産婦人科医の高尾美穂先生が、Mart読者世代である30~40代女性の人には言いづらいお悩みに優しくアドバイス!第6回の後編は、イライラや寝付けないお悩みについてです!
教えてくれたのは
高尾美穂先生
産婦人科専門医・婦人科スポーツドクター・ ヨガ講師。産婦人科専門医として、女性の健 康をサポートしつつ、それぞれのライフステージ・ライフスタイルに合った治療を提案す る一方、スポーツドクターとして、女性のプロアスリートへのサポートも行っている。
【相談テーマ】「実母や夫にイライラ」「大事なイベント前に眠れない」これってストレス⁉
相談者:Kさん(46歳)
大阪府在住
自営業
イライラはストレスではなく更年期症状の可能性も
Kさん:今回、もう一つ相談したいのが、ストレスについてです。最近ストレスに弱くなっているようで、ストレスが身内など身近な人間関係や寝付きなどに影響してしまっているのを何とかしたくて。
高尾先生:身近な人間関係に影響ってどんな感じですか?
Kさん:実母や夫から「こうした方がいいよ」などと指示をするような言葉に、「わかってるから」とついイライラしてしまい、聞き流すことができません。身内に対して寛容になれない自分に焦っています。
高尾先生:なるほど。「怒りっぽい」「うつっぽい」というのは、ストレスというよりかは、更年期特有の症状の一つなので、これもホルモン補充療法によって改善するかもしれませんよ。
Kさん:ストレスではなかったんですね。
高尾先生:もしホルモン補充療法をしばらく続けても改善しなかったら、漢方の出番ですね。抑肝散(ヨクカンサン)という漢方を試してみるといいですね。ただし、薬は何がどれだけ効いたのかを見ながら使うことが大事。まずはホルモン補充療法から行って、3カ月くらい様子を見てから次に漢方、など順番に試すようにしてください。
眠れないのがイベント前だけならそれほど心配ありません
Kさん:怒りっぽいのは更年期症状だったとはびっくりしました。睡眠についてはどうすればいいでしょうか?仕事で大事なイベントがある日の前日など、寝付けなくなってしまうんです。
高尾先生:睡眠はみんなとても悩んでいて、この連載でも相談が多いですよね。少しKさんの事例から離れますが、睡眠に関しての原則は下記の2つです。
- Mart世代は睡眠が足りていない人が多数。睡眠時間の確保を意識して。
- 眠気のピークは、夜の11時と昼間の1~2時の1日2回。夜のピークである夜11時にはベッドに入っているよう心がけて。
高尾先生:ただ、Kさんの場合イベント前だけの不調で、普段はちゃんと眠れているということであればそれほど心配ないように思いますよ。大事なことがある前は興奮して、自律神経が高ぶってしまっているのが寝付けなくなる原因ですね。
Kさん:実は心療内科で相談して睡眠薬ももらったのですが、これを飲んだら朝起きられないのではないかという不安から服用できていません。
高尾先生:実際に起きられないという人もいるので、まずは翌日が休みの日などに、その薬が朝まで体に残るかどうか、試してみるといいですね。睡眠薬にも種類があって、入眠時に効く短時間作用型のものもあるので、自分の困りごとの傾向を把握して医師に伝えるようにしてみてください。
Kさん:使い始めると依存してしまうということはありますか?
高尾先生:睡眠薬は従来から使われてきた非ベンゾジアゼピン系の薬は依存性が高いということで、目下使用が見直されています。心配なら、病院で「依存しないものがいいです」などと希望を伝えてください。また、毎日ではなく、心がざわざわして眠れないなど、自分が「眠れない」と感じるタイミングで使用してみたい、と医師に伝えてみてください。
【高尾先生の処方箋】「イライラ」「寝付けない」を解消するためにできること
1:「イライラ解消には」ホルモン治療療法を。
(3カ月経っても改善しない場合は漢方薬「抑肝散」〈ヨクカンサン〉を試す)
2:「寝付けない」お悩みは、イベント前だけ睡眠薬を使っても。
(「寝付けない」「途中で起きてしまう」など自分の困り事の傾向を把握して医師に伝え、自分に合った睡眠薬を処方してもらう)
【相談を終えて】縁遠く感じていたホルモン療法も前向きに考えられそうです
ホルモン療法という言葉は聞いたり見たりしたことがありましたが、なんとなく自分とは縁遠いものだと思っていました。汗が止まらないことに関して、漢方では使えるものが少ないというのも目からうろこが落ちた気分です。
漢方なら安心かなという何となくのイメージだけ持っている状態だったので、今回相談したことで、自分の症状に合った治療方法を詳しく聞くことができて、明日以降の毎日に「なんとかなる日々が来るかも」と、希望が湧いてきました。
イライラや睡眠についても同様です。今まで悩むだけであまり行動に移せていませんでしたが、丁寧に解決方法を提案してくださったことで動き出せるきっかけをいただけたと思います。先生、ありがとうございました!
写真は、初夏につくったシロップ漬けなど。趣味から始まった手づくりジャムのお店を立ち上げて丸1年経ちました。冬が終わるとマルシェイベントでの出店が増えるので、先生のアドバイスをもとにイベント前でもしっかり眠れるような体制をつくりながら、頑張っていきたいです。
撮影/中林 香 取材・文/須賀華子 編集/倉澤真由美