仕事と子育てを両立しているMart世代の女性にフィーチャーする「働くMartミセス」。今回ご登場いただいたのは、子どもにとって負担の少ない働き方を模索していたなか、今回はまさに「コレだ!」と思える仕事を見つけた女性。彼女の今の気持ちを聞きました。
【PROFILE】
田辺あかりさん(40歳)東京都在住
女性向けファッションブランド「ベルーナ」の店舗にて週2、3日勤務。息抜きは定期的に通うネイルと、たまの一人きりでの長風呂。夫と長女(中2)、長男(小2)の4人家族。ベルーナ店舗にてパート勤務
無理ない両立こその充実感家族との歩調を合わせ納得できる働き方とは
育児と無理なく両立必要とされるうれしさに高揚感を感じる場所
「お客様に提案したコーディネートを気に入ってもらえたり、『あなたがいるときにまた買いに来るわ』と声をかけてもらえると、役に立てた!とうれしくなります」 昨年の10月から大手通販「ベルーナ」の店舗で、パートスタッフとして働く田辺さん。勤務日は朝からウキウキした気分になるそう。
「お客様の年齢層は40〜70代の女性ですが、声をかけると皆さん喜んでくださるんです。『体形が隠れる服はないかしら?』『おばさんぽく見えないようにコーディネートしてくれない?』など、ざっくばらんにご相談いただいて、とても働きやすいです」 心がけているのは本人に合う色やシルエットを正直に伝えること。「相談されたからには、何でも褒めるというのは不誠実だと思うので、違うかもしれないと感じたときには『他の色のほうが、お顔映りがいいですよ』などと正直に伝えるよう心がけています」
勤務は週に2、3日。中2、小2の母である田辺さんのシフトは朝のオープンから昼過ぎまで。「午前の時間帯は、店のスタッフは私一人。商品出しや接客と忙しい時間ですが、信頼して任せてもらえるのもうれしいです。また、子どもたちが帰宅するまでには家に帰れるので、子育てと無理なく両立できる点も働きやすいですね」
娘の心因性視力障害
思い切り甘えさせてのびのび育てる大切さ
高校卒業後、最初に働いたのは好きだったファッションブランド。お客さんと「この服が好き」と共感し合える接客の楽しさを学んだ。その後家族が経営する会社を手伝うなか、26歳で結婚し、娘を出産。以来、母親として育児に向き合ってきた。
子育ては順調だったが、唯一常に心配だったのが娘の熱性痙けい攣れん。 忘れられないのは娘が幼稚園児だった夏休みのこと。子どもに多い夏風邪で、高熱が主な症状である「ヘルパンギーナ」で発熱していた娘が倒れ、呼吸が止まってしまったのだ。あわてて救急車をよんだが、到着までには時間がかかる。
「熱性痙攣のことがあり、区が主催する人工呼吸講習会に参加したことがあったので『今だ!』と思いました」 気道を確保し息を吹き込むと呼吸を再開するが、しばらくするとまた止まってしまうの繰り返し。「とにかく必死でしたが、『娘を絶対に助ける』と、どこか冷静に対処できている自分もいました」
やがて救急車が到着。病院へ搬送される途中、同乗していた新人の救急隊員が緊張から震えてしまい、割れずにいたアイシング用の保冷キットを奪い取ると、叩き割って娘の脇や首筋に挟んだ。「病院に着くと、ホッとしたと同時に震えが止まらず……。明け方に娘の意識が戻ったときはうれしくて『戻りました!』とナースコールを押しながら叫んだのも鮮明に記憶に残っています」
そんな娘も弟が生まれると、頼りになるお姉ちゃんとして大活躍。しかし、文句も言わずに弟を優先する我慢強い性格からかストレスを溜め、小学2年の春に一時的に視力が低下する心因性の視力障害を起こしてしまった。「姉としての我慢に加え、小学校入学直前の引っ越しで幼稚園の友達と同じ小学校に通えなかったことも、すべて文句を言わずに我慢を積み重ねてきた結果でした」 それ以来、休みの日は娘と二人きりでランチや映画に出かける時間をつくり、娘を最優先するように。すると次第にいい意味での図太さが娘に見られるようになり、視力も安定していった。「小さい時期には誰にも気兼ねなく甘えさせて、のびのさせてあげることの大切さを実感しました」
自分のもう一つの場所と家族
ベストバランスへの道
子どたちに全力で寄り添ってきた田辺さんだが、心の奥には働きたいという思いもあった。
6年前、夫が昼出勤だったタイムラグを生かし、スーパーでの早朝の品出しのパートを開始。朝食をつくって早朝5時に出勤、朝の9時には仕事を終えて帰宅する。その間、夫が子どもたちの朝の世話と娘の送り出しをしてくれた。「朝早く出るのは大変でしたが、これなら、子どもに我慢を強いることなく働くことが可能でした。私自身も育児から離れられることで、多少の解放感もありました」 長女が小2、長男が2歳のころから4年間続けたが、夫の出勤時間が朝に変わった昨年3月で退職。
翌4月から子どもたちは中1、小1として、新生活をスタート。1学期が終わり、生活に慣れてきたタイミングで再度仕事がしたいと思うように。 思い出したのは、かつて経験したアパレルでの接客の仕事。しかし、アパレルは土・日や夕方のシフトが必須になるため、子どもとの時間を優先したい主婦には難しい。
そんななか、ネットで目に止まったのがベルーナの「主婦大歓迎」の文字だった。「『これだ!』と思い、すぐに店舗に急ぎ『面接してください』と直談判(笑)。あとから聞いたら、直接来る人なんていないので、店長もかなりびっくりしたみたいです」 以来、ベルーナで働き始めて半年。気になるのはオシャレな高齢のお客さんの存在。「高齢でもしっかりお化粧をしてオシャレにされている方って、自分に似合うものがわかっているんです。だから鮮やかな色の服も躊躇なく選べる。そんな風に歳を重ねていきたいと刺激になります」
職場に行くと気持ちが明るく前向きになると話す田辺さんの姿は、夫からも「なんだかイキイキしている」と好評なのだとか。子どもたちも、今の働き方なら朝も帰宅時もママが家にいてくれると喜んでいるそう。
「娘の育児で子どもがナイーブなことも学んだので、まだ幼い息子が帰宅したときはきちんと迎え入れてあげたい、そんな母親としての思いと、働きたい自分の思いとの両方を叶えることができて充実しています。この先は息子が4年生くらいになったら、今の職場で働く時間を増やしていけたらいいなと思っています」
自分らしい働き方を叶えた田辺さん。家族と歩調を合わせながらこれからも自分らしい幸せを広げていくに違いない。
家族の記念日には「イベント御膳」
普段はお手製味噌汁キットで時短
田辺さんが時短のために実践しているのが冷凍味噌汁キットづくり。「もともと具材別にカットして冷凍していたのですが、毎日味噌汁をつくるなら、週末買い出しに行った日に、味噌汁の具材をワンセットずつ冷凍すれば楽なことに気づきました。毎日ワンパック冷凍庫から出して使えるので楽ちんです」。
一方で田辺さんが力を入れるのは、季節の行事や家族の記念日など、特別な日にだけつくる「イベント御膳」。「きれいな懐石料理が好きなので、お盆に料理を載せて懐石風に。子どもたちも毎回楽しみにしていてくれるので、つくり甲斐があります」
働く自分への
モチベーションを上げる
上限1万円の「ご褒美買い」
「額はそれほどではなくても、自分でお金を稼げることは自信になっています。少しでも家計に貢献できているという感じがうれしいです」。そう話す田辺さんにとって毎月の楽しみは、自分のお給料でネイルに行くことと、自分の買い物を好きにすること。「夫は『好きにお金を使っていいよ』とは言ってくれますが、やはり夫のお給料で自分の物を買うときは気を遣いました」。その月によってアクセサリー、コスメ、服と買う物は違うが、ご褒美買いにはマイルールがあるという。「ネイルは別予算ですが、毎月上限は1万円と決めています。それでも、自由に好きなものが買えると気分が違いますね。働くモチベーションのアップにもつながっています」
「パジャマで柔軟体操」が
わが家のコミュニケーション時間
子どもたちは二人ともヒップホップを習っている。「先に始めた娘の姿を見て、息子も習いたいと1年前から始めました」。夜寝る前に3人でストレッチをするのが日課だそう。「きょうだいの年齢が離れているので、『一緒に遊ぶ』となると難しい面もあります。でも、体を使ったストレッチの場合は年齢差があってもふざけ合いながら一緒に楽しめます。発表会前に家で練習するときも娘が先生役になって、二人で協力する姿が見られて、コミュニケーションの場となっているのが親としてはうれしいですね」
撮影/平林直己(BIEI) 取材・文/須賀華子 構成/上原奈緒
Mart2020年6・7合併号 働くMartミセス より
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