子どもが成長してくるにつれ、男女の身体の違いについて話したり、女の子であれば生理の話をするときが来ると思います。でも、いつどうやって話すといいのかわからない……。そんなあなたに、産婦人科医の高尾美穂先生が、心に寄り添って優しくアドバイス!第25回は子どもの性教育についてのお悩みです!
悩める女性の心を軽くしてくれる!高尾美穂先生
産婦人科専門医・婦人科スポーツドクター・ ヨガ講師。産婦人科専門医として、女性の健 康をサポートしつつ、それぞれのライフステージ・ライフスタイルに合った治療を提案する一方、スポーツドクターとして、女性のプロアスリートへのサポートも行っています。雑誌やテレビほかさまざまなメディアでも、女性のお悩みへの優しいアドバイスが好評です
【相談テーマ】子どもの性教育、どうしたらいい?
相談者:Kさん(35歳)
在住:福井県
職業:医療職
子どもの体つきが変わってきたら話をするタイミング
Kさん:5歳と0歳の女の子を育てています。タイミング的にはまだ先だとは思うのですが、子どもの性教育について不安で悩んでいます。
高尾先生:具体的にどのようなことが不安なんですか?
Kさん:女の子なので、生理についていつどう伝えたらいいのか悩んでいます。私自身、初潮を迎えたときに、恥ずかしくてなかなか母に言えないという経験があって……。そのときに事前に母と話しておけば言いやすかったのかな、と思いました。
高尾先生:学校でも生理について教えるなどの性教育はしていますが、学校によってどの程度教えるかの差があるものの、現状では決して内容が十分だとは言えないと私は感じています。だから保護者が家庭で教えることは非常に大切だと思いますよ。
Kさん:何歳くらいからそういう話をしたらいいのでしょうか?
高尾先生:最初のきっかけは、例えば「男の子にはおちんちんがあるのに、どうして女の子にはないの?」など、体の違いに興味を持ったタイミングです。もし子どもがこのような疑問を抱いたのであれば、男女の体の違いなどを話してみるといいと思います。
Kさん:まずは男女の体の違いについてなどを話す感じがいいんですね。
高尾先生:でも、このような疑問はすべての子どもが持つわけではありません。そうなると次のステップは、思春期で体つきが変わってきたタイミングです。
Kさん:胸やお尻がふくらんだり、毛が生えてきたりということでしょうか?
高尾先生:そうです。一般的に、女の子の胸は最初に平たく盛り上がってきますが、それから約1年半で初経を迎えます。丸く立体的になったら、生理が近づいてきたサイン。その間に、少しずつ生理について話をするのがいいかもしれませんね。1年半はけっこう長いので、繰り返し伝えていると、「やっと初経がきた」くらいに思うかもしれないですよ。
Kさん:どういう風に切り出すのがよいのでしょうか?
高尾先生:きっかけは「クラスでブラをつけている子はいる?」など、些細なことで良いと思います。性については小3くらいになると、学校で話題になることも。今の子どもはタブレットやスマホを使う子も多く、興味を持って自分で調べている子もいると思います。まずは子どもにどれくらいの知識があるのかを、保護者が確認することが大切です。そのうえで、足りない知識を教えたり、間違った知識を持っているようなら正したり、をくり返すことが重要です。
Kさん:子どもが自分の思った以上に知っていたら驚いてしまいそうですね。
高尾先生:そういうときも否定的に受け止めず、「どこで知ったの?」、「クラスでそういうことが話題になるの?」と聞いてみるといいですね。
家庭で繰り返し教えることが大切
Kさん:小さい頃からやっておくといいことはありますか? 個人的には初潮が来たときに、子どもが血を見て怖がらないかなども心配です。
高尾先生:小学生になったら、お母さんが生理中にあえていっしょにお風呂に入るのもいいかもしれません。血のついたナプキンを見せることで生理というものを知り、興味を持つきっかけになるということもありますよ。
Kさん:少しずつ慣れさせる、興味を持たせるということですね。子どもが男の子の場合も、生理について教えるべきですか?
高尾先生:興味を持てば別ですが、あえて細かく説明しなくてもいいかもしれません。ただ、家庭にお母さんや女の子のきょうだいがいるならば、生理用品を変に隠しすぎる必要はありません。デリカシーのある範囲で、生活の一部に自然にあるものとして育てるのがよいのではないでしょうか。
Kさん:なるほど。
高尾先生:またシングルファザーの家庭では、ブラや生理用品の選び方について教えるのは難しい場合もありますよね。そういったご家庭や、そうでなくお母さんがいる場合でも、プロのアドバイスを受けてもいいと思います。ファーストブラや生理用品が売っているお店に行き、選び方をスタッフから子どもに教えてもらうのもいいですね。
Kさん:親以外の大人から教えてもらうと、意外に受け入れやすいかもしれません。そうやって教えていくといいんですね。
高尾先生:学校と違って家庭の強みは、少しずつ繰り返し教えられることです。例えばその日に興味を持たなくても、また機会をみてしっかりと伝えることができます。生理について私はよく、「生理というのは赤ちゃんが来るかもしれない準備なんだよ。赤ちゃんが来なかったときに赤ちゃんのためのベッドがはがれるときに血が出るんだよ」という感じで話します。お子さんにわかりやすく伝えるようにしてみてくださいね。
【高尾先生のお悩み処方箋】子どもの性教育について
- 子どもが男女の体の違いに疑問にもったことに答える
- 体つきが変わってきたら、少しずつ生理の話を
- 子どもがどれだけ知っているかまずは保護者が確認
- あえて生理中にお風呂にいっしょに入るのもあり
- 生理用品やブラの店でプロの説明を聞いてみても
高尾先生の書籍を参考に親子で話してみても!
『娘と話す、からだ・こころ・性のこと』
高尾美穂/著 朝日新聞出版 ¥1,760
更年期外来を訪れる女性から思春期の娘の心身や性教育の相談を頻繁に受けるといつ高尾先生が、母と娘がどんな状態でも落ち着いて性のことや心身の悩みについて話ができるように、知識から話し方までフルサポートした一冊。いつどうやって話せばいい?と悩む方必見です!
【相談を終えて】日頃からチャンスを見つけて話すようにしてみます!
なかなか難しい問題だと思っていましたが、日頃から子どもとの会話の中でチャンスを見つけていくことが大事だなと気づきました。
きっかけとなる具体例を教えていただいたので参考にしつつ、娘たち自身が体を大切にできるような教育をしていきたいと思います。
撮影/中林 香(高尾先生) 取材・文/酒井明子