日常的な腰痛がつらくて……。少しでも楽にする方法はある?【高尾美穂先生のお悩み処方箋】

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産婦人科医の高尾美穂先生が、30~40代に多い体や心のお悩みにお答えいただく連載。先生のコメントで「勇気づけられた」「心が軽くなった」というMart読者も多数!今回は、ぎっくり腰をして以来、長年悩まされているという、慢性的な腰痛についてです!


教えてくれたのは
高尾美穂先生
産婦人科専門医・婦人科スポーツドクター・ ヨガ講師。産婦人科専門医として、女性の健 康をサポートしつつ、それぞれのライフステージ・ライフスタイルに合った治療を提案す る一方、スポーツドクターとして、女性のプロアスリートへのサポートも行っている。

【相談テーマ】ぎっくり腰に一度なって以来、腰痛に悩んでいます

相談者:Nさん(40歳)
広島県在住
専業主婦

慢性的な腰痛の原因は姿勢にあります

Nさん:10年以上前に一度ぎっくり腰になってしまったのですが、それから日常的に腰痛がひどくて……。ぎっくり腰と慢性的な腰痛は関係があるのでしょうか?病院で診察を受けたときは、ヘルニアではないとは言われたのですが……。

高尾先生:ぎっくり腰は、起こるメカニズムや原因ははっきりしていませんが、一般的には急に起きた腰の痛みをさすものです。ぎっくり腰になったということは、腰痛になりやすい姿勢をとっていたのかもしれませんね。また、一般的に女性は男性よりも筋肉量が少ないためか、年齢を重ねるごとに男性よりも腰痛に悩む人が多い傾向があります。

Nさん:女性のほうが腰痛に悩まされやすいなんて、意外です!どんな人が腰痛になりやすいのでしょうか?

高尾先生:骨盤の上の方を触ると当たる骨(寛骨)に手を当てたとき、それより上が痛む人は背骨周辺の筋肉の痛みである可能性が高いですね。

骨盤周りの骨の名前

Nさん:そうなんですね。

高尾先生:寛骨より上の筋肉が痛むのは、胸を反らし、腰やお腹が前に出ている反り腰の姿勢が原因であることが多いですね。妊娠中の女性が特になりやすく、お尻が大きい人も骨盤が前傾するため、上半身の体重が腰にかかりやすくなります。ヨガの「キャット&カウ」(両手両ひざを床についた状態で、背中を丸めるのが「キャット」、背中を反らすのが「カウ」のポーズ)の「キャット」が気持ちいい人は、この状態だと考えられます。

Nさん:妊婦さんをイメージすると、分かりやすいですね。

高尾先生:逆に、寛骨より下が痛む人は、仙骨と寛骨をつないでいるラインに痛みが出ることがあります。その場合は、ゴルフボールを床に置いて痛む部分をゴロゴロすると、痛みが取れることもあります。

Nさん:どこが痛いのか確認しながら、対策をしていくといいんですね。

高尾先生:そうですね。腰に痛みが出やすい人は確かにいて、Nさんは恐らく腰に負担のかかりやすい姿勢がクセになっていて、それが原因でぎっくり腰になったのかもしれません。

Nさん:何か普段から気をつけておくべきことはありますか?これ以上悪くなったらどうしようと、毎日びくびくしながら生活をしていて……。

高尾先生:腰が痛くなりにくい姿勢に矯正するには、筋肉が必要です。まず日常生活で立っているときに、おへそを背中の方にぐっと引き込むように意識してみてください。これだけで、筋肉を相当使うので、腰痛の予防になりますよ。

Nさん:それならば隙間時間にもできそうですね。

高尾先生:もしエクササイズをする余裕があるのであれば、両手両足を床につき、お腹と床を平行にした「テーブルトップポジション」をとりましょう。このポーズをするとお腹が下がる人が多いので、肩からお尻までが床と並行を保っているかを意識してください。さらにできるのであれば、この状態で右手と左足を床から離した状態でも平行を保てるようにすると、お腹の筋力がアップします。同様に左手と右足を離した状態もやってみてください。

Nさん:日常生活で、注意した方がいい動きはありますか?

高尾先生:猫背にならないように意識すると胸を開く姿勢になりますよね。それはいいのですが、そうすると反り腰にもなりがちなので気をつけてください。運動不足も筋力低下につながるので、定期的にスクワットなどの筋トレをするといいと思いますよ。

高尾美穂先生

生理中の腰痛は別の原因の可能性も

Nさん:実は生理中にもよく腰痛が起こりますが、これは女性ホルモンの変化と関係がありますか?

高尾先生:生理中に起こる腰痛は、ヘルニアや筋肉の痛みなどとは原因が異なる可能性があります。例えば子宮内膜症の方は生理中に腰痛が起こることがあるため、病院で一度検査することをおすすめします。

Nさん:もし子宮内膜症だった場合は、どうしたらいいですか?

高尾先生:対処法はいくつかあります。ピルの服用や、ピル以外のホルモン治療などをすることで解消されることがあります。自分に合った方法を、先生と相談するといいと思いますよ。

Nさん:一度受診してみようと思います。ちなみに今後また、ぎっくり腰になることはあるのでしょうか?

高尾先生:姿勢が大きく改善できなければ、また起こる可能性はあると思います。ぎっくり腰は回数を重ねるとクセになってしまい、ぎっくり腰になる頻度が上がってしまう可能性もあります。二度目が起きないように、意識的に今日お伝えした対策をぜひやってみてくださいね。

Nさん:日々の努力が大切なんですね。

高尾先生:腰痛は原因を探すのが難しいので、劇的な改善はなかなか見込めません。ただそれでも自分なりにマッサージや鍼灸、筋トレなど試してみると、合う方法が見つかるかも。ぜひいろいろ試して、前向きに過ごしてくださいね。

【高尾先生のお悩み処方箋】つらい腰痛の改善のためにできること

1. 腰に負担の大きい姿勢の矯正
2. 意識的にお腹の筋肉を背中側に引き締める
3. マッサージや鍼灸なども試してみる
4. 生理中の腰痛は婦人科に相談する

撮影/中林 香 取材・文/酒井明子

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