産婦人科医の高尾美穂先生が、相談者の心に寄り添って優しくアドバイス!Mart読者世代である30~40代女性の人には言いづらいお悩みにお答えいただきます。第16回は、高血圧についてのお悩みです!
悩める女性の心を軽くしてくれる!高尾美穂先生
産婦人科専門医・婦人科スポーツドクター・ ヨガ講師。産婦人科専門医として、女性の健 康をサポートしつつ、それぞれのライフステージ・ライフスタイルに合った治療を提案する一方、スポーツドクターとして、女性のプロアスリートへのサポートも行っています。雑誌やテレビほかさまざまなメディアでも、女性のお悩みへの優しいアドバイスが好評です。
【相談テーマ】血圧が高く、将来の健康が心配です
相談者:Kさん(43歳)
東京都在住
自営業
塩分を控えた食生活がいちばんの高血圧対策に!
Kさん:毎年、健康診断を受けると必ず、血圧の項目で要注意と指摘を受けます。上は140、下も90あって……。血圧の高さはなにが原因なのでしょうか?更年期なども関係するのでしょうか?
高尾先生:40代前半の場合、更年期の影響はそれほどないと考えられます。女性ホルモンの変化が血圧に影響を及ぼすのは、50代からが多いです。血圧が高いのは以前からなんですか?
Kさん:そうですね。30代の頃から健康診断で指摘されていました。
高尾先生:女性の血圧は若い頃からそうそう上がるものではないんです。30代からずっと高いのであれば、遺伝的な要素があるのかもしれませんね。家族や親戚に血圧が高い人はいますか?
Kさん:はい、両親が高血圧で薬を飲んでいます。
高尾先生:そうなんですね。それなら、体質的な問題があるかもしれませんね。体質は変えられませんが、いちばん大切なのは食生活に気を付けることですね。
Kさん:具体的にはどうしたらいいのでしょうか?
高尾先生:高血圧の大敵は塩分のとりすぎ。そのため、塩分量の少ない食生活を心がけることが重要です。例えばラーメンのスープは飲み切らない、ドレッシングは塩分が少なくても美味しく感じられるビネガー系にする、タレはかけるのではなく小皿に入れるなどしてつけるようにするといった工夫ができますよ。
Kさん:ちょっとした工夫で減らすことができるんですね。
高尾先生:味つけも濃いめではなく薄めにして、塩分量を減らす努力をしてみてくださいね。1日の塩分摂取量の目安は、女性は6.5g未満と言われています。
Kさん:塩分量の目安を守ろうと思っても、計算するのはなかなか難しそうですね。
高尾先生:自分で計算するのは大変ですよね。その代わり目安として活用できるものがあります。尿から「推定食塩摂取量」「推定カリウム摂取量」「ナトカリ比(Na/K比)」を測定してくれる「シオチェック+」という検査キットがあるので、一度試してみるといいかもしれません。
Kさん:食事以外に睡眠などの生活習慣も関係しますか?
高尾先生:睡眠時間が短いと血圧が下がりづらく、高血圧になる人もいます。ただ、やはり睡眠より食生活の方が影響が大きいですね。まずは、塩分摂取量の見直しからしてみるのがいいと思いますよ。
高血圧が続くと命に関わる危険も!
Kさん:食生活に注意していけば、血圧は改善されていきますか?
高尾先生:血圧は年齢を重ねれば上がっていくため、今後はさらに注意が必要です。生理がある間は女性ホルモンのエストロゲンが脂質代謝の促進、血管や骨の強化、美肌などを助けてくれています。しかし更年期になりエストロゲンの分泌量が減っていくと、動脈硬化、高血圧、脂質異常などのリスクが上がってしまいます。もともと低血圧だった女性も、高血圧になってしまうこともあるので、高血圧の人に限らず注意が必要です。
Kさん:そうなんですね!さらに血圧が上がると、どのようなリスクがありますか?
高尾先生:高血圧が続くと血管に負担がかかり、脳梗塞や心筋梗塞など、命に関わる病気を引き起こす可能性があるので、注意が必要です。高血圧は、食生活はもちろんですが、ストレスなど、いろいろな要因が重なって起こるもの。そのため、ふだんの生活からさまざまな対策をしていくといいと思います。
Kさん:食生活以外はどうしたらいいですか?
高尾先生:血管の老化を防ぐために、有酸素運動をするといいですね。ウォーキング、軽いジョギング、水泳などがおすすめです。逆に重たいものを持ち上げるような、一気に血圧が上がってしまう運動は避けましょう。
Kさん:なるほど。
高尾先生:アルコールやタバコも血圧を上げてしまうので、控えたほうがいいですね。あとは睡眠時間もたっぷり確保し、ストレスのない生活を心がけてください。
Kさん:わかりました。今日から塩分少なめの食事と運動を心がけて生活してみます。
【高尾先生のお悩み処方箋】高血圧を改善するためにできること
1. 塩分摂取量を減らした食事を心がける
2. 血管の老化を防ぐために有酸素運動をする
3. アルコールやタバコを控えめにする
4. よく寝てストレスのない生活を送る
【相談を終えて】調味料の使い方に気をつけるようになりました
塩分摂取量が大切ということで、食生活の見直しから始めました。いちばん簡単にできたのは、「かけるではなくつける」!つけるときもなるべく少なめを意識しています。また減塩出汁を使い、少ない調味料でしっかりした味つけをするようにしています。
運動は登山で体を動かすように。急いで登らずにゆっくり登って、急激に血圧が上がらないように心がけています。今後も気をつけながら生活したいと思います。
撮影/中林 香 取材・文/酒井明子