両親と過ごしているときに、〝今は元気だけれど、将来「介護」をすることになったらどうしたらいいんだろう〞と不安になることはありませんか?今回は、「介護」を実際に経験したMart読者の体験談とともに、知っておくと「介護」をするときに役立つ基礎知識をご紹介します。
Case5:介護される側の望んでいることがわかっていると介護も頑張れる
【基本データ】岩下好美さん(仮名)、47歳、千葉県在住
【介護の相手】父(ガン・老衰で1年別居在宅介護)
5年前にガンになり、転移のたびに抗ガン剤治療を繰り返してきたという岩下さんの父親。昨年の10月、体力の消耗が激しいため自宅介護に踏み切りました。
「末期ガンで余命宣告をされた父親が、自宅で余生を過ごしたいと希望したため、家に連れて帰りました。ありがたいことに父親の頭ははっきりしていたので、自分がやりたいこと、望んでいることを口に出せる。それを聞いて、その思いにこちらも応えたいと思いました」
とはいえ、意識がしっかりしているからこそ困ったこともあるそうで……。
「介護をスタートしたころは、病人扱いをするとよく怒っていました(笑)。なかでも訪問看護の入浴介護や、ストーマ(人工膀胱)の交換などを母親以外の人がやろうとすると『おいっ!』って呼んだりして。これまでどおりでいたいという気持ちと、思っているよりも身体機能が低下している現実を受け入れるのに時間がかかったんだと思います」
現在は、両親が二人暮らしをする家に、近くに住む岩下さんが通ってサポート。
「パートの時間を変えてもらったり、息子が一人で夕食を食べる日ができてしまったのは残念ですが、今はやれることをしっかりやろうと思っています。実は私、5年前の父親の入院のとき、車いすを広げようとしても操作ができずに無力さを感じたことがありました。それがあまりにも悔しくて、介護職員初任者研修を受講して介護の知識を学びました。今はそれを生かしていますね。
わが家の場合、突然ではなくじわじわと介護の波が押し寄せてきた感じ。そのため、知識をつけたり、本人の希望や金銭関係のことも事前に知ることができたのが本当にありがたかったです。今は、ときおり孫たちも両親のところに顔を出したりして、家族みんなで父との時間を愛おしみながら過ごしています。寝たきりの状態ではありますが、存在してくれていることだけでも幸せ。そう思える介護ができて本当によかったなと思っています」
【岩下さんの介護ヒストリー】
岩下さん41歳:82歳の父親がガンの手術のため入院。
→「ガンの手術をするも、抗ガン剤治療などにより、じわじわと体力が消耗していきました」
岩下さん46歳:体力が低下し、余生を自宅で過ごすことに。
→夏にこれ以上の治療をすることをストップ。父の意思を確認して自宅介護に切り替え。
岩下さん46歳:感染症により入院、退院後自宅介護に。
→冬に感染症に。本格的に動けなくなるなか、体調を戻して自宅へ。「緩やかな時間を過ごしています」
【岩下さんの提言】
「介護される側の希望と思うと頑張れる」
介護・暮らしジャーナリスト 太田差惠子さんからのアドバイス
介護・暮らしジャーナリスト 太田差惠子さん
ファイナンシャルプランナーの資格を持つ。『親が倒れた! 親の入院・介護ですぐやること・考えること・お金のこと』(翔泳社)など著書多数。
前もって家族と話しておいて
「介護するうえで、把握できていないと困るのが、金銭関係の現状と、本人の医療方針の意思。預貯金額やカードの暗証番号、延命治療の希望の有無などは話しづらいですが、今後のために、例えば自分のことを話して『お父さんはどう?』と言うなど上手に聞き出して。聞いた内容は家族全員で情報共有すると、トラブル防止に」(太田さん)
話すべきこと①お金について
・貯蓄や年金などがどれくらいあるか
・どれくらいのお金を使っていいのか
話すべきこと②介護の希望について
・どういう介護サービスを受けたいか
・どこまでの治療を受けたいか など
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イラスト/茅根美代子 取材・文/玉置晴子、富田夏子 構成/タカノマイ(Mart編集部)
Mart2019年9月号
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