ふだんは見ることのできないふたりの対談が実現する、こじだん連載の第2フェーズ。今回はミュージカルをはじめ、幅広いジャンルで活躍する城田 優さんがゲスト! 意外と共通点の多いふたりが、楽しい男子トークを繰り広げます。
【editor’s voice】
天気予報が外れ、青空が広がった撮影日。アツヒロさん、城田さん共に、別部屋でヘアメークが始まりました。城田さんの部屋からは、陽気な歌が聞こえます。アツヒロさんの部屋をのぞくと、衣装を選んでいる最中。実は同じ高校の先輩、後輩、お互いに舞台に挑戦中であるという共通点はあるものの、今日が初対面のおふたり。さて、どんな対談になるでしょうか。
相手の気持ちを考えるから臆病になる男心と女心の違いは永遠の課題
――佐藤さんと城田さんは今回が初対面ですか?
城田 そうですね。僕は幼少期にスペインのバルセロナに住んでいたのですが、日本語で最初に覚えた曲が、光GENJIの「パラダイス銀河」でした。
佐藤 それはうれしい! 初対面ですが、共通の知り合いは多そうですね。
城田 そうですね。生田斗真君や松本 潤君とは仲良くしていますが、ふたりから佐藤さんの名前が出ていたこともあるので、実は身近に感じてたんです。
佐藤 そのふたりと仲いいってことは、もう無条件に城田君とは仲良くできそうな気がする(笑)。
――おふたりにお互いのことを知っていただきたいのですが、まわりからどのような人だと言われることが多いですか?
城田 僕は騒ぐし、うるさいしで「大きな赤ちゃん」と言われることがあります。でも、実は臆病で繊細という、真逆な部分もあり……。その根底には仕事がもらえるまでの挫折や、自分を否定された経験があり、ネガティブ思考になったことが影響していますね。だから、私生活もとても慎重です。
佐藤 僕にも近い部分がある気がします。仲のいい友人の前でははしゃぐので、「子どもっぽい、自由奔放」と言われがちですが、実はけっこう気をつかっている部分もあるんです。
城田 佐藤さんは、きっと優しすぎる人なんでしょうね。
佐藤 女性には、優しすぎてつまらないって言われる(笑)。男心と女心の違いって、永遠のテーマ(笑)。
城田 わかります。僕としては優しくしているつもりなのですが、そうすると男らしさを求められる(笑)。
佐藤 僕も男らしくグイグイいくように見られがちですが、「え、優しいんだ?」みたいな意外なリアクションされることも。
城田 若いころに殺し屋やミステリアスな悪い役ばかりが続いて、取材相手のライターさんに怖い人だと勘違いされていたこともありました。話しているうちにそうでないことに気づいてもらえて、意外な顔をされて(笑)。
佐藤 でも、話してみると優しいんだっていう、いいギャップに働き、人間関係が広がることもある気がします。ちなみに、恋愛で告白をしたことはありますか?
城田 5~6回くらい。臆病なので、いざ言おうと思っても、「どうせ僕なんかと……」と思って、なかなか言い出せないこともありました(笑)。
佐藤 本当に好きな人の前だと、うまく話せないですよね。ちなみに、知らない女性に声をかけたことはありますか?
城田 素敵な人を見ると二度と会えないし……と思うこともありましたが、理性が先に働き断念(笑)。できる人がうらやましいです。
佐藤 僕もできなくて……。だから、“いいと思っていますよ”って、ゼッケンで気持ちを主張できたらいいのにと思います(笑)。でも、こういう会話を男同士でしているのも楽しい! 理想の女性像のイメージを守りたい自分もいて、臆病だから本当の部分を知りたくないところもありますね。
城田 女性に対して、夢を持ち続けたいというか。
佐藤 そう考えると、学生時代の男子と女子の関係は、お互いに深く考えず「どう思っているんだろう」と、無邪気に想像してたよね。
【editor’s voice】
いわゆる「THE男子トーク」かと思いきや、実は人間関係の大事な一面を語ってくださったおふたり、端正な見た目からは想像しにくい、ナイーブな男心。表に見えている表情や言葉の裏に隠された、デリケートな気持ちを汲むことが、仕事や家庭で男女がうまくやっていく秘訣のひとつなのかもしれませんね。
「マイペース志向がつくるプラス思考」自信がない不安は成功への布石だと思う
―ー芸歴の長いおふたりですが、自分らしくいるこだわりや信念があれば教えてください。
城田 僕は取材などでもなんでも話してしまうほうなんですが、やはり言わなくてもいいこともあるじゃないですか。発言の切り取り方によっては、うまく伝わらないときもありますよね。ただ、信条として、人に迷惑をかけることは言わない、嘘はつかない、ありのままの自分を話すようにはしていますね。
佐藤 僕は、ストレスを持たないこと。自分の時間を楽しく過ごすために、本当にしたいことを選んでいます。以前は自分がいる環境のなかで居心地よく過ごす工夫をしていましたが、今は環境をつくることから大切にしていますね。ありのままの姿でいられたら、もっと楽しくなるかなと。
城田 ミュージカルなど、仕事で新しい技術を習得するときって、プレッシャーを感じて体に影響が出ることも……。そうならないために、なるべく“ケセラセラ!”スペイン語で“なるようになる!”と思うようにしています。最大限の努力をして、あとは不安に思わない! 必要以上にダメだと考えないようにします。期待度が上がるとプレッシャーも上がるので、そことうまく戦えるようにメンタルを持っていきたいですね。
佐藤 僕も似ていて、自信がない。舞台の稽古前は、できる気がしないですよね。だから、目標を掲げて稽古をひたすら繰り返す。
城田 僕が思うに「マイナス思考がつくるプラス思考」というのがあって、それが成功につながっているのでは?と。不安だから石橋を何回も叩いて渡るんです。不安を持たずにずっと走っている人は、途中で転ぶと起き上がり方がわからない。でも僕らのように何回も練習すると、アクシデントに対応できるようになると思っています。
佐藤 誰よりも成功を感じてイメージしているからこそ、できていないと不安を感じて練習しているのかも。目標を高く掲げているんですね。
城田 高みを目指しているからこそ、なかなかそこにたどりつかない。お客様に常にいいものを見せよう、という気持ちで頑張っていますね。
佐藤 読者の中にも、自信がないことを悩んでいる人がいるかもしれません。でもそれは、成功するために考えていることだから、大丈夫って伝えたいですね。
城田 ネガティブ思考がつくるポジティブですね、そこに行きつきたいというビジョンがあるから、やってやる!って思えるんですよね。
【editor’s voice】
取材中、「わかる、同じです」とおふたりが共感している中で、アツヒロさんが言った「自信がないことで悩んでいる人にこそ、大丈夫と伝えたい」という言葉。その一言で、たくさんの人が救われるかなと感じたのでした。そして、挑み続けるおふたりだからこそ、ネガをポジに変える方法に気付いたんだなとも思いました。
ネガティブだから悩む、それがむしろ「武器」になるのかも!
――ところで、仕事をしているとたまに「自信があります!!」っていう人がいますが、そういう人って信頼できますか?
城田 そういうことを言う人ほど、実はそれほどでもなかったりしますよね。
佐藤 僕の肌感ですが、謙遜している人のほうがすごいことのほうが多い。
城田 おそらく同じものごとでも、自分とはハードルが異なるんでしょうね。例えばちょっとものごとをかじった人の方が、能力をアピールしがちな気がします。僕は臆病なので、例えば得意なことを「これできるよね?」って聞かれても、失敗したくなくて「好きなだけです」って答えちゃいますね。
佐藤 できなかったときのことを考えると言えない。だから、「得意なものは?」と聞かれると、なかなか答えられない(笑)。どこをてっぺんにするかが異なると、答え方も変わるから。身近にすごい人たちもたくさんいるしね。
友人たちの「そのままでいいんだよ」に僕たちは支えられてきたのかも
――おふたりが、人には負けないと思うことは?
佐藤 そう考えると、僕はジャニーズにいるので、誰にも負けないのはオーラかな。
城田 僕は体のデカさ! 昔は身長の高さや彫りの深い顔が、コンプレックスでした。でも、初めて舞台をやったときに先輩から、「君の身長は舞台では武器になるよ」と言われて考えが変わりました。舞台に立ったときの存在感は誰にも負けないと思えるようになり、親に感謝しています。あとは、ビッグマウスになること。取材などで、まだできるかわからないことを、あえて「必ずやってみせます」と宣言することで、自分のハードルを上げる。そこに自分を持っていかなければいけない状況をつくります。
佐藤 ネガティブを武器にするっていいんですね。ネガティブだからこそ、悩んでいることについて考える時間ってすごい多い。それが強みになるかもしれないですね。
城田 ネガティブだからこそ、どうなるかわからないと不安になり、いろいろな選択肢が思いつくんです。そこからアイデアがいろいろ出てきて、例えば演出の幅も広がったりする。ものごとがいい方向に働いていくんですよね。
佐藤 本当に幅が広がる! 自分で自分を決めつけないようになりましたね。
城田 いやぁ、佐藤さんはもっと男らしい印象だったのですが、意外にも自分と近い部分もあって驚きました。
佐藤 僕たち同じ惑星なのかも(笑)。考え方が似ていて、城田君はきっと、まわりの友人にも恵まれたんじゃないかな。
城田 そうですね。10代でできた友達がいい人ばかりで、そこに引っ張られたのは大きいと思います。そのおかげで芸能界でも頑張れているのかな。
佐藤 まわりが城田君を「そのままでいいんだよ」って、支えてくれているんですね。誰もいなかったら、自分を全否定しちゃいますよね。自分もそうだったのでわかりますね。もし、舞台で共演することがあったら、どんな配役になるのかな。
城田 繊細な兄弟役とかやりたいです(笑)。外では強がっているのに、家ではしょんぼりみたいな(笑)。
佐藤 しょんばりかいっ(笑)!
【editor’s voice】
本当は、このあと「おふたりの5年後」をお聞きしたいと思っていました。でも、物事に真剣に向き合うからこその臆病さ、強烈な「ネガティブ」という言葉。そういうものに触れて気づいたのは、おふたりとも、具体的に未来をどうしたい!ではなく、今を必死に生きて、それを積み重ねていらっしゃるのだなと感じ、質問するのをやめたのでした。いろいろな生き方があっていい、そう思わせてくれたおふたりの対談でした。
〈Profile〉
佐藤アツヒロさん
1973年神奈川県生まれ。1987年、光GENJIとしてデビュー。2000年『ララバイまたは百年の子守唄』 で初舞台を踏み、以降、数々の作品に出演し舞台俳優として高い評価を得る。2022 年 3月、主演舞台「行先不明」の上演が決定。詳細はJohnny’s netを参照ください。
城田 優さん
1985年東京都生まれ。テレビ、映画、舞台以外にも音楽やモデルなど幅広いジャンルで活躍。日本人とスペイン人の両親をもち、幼少期はスペインで育つ。ミュージカルでの高い演技力が評価され第65回文化庁芸術祭「演劇部門」新人賞や、第43回菊田一夫演劇賞を受賞している。
撮影/中田陽子 取材・文/酒井明子 編集/菊池由希子 構成/長南真理恵