4月から東京で自転車保険加入が義務化になるなど、全国で加入を促す自治体が増えています。自転車保険はなぜ必要なのか、加入する際にどんなことに気をつけたらいいのかなどについて森永卓郎さんにうかがいました。
解説いただいたのは
森永卓郎さん
経済アナリスト。日本専売公社(現日本たばこ産業)ほか数々の企業に勤務後、現在は獨協大学教授。専門分野はマクロ経済、計量経済、労働経済、経済政策。『がっちりマンデー!!』(TBS)、『情報ライブミヤネ屋』(読売テレビ)などにレギュラー出演中。むずかしい経済を明快に解説するわかりやすい語り口に定評がある。
\なぜ自転車保険の加入義務化が進んでいるの?/
・自転車も重大事故を起こす可能性がある
・事故で1億円近い賠償金の支払いを命じる判決も
⇒万一の際に賠償責任を果たせない可能性があるため
\森永卓郎さんが考える/
自転車保険に加入する際に確認しておきたいこと
・補償範囲がどこまでか
・現在加入中の保険の特約としてつけられるかどうか
・家族のうち誰が自転車に乗るか
⇒自分に合う保険を慎重に選ぶことが大切
自転車事故の賠償金が高額になるケースも
4月から東京都で、自転車保険の加入が義務化されます。これで、多くの大都市が自転車保険の加入を義務づけることになります。それではなぜ、このように自治体による義務化が進んでいるのでしょうか。実は、道路交通法で自転車は、「軽車両」に位置づけられていて、「車の仲間」になっています。ですから、道路交通法が適用されて、事故を起こしたときにも、自動車と同じように運転者に責任が及びます。今の自転車はスピードが出るようになり、歩行者と衝突して重大な事故を起こしてしまうこともあります。最近では後遺症が残るなどして、1億円近い賠償金の支払いを命ずる判決がいくつも出ています。自家用車の場合は、自賠責保険に必ず加入することになっているので、一定限度までの賠償金は保険から支払われます。ところが自転車の場合は、保険に入っている人が少ないため、ほとんどの人が賠償金はそのまま全額を自分で負担しなければなりません。
補償を受けられる人や範囲を確認して加入を
サラリーマンの生涯賃金は2億円程度といわれていますから、1億円の賠償金なんて払えるはずがありません。しかも、不注意の程度があまりにも大きい場合には、自己破産をしても免責にはなりません。つまり、払いきれない賠償金を一生かけて払い続けなければならないのです。そうしたことを考えると、自転車保険の加入が義務化されているかどうかにかかわらず、自転車を運転する人は、保険に入っておいたほうがよいと思います。自転車保険は、通常の損害保険会社が扱っているだけでなく、ネット系の損害保険会社、こくみん共済の全労済なども扱っています。また自分が現在加入している自動車保険や火災保険、生命保険の特約という形でも加入できる場合があります。保険料は年間数千円というところが多いですが、保険料だけでなく、補償を受けられる範囲がどこまでなのかをしっかり確認しておくことが大切です。また、加入者本人だけでなく、家族が自転車を運転していた場合でも保険が下りるタイプもあります。保険に加入する際には、家族の誰が自転車に乗るのかを考えて、慎重に保険を選びましょう。
※掲載中の情報はMart誌面掲載時のものです。
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イラスト/熊野友紀子 構成/Mart編集部
2020年5月号
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「自転車保険加入義務化が進んでいるのはなぜ?」 より