ここ数年で行う人も多くなったVIO脱毛。実際にやってみたけれど、婦人科の検診に行くのが恥ずかしいという人もいるのではないでしょうか?VIO脱毛にどのようなメリットがあるかなどを、相談者の心に寄り添った優しいアドバイスが人気の産婦人科医・高尾美穂先生に詳しく教えていただきました!
悩める女性の心を軽くしてくれる!高尾美穂先生
産婦人科専門医・婦人科スポーツドクター・ ヨガ講師。産婦人科専門医として、女性の健 康をサポートしつつ、それぞれのライフステージ・ライフスタイルに合った治療を提案する一方、スポーツドクターとして、女性のプロアスリートへのサポートも行っています。雑誌やテレビほかさまざまなメディアでも、女性のお悩みへの優しいアドバイスが好評です。
【相談テーマ】VIO脱毛後に検診に行っても恥ずかしくない?
相談者:Nさん(49歳)
東京都在住
自営業補佐
VIOの脱毛をしていても、医師は気にしていません
Nさん:高尾先生のクリニックに来る患者さんの中には、VIO脱毛をしている人はいますか?
高尾先生:20〜30代の若い世代を中心に、増えている印象があります。すべて脱毛している人もいれば、Vラインだけ残している人もいるし、人によってさまざまです。
Nさん:実は私も少し前にVIO脱毛をしました。ただそれ以来、なんだか恥ずかしくて婦人科検診などに行きづらくなってしまいました。VIO脱毛をしている患者さんを見ると、医師はどのように思うのでしょうか?
高尾先生:正直、なんとも思わないですよ。脱毛のサロンでは恥ずかしくないけれど、病院では恥ずかしく感じるのは個人的には不思議に思います。もしかすると、脱毛サロンのスタッフは女性ですが、産婦人科医には男性の先生もいらっしゃるからですかね?また、産婦人科医にとって外陰部を目にすることは、美容師さんが髪の毛を見るのと同じような感覚なんです。
Nさん:そうなんですね。そうであれば少し安心しました。
高尾先生:いろいろな状態があるのが当たり前で、いいとか悪いとかないので気にしなくていいと思いますよ。
Nさん:最近ではVIO脱毛をしている人が増えているという話でしたが、メリットがあると感じている人が多くなっているのでしょうか?
高尾先生:医学的には正直、勧める理由も止める理由もありません。よく毛は大事なところを守るため、という話を聞きますよね。でも毛があるからといって、外敵や感染症から守るという役目もそこまでありません。
Nさん:そうなんですね!
高尾先生:逆に、毛がない方がケジラミに寄生されにくいことは確かです。また、お手洗い後に拭く際や性交渉の際も、毛がない方が楽と感じる人もいるようです。今は介護されることを考えて脱毛する人もいるというのがニュースになっていますが、介護をしている人に聞くとどちらでもいいという意見もありますし、まちまちですね。
Nさん:高尾先生としては、おすすめしますか?
高尾先生:「毛がある方がいい」「毛がない方がいい」このどちらがいいと感じるかの価値観は人それぞれです。脱毛するにはお金もかかるのでよく考えてみて、価値を感じるのであればやってみたらいいのではないでしょうか。
Nさん:デメリットはありますか?
高尾先生:脱毛することで外陰部の皮膚に細かい傷がつき、違和感がある人もいます。患者さんに相談されることがありますが、重大な皮膚トラブルでない限り、ほとんどの場合は2カ月くらい経てば治るので、あまり気にしなくていいと思います。
乾燥やおできなどデリケートゾーンのトラブル予防のためにできる対策も
Nさん:自宅でできるデリケートゾーンのケアはありますか?
高尾先生:脱毛に関することでいえば、VIO脱毛などをしていない人が自宅でできるとしたら、Iの部分の毛のカットくらいでしょうか。基本的にVIO部分の毛は一定の長さになると抜けて維持されますが、長いと感じるのであれば切ってもいいかもしれません。お手洗いに行った際に、拭きやすくなるのはないでしょうか。
Nさん:肌に関するデリケートゾーンのケアはどうでしょうか?
高尾先生:年齢を重ねてエストロゲンが減っていくと、ヒジが乾燥するのと同じように外陰部も乾燥するようになります。専用の保湿クリームなども発売されていますが、個人的には普通の保湿クリームを塗るのでもいいのではないかと思います。
Nさん:陰部の皮膚も年齢とともに変化するんですね……。
高尾先生:腟の内側など粘膜が乾燥している場合は、一般的な保湿クリームでは粘膜に塗ることをおすすめできず、こういったものでは解決しません。そういうときはエストロゲン錠剤を腟に入れるなどの対処法があるので、病院で相談してみるとよいでしょう。
Nさん:なるほど。ちなみに股の付け根などにできるおできも、エストロゲン減少による乾燥が原因なのでしょうか?
高尾先生:粘膜ではなく皮膚の問題ですね。そちらは目に見えないような小さな擦り傷などから雑菌が入り、感染することが原因と考えられます。皮膚が弱い人や、免疫力が落ちているときに起こりがちです。
Nさん:一度おできができると、何度もできがちですよね。
高尾先生:おできができた部分に袋が残っていて、そこにまた雑菌が感染しやすいため、くり返し炎症が起きやすいんです。どの世代の人にも起こりがちですよ。
Nさん:なにか対策はあるのでしょうか?
高尾先生:シームレスショーツなど縫い目のないショーツなら、肌への負担を減らすことでき、おできもできにくくなります。縫い目がおできに当たると、痛いし悪化しやすくなってしまうんです。あとは、ボクサータイプのパンツもいいかもしれません。レースなどフリルのついたショーツは、肌と摩擦が起きやすく、この件でお悩みのかたにはあまりおすすめできません。
Nさん:わかりました。そのようなことで悩んだときは、気をつけてみます。
【高尾先生のお悩み処方箋】VIO脱毛後の検診について
- 医師はなんとも思わないので、気にせずに検診を
- 医学的にはVIO脱毛はしてもしなくてもどちらでもOK
- 年齢を重ねるとデリケートゾーンの乾燥トラブルも
- 粘膜の乾燥にはエストロゲン錠剤が効果的
- おできができやすい人はシームレスショーツがおすすめ
【相談を終えて】恥ずかしがらずに検診に行こうと思います!
私が思っているほど医師はVIO脱毛を気にしていないと聞いて、恥ずかしい気持ちがなくなりました。恥ずかしがらずに検診に行こうと思います。
デリケートゾーンの乾燥は気付きませんでした。きちんとデリケートゾーンも保湿しようと思います。
撮影/中林 香(高尾先生) 取材・文/酒井明子