【NEWSな言葉】プラスチック資源循環促進法

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レジ袋の有料化から1年以上経ち、来年度からはプラスチック製品全体を削減すべく有料化やリサイクルを推進する「プラスチック資源循環促進法」が施行されます。これにより、環境への影響などはあるのでしょうか?

プラスチック製品の削減やリサイクルを推進


プラスチック資源循環促進法が国会で成立し、2022年度から施行されることになりました。環境保護のため、プラスチック製品全体に廃棄削減やリサイクルを求める法律です。
詳細な対象は、政省令で決めることになっていますが、コンビニや飲食店で配るプラスチック製のスプーンやストローが対象となるのは確実な見込みです。また、クリーニング店のハンガー、ホテルの歯ブラシやクシなども対象になる可能性があります。こうした製品は、有料化するか、プラスチック以外の素材に切り替えないといけなくなります。
普段使いのプラスチックの有料化や木や紙への素材変更によって、当然、消費者の負担は増えてしまいます。その一方で、環境保護への直接の貢献は限定的と言えます。なぜならば、一般社団法人プラスチック循環利用協会によると、2019年の廃プラスチック850万トンのうち、家庭用品や衣類履物など家庭で使用するプラスチックの割合は8.3%に過ぎないからです。実際には、廃プラスチックの大部分は、包装・容器等やコンテナ類などが占めているのです。

まずは自分の意識や行動を変えることが大切

それでも、この法律が家庭用品の廃プラスチックまでも対象とするのは、国民の意識改革と行動変容を期待しているからだと思います。
プラスチックの廃棄はよくないことだと国民が理解して行動を変えれば、環境に大きな影響を与えることができます。例えば、マイクロプラスチックとなって、海洋汚染の大きな原因になっている漁網を見てみましょう。現在、回収された漁網をリサイクルして、バッグをつくる事業が軌道に乗りつつあります。リサイクル素材でできたバッグを多くの国民が利用するようになれば、漁網の回収が進んで、海洋汚染を減らすことができるようになります。
また、廃プラスチックのなかで大きな割合を占めるペットボトルも、コンビニに回収ボックスが設置されるなど、リサイクル強化の取り組みが始まっています。一人一人が「プラスチックを安易に利用しない」「利用する場合はリサイクルする」という意識を持つことが重要です。

プラスチック資源循環促進法とは?

プラスチック製品全般について、環境に配慮した商品設計をしたり、 使用の合理化を進め、排出・回収・リサイクルの仕組みづくりを目指したりするためのもの。

■具体的には何をするの?

環境に配慮した商品設計
製造業者が環境配慮設計に関する指針を決め、それに沿った製品であることを認定したり、リサイクル材の利用について設備への支援などを行う。

使用の合理化
コンビニや飲食店などで無料で提供される、ストロー・フォーク・スプーンなどの使い捨てプラスチックについて、有料化を行う。

排出・回収・リサイクルの仕組みづくり
市町村での分別回収の仕組みづくりや、製造・販売業者による自主回収の制度化、排出事業者の排出抑制や再資源化の取り組みを促していく。

\森永卓郎さんが考える/プラスチック資源循環促進法施行で大切なこと

☑プラスチックの廃棄はよくないという認識を持つ
☑安易にプラスチックを利用しないようにする
☑プラスチック利用時はリサイクルをする

解説いただいたのは
森永卓郎さん


経済アナリスト。日本専売公社(現日本たばこ産業)ほか数々の企業に勤務後、現在は獨協大学教授。専門分野はマクロ経済、計量経済、労働経済、経済政策。『がっちりマンデー!!』(TBS)、『情報ライブ ミヤネ屋』(YTV)などにレギュラー出演中。 むずかしい経済を明快に解説するわかりやすい 語り口に定評がある。

※掲載中の情報はMart誌面掲載時のものです。

イラスト/熊野友紀子 編集/倉澤真由美 構成/長南真理恵

Mart2021年10月号
最近気になるNEWSな言葉「プラスチック資源循環促進法」より

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