エルヴィス・プレスリー夫人として有名なプリシラの回顧録を基に、ソフィア・コッポラ監督が映画化した『プリシラ』が全国公開中です。世界的なロックスターと恋に落ちた14歳の少女が、やがて一人の女性として自立するまでを、華やかな衣装や美術、ノスタルジックな音楽と共に描きます。
『プリシラ』あらすじ
1959年の西ドイツ。14歳のプリシラ(ケイリー・スピーニー)は、世界が憧れるロックスター、エルヴィス・プレスリー(ジェイコブ・エロルディ)と出会い、恋に落ちる。やがて彼女は両親の反対を押し切ってアメリカに渡り、メンフィスにあるエルヴィスの大邸宅で一緒に暮らし始める。魅惑的な別世界に足を踏み入れたプリシラにとっては、彼の色に染まり、そばにいることがすべて。しかし彼女の心には、次第にある思いが芽生えていく――。
【見どころ①】実話を基にしたロックスターとの恋愛模様
映画はエルヴィス・プレスリー夫人だったプリシラの回顧録『私のエルヴィス』をベースに、ソフィア・コッポラ監督が脚本から手がけました。プリシラは現在も存命であり、本人にインタビューしながら作品をつくり上げているので、プリシラ目線でのプライベートなエルヴィスの姿が浮き彫りになっています。(なので逆に、エルヴィスが歌う姿や映画撮影している姿はほとんど登場しません)
14歳のプリシラがパーティー会場で出会ったエルヴィス・プレスリーは、兵役中のドイツで本心を打ち明けられる人もおらず、華やかなステージの姿とは違いナイーブな青年のよう。自分と同じアメリカ人で真摯に話を聞いてくれる少女・プリシラに心を許すようになり、プリシラは彼に夢中に。スターとの甘い初恋に舞いあがってしまいます。
やがてエルヴィスは帰国してしまいますが、その後プリシラをアメリカに呼び寄せて一緒に住むようになります。そして出会ってから8年後、二人はついに結婚。当時はモデルでも女優でもなかった一人の学生がエルヴィスに見初められて結婚するなんて、夢みたいなシンデレラ・ストーリー! プリシラにとっては学校の同級生なんて幼く見えたでしょうし、二人のラブストーリーがどう展開していくかドキドキします。
【見どころ②】シャネルやヴァレンティノも協力したゴージャスな衣装
『マリー・アントワネット』(2006年)に代表されるような、カラフルな美術や衣装でガーリーカルチャーを牽引してきたソフィア・コッポラ監督だけあって、衣装やセットには細部までこだわっています。
特に結婚式の衣装は印象的で、映画ではプリシラのドレスをシャネル、エルヴィスのスーツをヴァレンティノが協力して仕上げていてゴージャス!
エルヴィスはファッションや流行に敏感で、プリシラにもどんどん自分好みの服を買い与えた様子。なのでプリシラを演じたはケイリー・スピーニーは登場する度に違うデザイン、違う色のドレスを身にまとい、ざっと数えていただけでも軽く20着は着こなしていました。それはとっても華やかで素敵だけど、着せ替え人形のようでもあり、おままごとみたいな結婚生活を暗示・象徴しているかのようです。
【プリシラのファッションの変化】
エルヴィスと出会った頃のプリシラ。精一杯のおしゃれ。
アメリカに渡った頃のプリシラ。学生らしさが残ります。
だんだんエルヴィス好みの髪型やメークをするように。
エルヴィスの妻となり、ファッションや髪型は常に最先端。
時代の移り変わりやエルヴィスの意見が色濃く反映されたものから、プリシラ自身の好みが現れたものまで、ファッションやメークもどんどん変化しているのでぜひ細かい部分にも注目を。
【見どころ③】一人の少女が女性として自立していく姿に共感
学校では他の生徒となれ合わず、ちょっと背伸びをしているような少女プリシラが、エルヴィスと出会うことで大人の社会を知り、自分らしさとは何かを考える。この作品はラブストーリーであると共に、一人の女性が自立していく成長物語でもあります。
有名人と恋に落ち、一緒に住むことになったために世間と断絶され、籠の中の鳥のようになってしまったプリシラ。豪邸に住んで美しいドレスで着飾っても、夫は仕事で不在がちで孤独を抱えていたり、「女は家を守るもの」という価値観に縛られたり、夫の家族とうまくいかなかったり、浮気を疑って問い詰めたり……女性として共感できる悩みも多いはず。
2022年に公開されたエルヴィスの伝記映画『エルヴィス』ではセクシーなダンスを踊りながら若者を熱狂させる表舞台のエルヴィスが描かれていますが、『プリシラ』は彼の恋人・妻目線での恋愛や女性の生き方を描いた物語。両方見比べるのもおすすめです。
作品情報
『プリシラ』
TOHOシネマズ シャンテほか全国公開中
- 監督・脚本:ソフィア・コッポラ
- 出演: ケイリー・スピーニー、ジェイコブ・エロルディ
- 配給:ギャガ
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