オンライン授業でも、子どもの目の輝きを見逃さないヒント〜高濱正伸の 毎日子育てガッツポーズ〜
コロナウイルスと向き合いながらの子育てに不安だらけのお父さん、お母さん。大丈夫です!
「やるべきこと」に大きな違いはありません。
高濱正伸先生から、変化していく社会に対応していく、ちょっとしたコツを紹介していただきます。これからの子育てを笑顔で楽しんでいくヒントにしてください。
学びの時間を止めない!
私が主宰する「花まる学習会」では、避難訓練と名付けて、オンライン授業を併用活用しています。とにかくどんな状況下でも、未来を生きる大切な子どもの「学びの時間」だけは、ストップさせてはいけない! と思い、決断をしたのです。
これは、どんなことにでも共通することですが、問題が起きたときには常に、最悪の事態を想像し、備えておく心構えが必要です。
とにかく、子どもの発育は待ったなし。それは、就学前の子どもたちも同じです。学びとは、算数や漢字学習など、作業のような机上の学習だけではありません。
花まる学習会では子どもたちが将来「メシが食える大人」「魅力的な人」に育つことを目標としています。メシが食えるというのは、これからどんな時代に変化していっても、本質的な物事を考えられる思考力と発想力、感性、強い体を持っていることです。
それらの土台は、幼児期の「遊び」や「生活」で身につけられていくことがほとんどだといってもいいでしょう。ですから、幼児期の「今」を止めずに健全に生きていくことが大切なのです。
「無人島論」で考える
ただ、これだけ制約がかかった日々が続くと「コロナ禍では何もできない」「今までは幼稚園に行っている間に家事を片付けたり、歯医者に行ったりできたのに……」「一日中子どもが張りついていて、自分の時間が全然ない」と、口を開けば嘆きばかりになっていませんか?
でも、恐ろしいことをいうようですが、もしかしたら、これから何年もこんな状況かもしれません。それでも文句だらけの毎日を、しかめ面で子どもと向き合って生活していくのですか?
例えば、家族で乗っていた船が転覆をして、無人島(まあ、昔は人が住んでいて雨水がしのげる廃屋や飲料用の湧き水がある……くらいの島としましょう)に漂流したとします。そんなときに「あ~あ、前はよかった。コンビニ……便利だったなあ」と、なくなったものにばかりこだわるのではなく、「生き残っただけでもうけもん! 屋根もあるし、水もある。あとは、お父さんが食料を探してくるから安心しろ」と、前を向く気持ちが大切です。
そして、落ちついて「今、あるもの」を見つめると、まだまだいいこともある。がんばってみよう! と、パワーも沸いてきます。何より、心が安定してくるはずです。親が不満だらけで、心が不安定だと、それはそのまま、子どもにも反映してしまいます。
子どもの報酬は、ママの笑顔
みなさんそうだと思うのですが、子どもがスヤスヤと寝息を立てている顔を見ると、昼間イライラして必要以上に声を荒げてしまったり、泣く子どもを「うるさい」と思ってしまったりしたことに、心がチクっと痛む瞬間がありますよね。
そんなときは、「ああ、この子が元気でいてくれるだけでいいのよ! 子どもを持てた幸せが私の人生に輝きを与えてくれたじゃない!」 と、目の前にあるもののすばらしさを確認するようにするのです。そして次の日は笑顔で子どもをギュッとすればいい。
このコロナ禍で、私は子どもたちに「お母さんを助けてあげてね」「お母さんは、みんなが元気でいることがうれしいんだからね」と声をかけました。すると必ず「うん、わかった!」と、力強くうなずきます。
子どもたちにとって、何がうれしいことかって、それは、お母さんがニコニコしていること。みんな、お母さんの力になりたいと思っているんです。
そして、自分の存在こそが親を幸せにしている。自分には価値があるんだという自信が、子どもの自己肯定感にもつながっていきます。
幼児のうちに、オンライン教育を体験せよ!
学びの現場は、算数や国語など習慣化学習はオンライン、実験や体験学習はリアル授業でといった具合に、多様な組み合わせを持たせるハイブリッド化がますます進むでしょう。そこで、就学前の子どもも、幼児向けのオンライン教室を体験したり、その利用の仕方や良さを知っておいたりすることは、いいことだと思います。
オンライン授業3つのメリット
①自分のペースで進められる
録画配信プログラムなら、何度でも見直すことができるし、途中で止めたり、戻したりして、考えながらゆっくり進めることができる。
②質問がしやすい
画面越しだと、誰にとっても先生との距離が最短で、はずかしがり屋の子でも、周りの目を気にせず、チャットなどで質問ができる。
③特別な経験ができる。
遠くて行くことができない博物館や美術館の展示物や、動物園や水族館の映像が楽しめて、好奇心を刺激する体験が家でもできる。
子どもが見た後に、「僕もやってみたい」「続きが知りたい」と、行動を起こしたくなるようなものがGood!
時にはあえて、子どもと距離をおこう!
悩み相談に訪れる保護者の中には「うちの子○○ができないんです」「落ち着きがなくて」等々、子どものマイナス面ばかり並び立てる人がいます。
「それで、○○ちゃんの長所はどこなの?」と聞くと「ないです」なんて……。長所がないわけないじゃないですか!? 心に余裕がなくなっている保護者の方にありがちです。わが子の長所が見えなくなったら危険信号。まず一呼吸おいて、子どもがすることに口を出さず「見守る」ことから始めましょう。
子どもは実に「イキイキ」としている生き物です。好奇心旺盛で、興味のあるものを自ら見つけ、大人が「くだらない」と思うことにも意味を持ち、探求していきます。
そのときの目の輝きを見逃さないで欲しいのです。
口や手を出しそうになったら、その手にペンを握り、メモや日記をつけてみましょう。「今日は○○がツボのよう! もう30分も続けている」なんて具合に。そうやって、子どもとの間に距離をおくことで、保護者の気持ちにもスッと余白ができて落ちついてくるはずです。
そして、その「目の輝き」こそが、今後の「育ち」に大きく関わる「集中力」や「思考力」につながっていくのです!
夫婦ミーティングをルーティン化しちゃえ!
夫婦の会話の多さが家庭を安定させる
リモートワークが増えて、夫婦揃って家にいる時間が多くなったけれど、仕事中はどちらかが子どもの世話をしているし「よくよく考えたら、子どもが生まれてからというもの、夫婦の会話ってほとんどないかも」なんて方もいるのでは?
それは少し危険です!
本当は、夫婦=家族になったからこそ話す内容も、多岐に渡る(子どもの教育からご近所付き合い、将来設計まで)わけだし、いろいろな価値観のすり合わせも必要。
それなのに、いったん2人で話す習慣がなくなってしまうと、いざと言うときになかなか話が切り出せなかったり、お互いのタイミングが合わなかったりして「後でね」「じゃあいいよ」なんてことになってしまいがち。
修正するのは「今」です!
子どもの成長と共に「お互い、何を考えているのかわからない」状態になる前に、夫婦の会話をルーティン化。「今日の報告」みたいに、会議っぽく話し合うことを‶クセ″にしてしまいましょう。あーだ、こーだ、くだらない話もふくめて、言いたいことが言える環境は心地よいし、ストレスフリーです。
撮影/嶋田礼奈(講談社写真部) 取材・文/天利久美
講談社「たのしい幼稚園」2020年11月号掲載より
監修/高濱 正伸(たかはま まさのぶ)
花まる学習会 代表。1959年生まれ。熊本県出身。東京大学農学部卒、同大学院農学系研究科修士課程修了。 1993年に「作文」「読書」「思考力」「野外体験」を重視した、小学校低学年向けの学習塾「花まる学習会」を設立。父母向けの講習会は、年間3万人が参加。「情熱大陸」など数々のドキュメンタリー番組でも取り上げられ話題に。『小 3 までに育てたい算数脳』『わが子を「メシが食える大人」に育てる』など著書も多数。
本記事は【Mart×コクリコ パパママ応援プロジェクト】の一環としてコクリコの記事を転載したものです。
コクリコ2021年11月25日公開より