いつか来る更年期は、どのように乗り越えたらいいですか?【高尾美穂先生のお悩み処方箋】

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産婦人科医の高尾美穂先生が、相談者の心に寄り添って優しくアドバイス!Mart読者世代である30~40代女性の人には言いづらいお悩みにお答えいただきます。第13回は、いつかは来る更年期をどう乗り越えていったらいいかについてです!


教えてくれたのは
高尾美穂先生
産婦人科専門医・婦人科スポーツドクター・ ヨガ講師。産婦人科専門医として、女性の健 康をサポートしつつ、それぞれのライフステージ・ライフスタイルに合った治療を提案す る一方、スポーツドクターとして、女性のプロアスリートへのサポートも行っている。

【相談テーマ】これから始まる更年期にできることはある?

読者プロフィール画像

相談者:Kさん(45歳)
石川県在住
会社員&WEBライター

30代後半~40代で生理の変化を感じたら更年期のサインかも!?

Kさん:今45歳ですが、いつ更年期が来てもおかしくない年齢なので、生活などで気をつけた方がいいのかなと気になっています。私は最後の出産が41歳だったのですが、出産年齢が早いか遅いかによって、更年期が始まる時期が早かったり遅かったりすることはありますか?そもそも、何歳くらいから更年期は始まるのでしょうか?

高尾先生:出産した年齢と更年期の時期については、関連性はないと考えていいと思います。閉経年齢の平均は50歳で、閉経の5年前から閉経後5年までの10年間のことを更年期と呼んでいます。

Kさん:50歳が閉経年齢の平均なんですね!では、私もそろそろ更年期が始まるかもしれませんね。

高尾先生:更年期が始まっているかどうかのひとつの目安は、生理周期の変化です。わかりやすく自覚できるサインとしては、生理周期に変化が出てきます。よくあるパターンは、周期が今までより短くなり、短い周期が続いた後に生理と生理の間隔が長くなって、気づいたら生理が来なくなった、というもの。ただし個人差があり、急に大量出血したり、少量の出血がだらだらと続いたりする人もいます。こうした生理の変化を経て、最後の生理から1年以上生理がなければ、閉経したと考えられます。

Kさん:生理の変化がひとつのチェックポイントなんですね。そのほかに、更年期が始まると、どのような症状が起こるんですか?

高尾先生:更年期になると、体温調整がうまくできずに汗をかく、ほてる、のぼせるなどの症状が起こりやすいですね。また、「疲れやすくなった」「風邪を引いているわけでもないのにだるい」といったことを相談なさる人が多いです。

辛い症状があるなら、エクオールサプリの服用やホルモン補充療法を検討しても

Kさん:もし更年期の症状が重かったら……と思うと不安です。

高尾先生:症状は人によってかなり個人差がありますが、更年期がはじまらないとどうなるかはわかりません。だからこそ不安になってしまいますよね。一般的には、「こうでなくては!」というこだわりがあり責任感が強い人、介護や子育てなどで心身ともに大変な思いをされている人などは、症状が重い傾向があるようです。女性ホルモンのエストロゲンと似た働きをするエクオールを体内でつくれない人も、更年期の症状が重いことが多い傾向がありますね。

Kさん:そうなんですね……。症状を少しでも軽くする方法はありますか?

高尾先生:エクオールを体内でつくれず、かつ辛い症状がある場合は、サプリでエクオールを補うと症状が軽くなる可能性が高いです。エクオールを体内でつくれるかどうかは、検査キットなどで調べることができますよ。もしエクオールをつくれない人でも、特に症状がなく困ったことがなければ、そのままでも大丈夫です。

Kさん:サプリで症状が軽減するかもしれないなら、試してみたいですね。

高尾先生:婦人科に受診していただいた場合には、女性ホルモンを補うホルモン補充療法をおすすめしています。ホルモンを補充するには、飲み薬を飲む方法と、ジェルを塗ったりシールを貼ったりして経皮吸収させる方法、腟に効かせる腟錠があります。肌から補充する方法を選ぶと、ホルモン補充療法の代表的な副作用である血栓症や乳がん発症のリスクが低くなります。

Kさん:PMSもある場合、更年期障害の症状なのかPMSなのか、見分けることはできますか?

高尾先生:更年期かどうかは、血液検査でホルモンの量を調べることである程度の判断ができます。ただし、更年期障害は診断が難しいものなんです。

Kさん:血液検査だけではわからない、ということですか?

高尾先生:そうなんです。体調の変化の原因は何なのか、内科や耳鼻科などの病気ではないかを調べて、その可能性が否定されたあとに更年期障害かもしれない、となります。ほかに病気がないことを確認したうえで、起きている症状や生理の状態などから総合的に判断するので、はっきりした診断は難しいものなんです。不安なときは、一度婦人科で相談してみてください。そのときに、健康診断の結果なども持参するといいですよ。

高尾美穂先生

定期的に婦人科に相談し経過観察をすると安心です

Kさん:若い頃に子宮内膜症の治療をしたことがあります。鼻スプレーで生理を半年止めましたが、体温調整がうまくできずに、ほてりに悩まされて……。あのときの辛い症状が、更年期になったらまた出てくるのかな?と不安で……。

高尾先生:おそらく当時は治療のために、薬でエストロゲンの分泌量を抑えたのだと思います。そのときにそのような症状が出たのであれば、更年期でも同じ症状が出る可能性は高いですね。

Kさん:またあの経験をすると思うと……。どれくらいの症状を目安に相談に行くべきなんでしょうか。

高尾先生:生活に支障が出るようであれば、一度婦人科で相談してみてください。受診してみてもしホルモンの血液検査結果に異常がなかったとしても、少し期間を置いてからまた受診すると変化が分かっていいかもしれません。半年くらいでも、ホルモンの数値などは大きく変わることがあります。

Kさん:検査で異常がないけれど症状がある場合は、我慢するしかないですか?

高尾先生:その場合には、漢方を処方してもらうよう相談するのもいいかもしれませんね。更年期の不調は症状をゼロにするのは難しいかもしれませんが、自分に合うものが見つかれば辛さを軽減できる可能性があります。

Kさん:少しでも楽になるとうれしいですね。

高尾先生:そうやって定期的に経過を見ることは大切です。それでも症状がひどくなるならばホルモンの再検査をしてみようということになり、ホルモン補充療法が始まるかもしれませんし、状態によっては漢方とホルモン補充療法を並行して行うこともあるんですよ。

Kさん:ほかにも自分でできることがあれば知りたいです。

高尾先生:まずは睡眠時間をしっかり確保することでしょうか。40代は介護、子育て、仕事、夫婦関係と、さまざまな悩みを抱えがちな年代です。あまり思いつめすぎずにリラックスしてくださいね。

Kさん:まさに忙しい年代ですよね。

高尾先生:また、適度に運動することも大事です。体を動かすことで肩こりや腰痛も緩和され、夜もよく眠れるようになります。

【高尾先生のお悩み処方箋】いつか来る更年期の迎え方

1.生理周期のチェックを。変化があれば更年期の可能性も
2.生活に支障が出る症状があれば婦人科に相談を
3.エクオールサプリやホルモン補充療法で症状は軽減できる
4.ホルモン値に異常がなくても辛いときは漢方を処方してもらう選択肢も
5.生活習慣の改善も心がける

【相談を終えて】対処方法があるとわかっただけでも、安心できました

45歳という年齢、また出産が遅かったという点でもわからないことが多かったので、丁寧に教えていただき感謝です。これから迎える更年期が軽く済んでくれることを願うばかりではありますが、もし始まったとしてもその対処方法もあるということがわかったことで、ひとつ安心感を得ることができました。

近くの海を散歩する様子

海に近い場所に住んでいるので、子どもたちと自然に触れられる場所に出かけてストレスをためないように、そして気持ちよい空気を吸ってリフレッシュするように心がけます。

撮影/中林 香 取材・文/酒井明子

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