両親と過ごしているときに、〝今は元気だけれど、将来「介護」をすることになったらどうしたらいいんだろう〞と不安になることはありませんか?今回は、「介護」を実際に経験したMart読者の体験談とともに、知っておくと「介護」をするときに役立つ基礎知識をご紹介します。
Case4:仕事や習い事で気を楽にしてくれる仲間に会えるからまた頑張れる
【基本データ】加藤恵美さん(仮名)、47歳、東京都在住
【介護の相手】義父(栄養失調&認知症で2年同居在宅介護)
結婚後しばらくしてから、義父と同居になったという加藤さん。昭和初期生まれの気難しい義父は普段から食事に注文が多く、高齢になりあまり食べなくなったことで栄養失調になり入院することに。
「習い事の仲間に介護経験者がいて、まず地域包括支援センターに行ったほうがいいと教えてもらい、何もわからないまま相談に行きました。そうしたら担当者がすごく親身になってくれて、その場で介護申請を勧められ、用紙に記入。すぐにケアマネジャーさんも決まり、リフォームや退院後のデイサービスの手続きなどスムーズに進みました」
加藤さんが忘れられないのが、担当者の、「私たちは介護される側だけじゃなくて、する側も守りたい」という言葉。
「旅行や自分たちの時間を使うためにショートステイも使ったほうがいいとか、とにかく自分たち夫婦のことを考えるように言ってくれたので、仕事や習い事を辞めずに生活を変えないまま介護をしよう、という気持ちになりました。仕事仲間にはグチを聞いてもらい、話せる相手がいて気分転換できたのもよかったです」
在宅介護を続けて2年が経ったころ、加藤さんのご主人が骨折し、休職して自宅療養に。すると義父は急激にご主人に依存し始め、歩くことも起き上がることもできなくなってしまいます。
「認知症も進み、トイレもままならなくなり……。限界を感じてショートステイを利用し始めました。ショートステイでは1週間滞在し、次の空きが出るまで自宅へ帰る、という生活。在宅期間は夜中も呼び出しボタンが鳴り続けて寝不足になったのがいちばん辛かったです。夫の怪我の治りも悪く、この生活を続けるのに限界を感じ、義父にひとまず施設に体験入居してもらう間に有料老人ホームを探すことに。その最中に亡くなりました。これ以上私たちに迷惑をかけたくなかったのかな、と今でも思います。最期に、義父が気に入っていた豪華な施設に体験入居させてあげられたのはよかったです」
【加藤さんの介護ヒストリー】
加藤さん41歳:義父82歳のときに栄養失調で入院。
→内臓疾患も見つかり、点滴治療に。「介護保険を使い、手すりやドアの工事を進めました」
加藤さん43歳:認知症が進行し、デイサービスを週3回に増やす。
→「ケアプランの変更は、ケアマネジャーさんに言うとすぐに対応してくれました」
加藤さん43歳:有料老人ホームの体験入居中に亡くなる。
→「老人ホーム専門の不動産屋さんを回るなどして、入れる施設を探していたところでした」
【加藤さんの提言】
「自分のリズムで生活することで行き詰まらない」
介護・暮らしジャーナリスト 太田差惠子さんからのアドバイス
介護・暮らしジャーナリスト 太田差惠子さん
ファイナンシャルプランナーの資格を持つ。『親が倒れた! 親の入院・介護ですぐやること・考えること・お金のこと』(翔泳社)など著書多数。
介護中もいつもの生活をキープして
●必ずしも同居しなくてOK
「別居だからこそ受けられるサービスもあります。特に特別養護老人ホームには、一人暮らしのほうが入居の優先順位は高め。無理をして同居をするのではなく、別居の場合はどのようなサービスを受けられるのかを調べてから、同居か別居かを選びましょう。お互い無理をして生活を変えると、心身ともに疲れがきてしまいます」(太田さん)
●仕事をしている人はできるだけ続けて
「無理がきくのは一瞬だけ。仕事を辞めて介護に専念するのは、思っているよりも心身の負担が大きくなります。介護保険の認定調査日や施設の入居日など大事な日は休んで付き添ったほうがいいですが、基本は今までの生活を崩さないままで介護をしていきましょう。また、介護休業など職場の介護支援策も調べておきましょう」(太田さん)
【仕事を続けるためにできること】
・職場の介護支援策を調べる
・介護休業(休暇)を活用する
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イラスト/茅根美代子 取材・文/玉置晴子、富田夏子 構成/タカノマイ(Mart編集部)
Mart2019年9月号
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