生理痛が辛い、生理の日程をずらしたいなどの理由で「低用量ピルを使ってみたい!」と思う一方、使うことで体にどんな変化が起こるの?と不安がある人も多いのではないでしょうか。そこで、相談者の心に寄り添った優しいアドバイスが人気の産婦人科医・高尾美穂先生に、詳しく教えていただきました!
悩める女性の心を軽くしてくれる!高尾美穂先生
産婦人科専門医・婦人科スポーツドクター・ ヨガ講師。産婦人科専門医として、女性の健 康をサポートしつつ、それぞれのライフステージ・ライフスタイルに合った治療を提案する一方、スポーツドクターとして、女性のプロアスリートへのサポートも行っています。雑誌やテレビほかさまざまなメディアでも、女性のお悩みへの優しいアドバイスが好評です。
【相談テーマ】低用量ピルの安全性を知りたい!
相談者:Mさん(38歳)
東京都在住
パートタイム
低用量ピルを始めるなら早めがおすすめ
Mさん:昔から生理痛がひどく、低用量ピルを飲むと辛さが軽減すると聞いて興味があります。でも体にどんなことが起こるのか気になっていて……。また、生理痛がひどいという理由だけで婦人科に行くのは抵抗があるのですが、問題ないのでしょうか?
高尾先生:もちろん大丈夫ですよ。低用量ピルは、女性ホルモンであるエストロゲンと黄体ホルモンを合わせてできたもの。排卵抑制効果と、子宮内膜の増殖抑制効果があります。
Mさん:そうなんですね。
高尾先生:ピルを飲むことで、月経困難症や過多月経の症状を緩和したり、生理不順の人は月経周期が規則正しくなったりするほか、子宮内膜症の症状を緩和することも。一度婦人科を受診して、自分が辛いこと、改善したいことを相談してみてくださいね。
M:服用からどれくらいの期間で効果が出るのでしょうか?
高尾先生:ピルは生理開始~5日目までに飲み始めますが、生理痛などは次の生理のときから軽くなると思いますよ。避妊効果は服用してすぐ効果がありますが、服用をやめれば次の周期からすぐに妊娠できる状態に戻ります。
Mさん:副作用にはどんなものがありますか?
高尾先生:まず、低用量ピルでよく知られている副作用としては、血栓症が発症するリスクがあります。ピルに含まれているエストロゲンは凝固機能に影響を及ぼすため、血液中にできた血栓が血管を閉塞する血栓症を引き起こしやすくなります。ピルを服用していない人の血栓症リスクは1万人に1~5人なのに対して、ピルを服用していない人の血栓症リスクは1万人に3~9人とわずかに上がります。
Mさん:低用量ピルを服用した場合、血栓症予防のために日常生活でどんなことに気をつけたらいいですか?
高尾先生:喫煙をしない、肥満や高血圧を防ぐ生活を心がけることだと思います。
Mさん:血栓症以外にも副作用はありますか?
高尾先生:胸の張りや吐き気などが起こる人もいます。食欲増加、体重増加が起こる場合もありますが、2-3か月でおさまっていく方が多いです。ご自身が辛くないと感じる程度であれば、医師と相談し様子を見ながら服用を続けてもいいかもしれません。ただ血栓症が起きてしまうともう服用できないので、その点は気をつける必要があります。
Mさん:服用するとしたら、はじめどきはありますか?
高尾先生:Mさんは現在何歳ですか?
Mさん:38歳です。
高尾先生:30代であれば、少しでも早めに服用を始めるのがおすすめですね。
Mさん:なぜ少しでも早く、なんですか?
高尾先生:低用量ピル内服における血栓症は、年齢が上がるごとに徐々にリスクが高くなっていきます。また、服用開始から1~3カ月がいちばん副作用が出やすい時期です。始めるのであればい若いうちから始めるのがおすすめです。
Mさん:なるほど。それで、始めるならば少しでも早いほうがいいのですね。ピルは保険が適用になりますか?
高尾先生:月経困難症や子宮内膜症の疼痛に対しては、保険適用になりますが、PMSや生理予定日をずらしたい場合は保険適用外で自費になります。
40代ならピル以外の選択肢を考えてみても
Mさん:実際に飲んでみて合わなかったら、期待していた分落ち込んでしまいそうです……。
高尾先生:ピルにはエストロゲンとプロゲスチンの含有量が異なるさまざまな種類があり、人によって合うものも異なります。どうも合わないと感じるようであれば、医師に相談して種類を変えることで解決することもあるかもしれません。
Mさん:なるほど。私はまだ30代ですが、40代になったらピルの服用はできなくなりますか?
高尾先生:安定してピルを継続できている方は、血圧などに注意しながら50歳までは安全に内服を続けることができます。ずっとピルを服用し続けることで、更年期の困りごとを感じずに50代を迎える人もいるんですよ。ただし、内服を中止した場合、血栓症のリスクが高くなるため、40代での再開はおすすめできません。こちらも知っておいていただくといいでしょう。
Mさん:それは知らなかったです。50歳になったら服用できないんですか?
高尾先生:はい、50歳を超えたら処方は一切できません。でもいずれにせよ、50歳を目安に、一度服用をやめてみるといいと思います。ピルを服用していると、閉経していてもずっと生理があります。自分が閉経したかどうかは、内服をやめてみないと確認できません。
Mさん:そうなんですね。
高尾先生:また、ピル以外の選択肢があることも知っておくといいですね。40代後半になると、「きっとあと数年で解放されるはず」と一人で我慢している女性はとても多いです。でも、ひたすら耐えるなんてもったいない! 年齢を重ねてもできる治療方法はあるので、一度婦人科で相談してみてください。
M:血圧が高かったとしても、相談しても大丈夫ですか?
高尾先生:先ほども述べたように、血栓症になる原因はピルに含まれているエストロゲンですが、エストロゲンが含まれていないホルモン製剤もあります。プロゲスチンという黄体ホルモンのみを含んでいるお薬もあるので、これであれば40代や血圧の高い人でも服用することができます。
Mさん:いろんな選択肢があるということがわかってよかったです。まずは医師に相談してみることが大事なんですね!
【高尾先生のお悩み処方箋】ピルを服用するうえで気をつけること
- 始めるなら、なるべく若いうちに
- 服用中は喫煙をやめ、肥満や高血圧に気をつける
- さまざまな種類があるので、合わなければ種類を変えてみても
- 継続している場合は40代でも服用できる
- 50歳以降は服用NG。ホルモン治療を検討しても
【相談を終えて】ピルに対する不安が軽減しました。一度受診してみようと思います
お話しを伺って、ピルに対する疑問が解決し不安が軽減されました。「生理痛はみんな我慢しているし、受診するようなことじゃないよね」と思っていましたが、ハードルを上げずに一度受診してみようかなと思いました。体に負担のないピルを使用することで、あの生理前の憂鬱な気持ちが解消されたら、私自身も家族もハッピーになれそう!
日常生活では肥満や高血圧を防ぐために、子どもと一緒に適度な運動と野菜がたっぷり摂れる食事を心がけたいと思います。
撮影/中林 香(高尾先生) 取材・文/酒井明子