産婦人科医の高尾美穂先生が、Mart読者世代である30~40代女性の人には言いづらいお悩みに優しくアドバイス!第8回の後編は、更年期についてです!
教えてくれたのは
高尾美穂先生
産婦人科専門医・婦人科スポーツドクター・ ヨガ講師。産婦人科専門医として、女性の健 康をサポートしつつ、それぞれのライフステージ・ライフスタイルに合った治療を提案す る一方、スポーツドクターとして、女性のプロアスリートへのサポートも行っている。
【相談テーマ】30代で更年期ってありえますか?
相談者:Mさん(39歳)
16歳・11歳・9歳・2歳の母
埼玉県在住
専業主婦
産後の生理が戻っているなら、自律神経が乱れている可能性も
Mさん:今年に入ってから、脇汗が大量に出たり、顔のほてりがあり驚いています。それほど暑くもない日に脇汗が流れたり、顔がポッポとほてったりするようなことはこれまでありませんでした。そろそろ産後3年たつのですが、これは産後のホルモン変化によるものでしょうか?それとも更年期でしょうか?
高尾先生:産後、生理は戻っていますか?
Mさん:はい、戻ってます。4人目の出産後生理の経血量が増えましたが、その他の変化はありません。
高尾先生:生理が戻っているということであれば、産後抑えられていたエストロゲン分泌が戻っているということなので更年期ではないですよ。おそらくMさんの汗はいわゆる自律神経失調状態による不調だと思います。
Mさん:そうだったんですね。
高尾先生:ただし、39歳は更年期症状が起こりえる年齢ではあります。更年期とは、閉経前後5年の10年間のこと。早いと40歳で閉経する人もいるので、その場合35歳以降が更年期ということになります。
Mさん:でも私の場合は違うというのは、なぜでしょうか?
高尾先生:生理がほどほどのサイクルで来ているという状態は、卵巣機能が維持されれているサインだといえるからですよ。
Mさん:実は更年期についてあまり知識がなくて……。これから私の体はどうなっていくのでしょうか?
高尾先生:日本人の平均閉経年齢は50歳といわれていますが、個人差があるので、閉経が40歳の人もいれば、50歳を過ぎる人もいます。
Mさん:閉経年齢にはずいぶん差があるのですね。この差は妊娠経験の有無などと関係あるのですか?
高尾先生:妊娠経験の有無は関係ありません。早く閉経がくる要因としては、喫煙、ベジタリアンなどといった極端すぎる食生活、ストレス、運動習慣がないこと、卵巣の手術歴があげられます。でも中にはこれらに当てはまらなくても、早期に閉経してしまう人もいます。
Mさん:どのように閉経していくものなのでしょうか?
高尾先生:一般的な流れでいうと、40代に入ると生理周期が短くなるなどといったバラつきがでてきます。生理がバラつき始めると、「今月は生理がこなかったな」といったいわゆる「生理が飛ぶ」ということが起きてきます。生理周期が徐々に延びていき、最終生理から1年たっても生理がこない場合に「閉経した」と判断できます。
健康維持に影響するのは閉経よりも生活習慣
Mさん:閉経年齢の「早い」「遅い」はどちらがいいのでしょうか?
高尾先生:実はどちらもリスクがあって、閉経が早すぎる場合は脳梗塞、骨粗そう症、脂質異常症などのリスクが高まりますし、遅い場合は乳がんや子宮内膜症のリスクが高まります。
Mさん:えっ?! では閉経後はどうやって健康を維持していけばよいのでしょう?
高尾先生:エストロゲンがなくなるということは、確かに健康を守ってくれていたバリアがなくなるというイメージです。ただし、早期に閉経した場合はホルモンを補う治療でエストロゲンを補うことができます。閉経が遅くても、乳がんなどは定期的に検診を受けていれば大きなリスクを回避できます。
Mさん:少し安心しました。
高尾先生:よく更年期や閉経後が不安だと言う人はいますが、健康維持という点では、エストロゲンがなくなることよりも生活習慣の方が影響が大きいです。毎月こうしてMart読者の相談を受けていて感じるのが、みんな運動不足だし、睡眠時間が短いですよね。忙しい年代だということはよくわかりますが、もっと自分の健康のことを意識してほしいです。
Mさん:まさに私のことです……。
高尾先生:必要なのは栄養バランスのよい食事や運動習慣、そして適切な睡眠時間。また、年に1度健康診断を受けて、心配なことがあれば早めに医療機関にかかるというのが健康の基本ですよ。
Mさん:足元の生活から整えていくということですね。
【高尾美穂先生のお悩み処方箋】自律神経を整え健康維持のために大切なこと
1:バランスのよい食事
2:運動習慣
3:睡眠時間の確保
4:年に1度健康診断を受け、気になることがあれば受診をする
【相談を終えて】自分の体に真剣に向き合っていきたいです!
正直、これまでこんなこと誰にも相談できない……と思っていたので、病院へ行くこともためらっていました。夫からは1度病院へ行ったら、と前から言われていましたが、「こんなことで病院行く人はいるの?」と思って聞こえないふりを続けていました。
でも、やはり1度受診してみよう、という気持ちになれたこと、自分でも改善できる方法があるということがよく分かりました!
4人の子どもたちを最優先にし、自分の何もかも、とくに病院などは後回しにしてしまいがちでした。でも、自分の大切な体のために、もう少し真剣に向き合ってきちんと考えたいと思いました。勇気を出して相談してよかったです。
お菓子づくり、パンづくりにハマっています。毎日のようにおやつをつくって、子どもたちに食べてもらっています。コロナ禍で家にいる時間が増えて、さらにつくる機会が増えた今、いいストレス解消にもなっています!
撮影/中林 香 取材・文/須賀華子