大したのが2020年の特徴でもあります。そのため、伸びている企業はコロナ禍で業績の苦しい企業を割安な株価で買収し、さらなる業績拡大をはかろうと考えているわけです。こうした企業再編の流れから、TOBが増えているのです。
私たちの生活への影響は?
では企業再編が増えることで、私たちの生活にはどんな影響が起こるでしょうか? まず働き手からすると、働く環境や待遇がいいほうにも悪いほうにも変わる可能性があります。
一方で消費者の立場では、再編企業が経営努力を行うことで、サービスがよくなったり、商品の質が上がったりするかもしれません。今は大変な時期ですが、この時期を乗り切った企業の取り組みに注目してみるのも面白いかもしれませんね!
※掲載中の情報はMart誌面掲載時のものです。
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イラスト/熊野友紀子 構成/Mart編集部
2020年1月号
最近気になるNEWSな言葉「TOB 今なぜ増えているの?」より