夜もうだるように暑い夏。気分が乗らないときは絵本の世界に浸ってリフレッシュしてみてはいかがでしょうか?絵本選書のプロ、種村由美子さんに大人にもおすすめの絵本を紹介してもらいました。
ページをめくるたびに引き込まれる
「気持ちが安らぐ絵本」
気持ちを穏やかする言葉、心をほぐす不思議な世界観、やさしさに触れられる結末など、どれも安らぎをくれます。
幸せの鍵が見つかる 世界の美しいことば
前田まゆみ 訳・絵
詩や名言、言い伝え、物語などから美しい言葉を50個セレクトし、心が温かくなるような絵とともに紹介。「今日はどの言葉が心に響くか、読むたびに発見があります」¥1,760(創元社)
の
Junaida 著
言葉と言葉をつなげる〝の〞から広がる不思議な世界。「言葉のリズムを楽しみながら絵本のなかへ旅する感覚に。最後のオチもうれしく、繰り返し読みたくなります」¥2,200(福音館書店)
なまえのないねこ
竹下文子 文 町田尚子 絵
ぼくはねこ。なまえのないねこ。いいな、なまえほしいな。自分の名前を探すノラねこが本当に欲しかったものとは?「ねこの表情が秀逸で物語もじんわり心にしみます」¥1,650(小峰書店)
つるかめ つるかめ
中脇初枝 文 あずみ虫 絵
昔から人々は困難の際、おまじないの言葉を唱えて乗り越えてきました。「不安が続く今、心を落ち着かせてくれる言葉が並びます。それぞれの言葉の由来にも納得」¥1,320(あすなろ書房)
心がハッピーになれる結末
「元気が出る絵本」
思わず笑顔になっちゃうエンディングや、ワクワクするユニークな設定、色鮮やかなイラストが疲れた心の栄養剤になってくれます。読めばまた前を向けそう!
ぼくらのまちにおいでよ
大桃洋祐 作
ライオンの花屋、ウマの郵便屋、カバのクリーニング屋……人間や動物が一緒に暮らすまち。「動物たちが生き生きと楽しそうで、このまちに行ってみたくなります」¥1,650(小学館)
レミーさんのひきだし
斉藤 倫・うきまる 作 くらはしれい 絵
レミーさんのひきだしには、本来の役目を終えた瓶やリボンの小物が次の出番を待っています。「小物たちがかわいらしく、レミーさんに起こる素敵なことも必見」¥1,540(小学館)
ばらいろのかさ
アメリー・カロ 文 ジュヌヴィエーヴ・ゴドブー 絵 野坂悦子 訳
カフェの女主人アデルは明るく人気者でしたが、雨が苦手。「カフェを閉めたあとに置かれていたものから物語が展開。恋っていいな!とハッピーになれます」¥2,530(福音館書店)
あさになったので まどをあけますよ
荒井良二 著
朝になって窓を開けると、そこには山があり、街があり、海がある……。「光と風を感じる風景に、何気ない暮らしの愛おしさ、生きる喜びや希望を感じます」¥1,430(偕成社)
なんだかあのころを思い出す
「懐かしい気持ちになれる絵本」
自分が子どもだったころの風景や気持ちを思い起こさせる、イラストやノスタルジックな物語。思い出の世界で、ほっとひと息つけます。
くろいの
田中清代 さく
女の子にしか見えない不思議な生き物 〝くろいの〞についてある家の屋根裏に入っていくと……。「モノクロで描かれた縁側のある家や街がどこか懐かしく温もりを感じます」¥1,540(偕成社)
月夜とめがね
小川未明 作 高橋和枝 絵
月のキレイな晩におばあさんが針仕事をしていると、めがね売りの男や美しい少女がやってきて……。「月夜の不思議な童話と幻想的な絵がノスタルジック」¥1,650(あすなろ書房)
夏がきた
羽尻利門 作
セミの声、風鈴の音、風もお日さまも昨日とはちがう。少年のある一日を切り取り、見事に夏を描きます。「子どものころの夏が思い出され、郷愁を誘います」¥1,430(あすなろ書房)
生きる
谷川俊太郎 詩 岡本よしろう 絵
詩人・谷川俊太郎氏の詩『生きる』の絵本。「海辺の町の姉弟と家族の一日を描き、生きている〝いま〞をとらえた名作。細部まで描写され、自分と重なります」¥1,430(福音館書店)
\教えてくれたのは/
ブックキュレーター/種村由美子さん
児童書専門店ティール・グリーン シード・ヴィレッジ店主。国内外の絵本と児童書に精通し、特に思い出に残る大事な一冊は『わたしとあそんで』だそう。http://teal-green.com/
Mart2021年 8月号 ご褒美TIMES 大人も楽しめる絵本 より
取材・文/長南真理恵 編集/松田睦美 構成/上原奈緒