海苔弁というと、ご飯の上にかつお節などを振りかけて海苔を敷き詰めたお弁当で、手軽で身近なイメージですが、このところ、ちょっとリッチな海苔弁が目立っています。リーズナブルな印象だった海苔弁が大きく変化した、特別な日に食べたい海苔弁をご紹介します。
【茅乃舎】あの県外不出の明太子がド~ン!
Mart読者にとっては手軽に本格的な美味しいだしがとれる「だしパック」でおなじみの「茅乃舎」。だしパックだけでなく、調味料や炊き込みご飯の素、鍋の素、フリーズドライのスープなど、様々な商品を展開しています。
東京駅にある「茅乃舎」には、さらにレストランが併設されていて、以前は「茅乃舎」のだしを使った汁ものが食べられるお店でしたが、10月1日(土)から期間限定で「椒房庵」となり、とある海苔弁を提供しています。
福岡に縁がない人には「椒房庵」と聞いてもピンとこないかもしれないので、簡単に説明します。「椒房庵(しょぼうあん)」は福岡を代表する博多辛子明太子のブランド。「茅乃舎」の母体である総合食品メーカーの久原本家が運営しています。「椒房庵」の明太子は北海道産の真子(スケトウダラの卵)を使用し、特製辛子たれに漬け込み、ゆっくり味を浸み込ませています。
地元でも人気のこの明太子は博多土産としてのこだわりから、これまでオンラインショップや催事など限られた時しか福岡県外で販売されることがありませんでした。それが、今回、東京駅の「椒房庵」でのみ食べられることになりました。それが「博多めんたい膳 海苔」(¥1,850)。
有明産の一番摘み海苔を使用し、その上に「椒房庵」の明太子が1本(半腹)のっています。おかずは、同じく「椒房庵」のイカゆず麹漬と、ちりめん山椒、それに汁物が付いています。この明太子、まずはそれだけでちょっと食べてみてください。本当に美味しい。明太子はひとくくりにとらえがちですが、メーカーごとに微妙に味が違いますが、「椒房庵」の明太子は、久原本家が醤油蔵を起源としていることもあり、素材を引き立てる絶妙な味つけになっていて、辛さも程よく、卵の粒感もしっかり感じられます。
実は20年以上前から「椒房庵」の明太子を食べていたので、「椒房庵」の明太子が東京駅で食べられるようになってちょっと感動しています。これはご飯が進みます。そして、明太子の味に負けない風味の感じられる海苔との相性も抜群です。もうひとつ注目して欲しいのがイカゆず麹漬。これだけでもご飯、いけちゃいます。オンラインショップや福岡の店舗では瓶詰で販売されているものですが、いくらでも食べられる絶品ご飯のお供&おつまみです。
また、付いてくるのは「茅乃舎」で販売しているフリーズドライの汁物。基本はお湯を注いでいただくものですが、お店では「茅乃舎」のだし汁でつくっているので、より風味豊か。明太子ののった海苔弁ともマッチして、ほっこりします。
こだわりの明太子を存分に堪能できる“海苔弁”は、現在、東京駅の店舗内でイートインでの提供のみですが、11月上旬にはテイクアウトも予定しているそう。そうなると、駅弁として旅行のお供やおうちでゆっくり食べることもできますね。もうちょっと待ってテイクアウトするか、今すぐに食べたいという人は東京駅でぜひ味わってみてください。
ちなみに、店内では「あごだしめんたいこ うまくち」(¥2,160)の販売もしています。オンラインショップや福岡の店舗では明太子の種類も豊富で、明太子以外の商品もたくさんあるので気になる人はチェックしてみてください。
椒房庵HP:https://www.kubara.jp/shobouan/
【刷毛じょうゆ 海苔弁山登り】海苔弁の概念を変えた「高級海苔弁」のパイオニア
2017年に東京・銀座にオープンした「GINZA SIX」。様々な店舗が入った商業施設ですが、その中でもひと際注目されたのが「刷毛じょうゆ 海苔弁山登り」。銀座で海苔弁を販売、しかも海苔弁の専門店で、価格としても¥1,000オーバーといろいろと驚かされました。でもそこから、海苔弁が大きく発展していきました。
海苔弁は海苔が主役。「刷毛じょうゆ 海苔弁山登り」は一番摘みの有明海苔の「青まぜ」を使用。香りが豊かで柔らかく、風味がいいので、自家製醤油との相性が抜群。ふっくら炊いたお米ともマッチしています。そこに“おかず”がのせてあります。
定番は「海苔弁 海」(¥1,180)。脂ののった大きな鮭とちくわの磯辺揚げ、玉子焼きやしらたきのたらこ和えなどが入っています。この鮭が、まあ美味しい。この焼き加減も絶妙で、時間が経っても身が硬くならないんです。これを海苔とご飯と一緒に食べると、これまた絶品で幸せを感じます。
そして、海苔弁には欠かせないちくわの磯辺揚げ。これもビッグサイズ。磯辺揚げ好きにはたまりません。鮭もちくわも弁当箱に収まりきらないほど大きいので、食べ応えも十分。海苔弁ってこんなに贅沢感を感じるものだったのかと、しみじみ。
おかずのお母さんの玉子焼きはあえて焦げ目がついているのがポイント。「刷毛じょうゆ 海苔弁山登り」の海苔弁は“家庭料理の最上級”を目指しているので、こうしたところにも懐かしさや、ちょっとほっこりできる要素が含まれています。
「刷毛じょうゆ 海苔弁山登り」にはほかにも山の幸をメインにした「海苔弁 山」(¥1,180)があります。こちらはおかずに鶏の照り焼き、きのこのりんご酢煮、味付け卵が入っています。この照り焼きは塩麹を揉み込んでいるので柔らかく、生姜がアクセントになっています。
ちょっとヘルシーなのが「海苔弁 畑」(¥1,180)。おかずで入っているのが、れんこん大葉もち。昆布茶と塩で味付けていて、大葉の香りがいい感じ。ほかに舞茸の天ぷら、バターをきかせたマッシュポテトなどが入っていて、安納芋の大学いもはデザート感覚で楽しめます。
「刷毛じょうゆ 海苔弁山登り」は、この「海」、「山」、「畑」のほかにも店舗限定などのスペシャルな海苔弁があったり、おかずを追加してアレンジできるのも魅力。ひと言で海苔弁といっても、おかずが変わるだけでこんなにいろいろな表情を見せてくれるという、海苔弁のポテンシャルを感じるラインナップ。お好みの海苔弁をぜひ堪能してください。
刷毛じょうゆ 海苔弁山登りHP:https://noriben-yamanobori.co.jp/
【いちのや】もはやごちそう!バラエティ豊かなおかずたっぷり海苔弁
2020年のオープンから店舗数を増やしているのが「海苔弁いちのや」。こちらの「海苔弁」(¥1,080)はバラエティに富んだおかずがのっているのが特徴です。
ご飯の上に醤油などで味をつけた海苔が敷いてあるのが海苔弁で、海苔とご飯の間におかかなどがサンドされていることもありますが、それ以外のおかずがなくても“海苔弁”と呼んできました。でも、この海苔弁を見ると、こんな海苔弁の形があるんだと驚かされます。
店内にも掲示されている“こだわり”にも、米、海苔のほかに玉子、野菜、漬物、肉、揚げ、魚とあるように、いろいろなおかずが入っています。秘伝のたれに漬け込んだ半熟の卵、きんぴらごぼう、野沢菜漬け、鶏もも肉の味噌だれ焼き、ちくわの磯辺揚げ、魚のフライと、おかずのラッシュ!
この海苔弁をおかずに白米が食べられるのではと思うぐらい、充実のおかずラインナップ。これを贅沢といわずして、何と言えばいいのでしょう。おかず一つひとつ、どれを取っても美味しいんです。
シンプルに見えてそれぞれ丁寧につくられているのがわかります。自分でつくると考えたら、一回のお弁当に詰めないぐらいの充実ぶり。それぞれボリュームがありますが、素材を生かした味付けで海苔弁のベースになっている海苔+ご飯との相性を考えられています。
ご飯にもち麦が入っているのもポイント。それに瀬戸内海産の「浮き流し」と呼ばれる養殖方法で育てられた海苔をのせています。この海苔は時間が経ってから食べるのに向いているそうで、まさに海苔弁にはぴったり。毎日のように食べても飽きないと言われるのはこのご飯と海苔をベースに、様々なおかずが味わえるから。
こちらのお弁当も「最高級梅干し」(¥270)や「辛子明太子」(¥350)、「豚角煮」(¥390)などのおかずを追加できたり、海苔弁専用の「しじみ汁」(¥120)をプラスするのもいいですね。
さらに、季節の海苔弁もあり、今は「海苔弁『秋』」(¥1,500)を販売中。こちらはなんと、秋の贅沢、松茸入り。魚は秋の銀鮭を使った幽庵焼き、揚げは四万十川の青海苔入りの衣をまとわせて揚げた舞茸が入っています。肉、卵、漬物は「海苔弁」と同じ。
また、11月からは「海苔弁『冬』」が登場するそう。内容はぜひお店で確認してみてください。お弁当で季節が感じられるのもステキですね。こだわりのおかずを含めた、ほかにはない海苔弁を味わってみてはいかがでしょうか。
海苔弁 いちのやHP:https://noriben-tokyo.com/
普段、お弁当をつくる側になると、誰かにお弁当を作ってもらう機会もなかなかありませんが、だからこそお弁当を食べることこそ贅沢だと感じたりしますよね。秋の行楽シーズン。昔ながらの海苔弁とはひと味もふた味も違う、進化したごちそう海苔弁で家族みんなでプチ贅沢を堪能するのもいいかもしれません。
取材・文/岡部礼子