今日は「貯蓄の日」。金融庁の報告書で「老後資金が年金だけでは足りない」「夫婦で2000万円必要」と聞き、不安になった方も多いと思います。その後、老後資金報告書の撤回を決定したというニュースも流れましたが、不安が解消されたわけではありません。まだ先のこととはいえ、安心して老後を迎えるために、今からできることはあるのでしょうか?
今回は「人生100年時代の備え方」について、経済アナリストの森永卓郎さんに、エコノミストの目線で解説していただきました。
分散投資で老後資金を長持ちさせる
女性の場合、100歳まで生きる確率が20%に達すると見込まれています。まさに人生100年時代が到来するのです。そうしたなかで、高齢化に伴って、公的年金の財政は確実に厳しくなっていきます。それを救う方法は公的年金の支給開始年齢を70歳に繰り延べるか、65歳支給開始を守りながら給付水準を4割カットするしかありません。
いずれにしても厳しい老後が待っているのは間違いないので、できるだけ早くから老後資金の準備をする必要があります。そして老後資金として用意した貯蓄を長持ちさせる基本は、分散投資をすることです。地域なら「国内」と「海外」に、投資対象は「預金」「債券」「株式」「不動産」のように、さまざまな商品に分散投資すれば、全体のリスクを抑えながらある程度の利回りを確保できます。例えば、いま日本国債の金利はゼロですが、米国債には2%程度の金利がついています。ただし、海外資産には為替リスクがあり、円高になると元本割れする可能性があります。株式投資は、株価が大きく変動するので、儲かるときもありますが、損をすることもあります。
イデコを活用すればお得に老後準備ができる
そうしたなかでいちばんおすすめなのは、イデコ(iDeCo/個人型確定拠出年金)です。この制度は、自分で申し込み、自分で掛金を拠出し、自分で運用対象を選ぶことができます。運用するのは、預金でも、投資信託でも構いません。積み立てたお金は60歳以降に一時金あるいは年金の形で受け取ることができます。イデコの有利な点は、金額の上限はありますが、掛金が全額所得控除されること。さらに運用益が非課税のうえ、給付金を受け取る際にも税の優遇措置があることです。掛金を支払った時点で、所得税や住民税が減税になるのですから、いきなり確定利回りを確保できるというお得な制度なのです。
定年後の資産寿命を延ばすもう一つの方法は、できるだけ長く働き続けることです。そうすれば、老後資金のために貯めておくべき金額は少なくて済みます。現役時代に我慢してお金を貯めて早く引退するのか、長い間働き続けるのか。それを選ぶのは、あなた自身です。
人生100年時代で何が困るの?
・年金だけでは老後資金が不足の可能性も
・金融庁の報告書では95歳まで生きるなら夫婦で約2000万円必要
・少子高齢化でさらに年金給付額が下がる可能性も
森永卓郎さんの考える人生100年時代の備え方
・さまざまな金融商品に分散投資をする
・掛金の所得控除や給付金の税優遇がある「iDeCo」を活用
・できるだけ長く働き続ける
森永卓郎さん
経済アナリスト。日本専売公社(現日本たばこ産業)ほか数々の企業に勤務後、現在は獨協大学教授。専門分野はマクロ経済、計量経済、労働経済、経済政策。『がっちりマンデー!!』(TBS)、『情報ライブ ミヤネ屋』(YTV)などにレギュラー出演中。むずかしい経済を明快に解説するわかりやすい語り口に定評がある。
※掲載中の情報はMart誌面掲載時のものです。
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イラスト/熊野友紀子 構成/タカノマイ(Mart編集部)
Mart2019年8月号
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