貧血のせい?体調不良が重なり困っています……。【高尾美穂先生のお悩み処方箋】

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産婦人科医の高尾美穂先生が、相談者の心に寄り添って優しくアドバイス!Mart読者世代である30~40代女性の人には言いづらいお悩みにお答えいただきます。第22回は貧血による体調不良のお悩みです!

悩める女性の心を軽くしてくれる!高尾美穂先生

高尾美穂先生
産婦人科専門医・婦人科スポーツドクター・ ヨガ講師。産婦人科専門医として、女性の健 康をサポートしつつ、それぞれのライフステージ・ライフスタイルに合った治療を提案する一方、スポーツドクターとして、女性のプロアスリートへのサポートも行っています。雑誌やテレビほかさまざまなメディアでも、女性のお悩みへの優しいアドバイスが好評です。

【相談テーマ】疲れやすい、頭痛、冷え性など不調が多くつらいです。

相談者プロフィール

相談者:Sさん(42歳)
愛知県都在住
20歳の子どもの母
美容師

たかが貧血と思わないで!寿命に影響することも!?

Sさん:35歳の頃に受けた人間ドッグで、貧血だとわかりました。そのせいか、疲れやすいなどの不調がいくつもあって困っています。

高尾先生:貧血と診断されたのであれば、ヘモグロビンの量が少なかったのだと思います。ヘモグロビンが少ないと、疲れやすい、息切れを起こしやすいなどの症状が出やすいです。ほかにはどんな症状がありますか?

Sさん:ひどいときはツメが割れやすく、伸びてこないことも。あとは、頭痛、冷え性、体温調節がうまくできない、といった不調があります。

高尾先生:ツメが割れやすい、伸びてこないのは、鉄欠乏性貧血の代表的な症状です。頭痛は貧血と関係あるかわかりませんが、冷えや体温調節は関係あるかもしれません。

Sさん:今は貧血改善のため、定期的に点滴をしています。そのおかげでだいぶ落ち着いていますが、今後も貧血対策は続けたほうがいいですか?

高尾先生:そうですね、日常生活でも貧血にならないよう意識するといいですね。というのも、生理がくる年代の女性は毎月血を失うわけですから貧血の人が多いのですが、自分では気づいていないという人がほとんどなんです。健康診断の血液検査の結果にあるヘモグロビンの数値を、みなさんぜひ一度確認してみてください。貧血なんて大したことない、と甘く見てはいけません。放っておくと、寿命に影響を及ぼすことだってあるんですよ。

Sさん:貧血で寿命が変わるのですか?

高尾先生:貧血の状態だと酸素を運ぶヘモグロビンが少ないため、血液で体の各所に運ばれる酸素の量が低下してしまいます。これを補うために、心拍数が増加します。すると、体への負担が大きくなるため疲れやすくなり、寿命にも影響を及ぼすのです。

Sさん:ただ疲れやすくてしんどい、というだけでは済まないんですね!

高尾先生:そうなんです。女性は40代後半になると更年期に伴う不調が出てくるので、貧血だとは思わないかもしれません。でも、だるい、やる気が出ない、調子が悪いといったことを感じたら、血液検査をしてみるとよいでしょう。男性は貧血の人があまりいないので、ヘモグロビンの数値が低い人は胃や腸から出血している可能性もあると考えて検査を追加しますが、女性もその可能性がゼロではないことも覚えておくといいですね。

Sさん:生理で出血するのが原因のひとつなら、閉経すれば貧血は改善しますか?

高尾先生:確かに、貧血は生理がくる年代の女性に多く、閉経すると改善する傾向があります。ただ注意が必要なのは、閉経前は出血量に幅があり、大量に出血する人もいるということ。そうなるとさらに体調が悪化してしまうこともあるので、貧血かもしれないと思ったら、閉経を待つのではなく診察を受けましょう。

高尾美穂先生

鉄の調理器具で鉄分を補うのもおすすめ

Sさん:貧血もしっかり対策することが大切なんですね。普段の生活で何かできることはありますか?

高尾先生:貧血を改善するためには、①出血量を減らす、②鉄分を補う、の2つを同時に行う必要があります。出血を減らす方法のひとつに、ホルモン治療があります。

Sさん:ホルモン治療にはどんなものがあるのでしょうか?

高尾先生:低用量ピルの服用やミレーナの挿入、ジェノゲストの服用などがあります。

Sさん:いろいろな方法があるのですね。

高尾先生:低用量ピルは、卵胞ホルモンと黄体ホルモンが含まれたもの。服用すると、過多月経の症状の緩和に役立ちます。ミレーナは子宮内に装着して黄体ホルモンを放出するリング。子宮内膜を薄くし出血量を減らすことができます。経腟分娩の経験がある方はスムーズに挿入できる人が多いので、装着検討をおすすめします。分娩経験のない方でも、装着可能です。 ジエノゲストは子宮内膜症の治療に使われる黄体ホルモン系の薬ですが、こちらも出血量を抑える効果があります。

Sさん:なるほど。そして、鉄分を補うことも大切ということですが、食べ物やサプリから摂るのがいいのでしょうか?

高尾先生:そうですね。鉄分が多い代表的な食べ物はレバーや赤身肉、ほうれん草、プルーンなどですが、それを食べるだけでは補いきれない可能性も。それに加えて、鉄のフライパンや鉄のやかんといった、鉄の調理器具を使うことです。

Sさん:調理器具も関係あるのですか?

高尾先生:鉄の調理器具で調理したりお湯を沸かすことで、食材やお湯から鉄分が摂れるんですよ。一度に大量に摂れるわけではありませんが、日常的に少しずつ鉄分を補給することができるので、おすすめです。

Sさん:それは知りませんでした!さっそくやってみたいと思います。

【高尾先生のお悩み処方箋】貧血改善のためにできること

  1. 血液検査でヘモグロビンの量を確認する
  2. だるい、疲れやすいなど感じたら医療機関で相談する
  3. 出血量を減らすためにピルなどを活用する
  4. 食べ物や調理器具を工夫し鉄分を摂取する

【相談を終えて】普段の生活の中で鉄分補給を意識するように!

アーモンド

先生がおっしゃっていたように鉄分摂取を増やすために、最近はアーモンドを食べるようにしています。ナッツ類の中では鉄分も多く美容にいいため、飲み物もアーモンドミルクなどを飲むように。鉄のフライパンや鉄のやかんといった鉄の調理器具については知らなかったので、こちらも使ってみようと思います。

撮影/中林 香(高尾先生) 取材・文/酒井明子

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