“トム・ハンクス史上最も泣ける映画”とのキャッチがついた映画『オットーという男』が3月10日から全国公開。試写会ではグッズのタオルハンカチを渡され、「そんな大げさな」と思ったけれど……実際に号泣の感動作でした。
『オットーという男』あらすじ紹介
オットー(トム・ハンクス)は町内イチの嫌われ者でいつもご機嫌斜め。曲がったことが大っ嫌いで、近所を毎日パトロール、ルールを守らない人には説教三昧、挨拶をされても仏頂面、野良猫には八つ当たり。なんとも面倒で近寄りがたい……それが《オットーという男》。
そんな彼は人知れず孤独を抱えていた。最愛の妻に先立たれ、仕事もなくした彼は、自らの人生にピリオドを打とうとする。しかし、向かいの家に越してきた家族に邪魔され、死にたくても死ねない。それも一度じゃなく二度、三度も……。世間知らずだが、陽気で人懐っこく、お節介な奥さんマリソル(マリアナ・トレビーニョ)は、オットーとは真逆の性格。小さい娘たちの子守や苦手な運転をオットーに平気で頼んでくる。この迷惑一家の出現により “自ら人生をあきらめようとしていた男”の人生は一変していく。(プレス資料参照)
【見どころ①】トム・ハンクスってやっぱり最高!
スウェーデンの世界的ベストセラー小説を原作に、一度『幸せなひとりぼっち』というタイトルで2015年に映画化され、スウェーデン国民の5人に1人は観たというほどの大ヒットを記録した作品。トム・ハンクスを主演に迎え、『プーと大人になった僕』のマーク・フォースター監督がハリウッドでリメイクしたのがこの『オットーという男』です。
変わり者で近寄りがたく、町内イチの嫌われ者というオットーなんですが、今のような頑固じいさんになった背景がわかるにつれ、愛らしく感じてきてしまう。それもこれも、トム・ハンクスがオットーの心の機微を表情で、仕草で、話し方でめちゃくちゃ繊細に表現しているから。
トム・ハンクスの主演作が日本で公開されるのは『ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書』(2017年)以来ですが、彼が主演というだけでヒューマンドラマとして楽しめるに違いない、という安心感が半端ない!
【見どころ②】ユーモラスで泣けて泣けて……これぞヒューマンドラマ!
この作品は、笑って泣けて、のバランスが絶妙な王道ヒューマンドラマです。ヒューマンドラマ好きには絶対おすすめ。
オットーの行き過ぎた正義感は、近所にいたら面倒だと思うけど、突き抜けていて笑えちゃうレベル。近所に越してきたメキシコ人一家に振り回される姿もおかしくて、ここではコメディ要素が効いています。
この、お節介奥さんマリソルを演じているのが、メキシコの有名なコメディ女優、マリアナ・トレビーニョ。元々コメディが得意なトム・ハンクスと彼女との掛け合いにも注目です。
見どころ①にも書いたように、観客はだんだん孤独な中にユーモアを感じるオットーのことが憎めないやつだと気づいてきて、どうにか人生を楽しんでほしい、と願うようになります。そうなると、もう彼の過去に触れ、孤独に触れ、悲しい出来事があれば泣けちゃいますよね。
ちなみにオットーが過去を振り返る際、若き日のオットーを演じているのはトム・ハンクスの息子、トルーマン・ハンクス。今までは裏方で撮影監督などを務めてきましたが、今作が本格的な俳優デビューになりました。
【見どころ③】お節介が孤独な人を救う
嫌われ者のオットーには職場でも近所でも誰も近寄ろうとしないのですが、向かいの家に引っ越してきたマリソル一家は違います。メキシコ料理を差し入れしたり、工具を借りに来たり、車の運転や子守りを頼んだり……積極的にオットーと関わろうとします。
他にもオットーとコミュニケーションを取ろうとする人達が出てくるのですが、おそらくアメリカの中でも保守的なエリアでは、みんなどこか“アウェー”な人だというのが共通点。彼らとの関わりによって、オットーがどう変わるのか? 結局変わらないのか? ぜひ最後まで劇場で見届けてください。
文/富田夏子
作品情報
『オットーという男』全国公開中
- 監督:マーク・フォースター(『プーと大人になった僕』『ネバーランド』)
- 脚本:デヴィッド・マギー(『ライフ・オブ・パイ トラと漂流した227日』『ネバーランド』ともにアカデミー賞®脚色賞ノミネート)
- 製作:リタ・ウィルソン/トム・ハンクス
- 原作:フレドリック・バックマン「幸せなひとりぼっち」(ハヤカワ文庫)
- 出演:トム・ハンクス/マリアナ・トレビーニョ(TVシリーズ「クラブ・デ・クエルボス)/マヌエル・ガルシア=ルルフォ(『マグニフィセント・セブン』)/レイチェル・ケラー(TVシリーズ「TOKYO VICE」)