大人だけでなく、成長途中の子ども世代も、生理に関するお悩みを抱えていることも。今回は、高校生の娘さんの生理にまつわるお悩みです。親から見てこれは大丈夫?相談したほうがいい?といった不安を、産婦人科医の高尾美穂先生が優しくアドバイス!
悩める女性の心を軽くしてくれる!高尾美穂先生
産婦人科専門医・婦人科スポーツドクター・ ヨガ講師。産婦人科専門医として、女性の健 康をサポートしつつ、それぞれのライフステージ・ライフスタイルに合った治療を提案する一方、スポーツドクターとして、女性のプロアスリートへのサポートも行っています。雑誌やテレビほかさまざまなメディアでも、女性のお悩みへの優しいアドバイスが好評です。
【相談テーマ】娘の生理周期が安定しません
相談者:Dさん
在住:大阪府
職業:専業主婦
受診する場合は、まずは基礎体温の記録を
Dさん:17歳の娘がいるのですが、生理周期がいまだに安定せずに悩んでいます。生理開始から10日経っても下着に漏れるくらい多くの出血があることもあれば、2〜3日で終わることも。そうかと思えば、生理が終わった数日後にまた出血があることも……。
高尾先生:初潮が来たのはいつでしたか?
Dさん:小学校5年生の頃でした。
高尾先生:一般的に初潮が来てから生理周期が安定するまで、3〜4年くらいかかることもあります。娘さんの場合は、一般的に周期が安定するという時期は過ぎていますね。ただし、周期が安定するまでの期間は個人差もあります。生理がストップしたり、何カ月も生理がなかったりするわけではないので、まだ安定していないだけかもしれません。これくらいの年代では、ダイエットをしたら生理が止まったり周期が乱れたりと、ちょっとしたストレスが生理周期に影響を及ぼすこともあります。
Dさん:そうなんですね。
高尾先生:お子さんのこととなると、親御さんは心配が尽きないと思います。このことで、娘さんとお話されたことはありますか?病院で診察を受けるかどうかや、受診してどうしたいのかについては、お子さんがどれだけ困っているかが実は大切なんですよ。
Dさん:困っているかどうかですか?
高尾先生:はい、そうです。生理が決まった周期で来ないために生理用品を持ち合わせていなくて困った、生理が終わったと思ったらまた出血があった、部活の時に経血の量が多くて困る、などで本人が生活の中でどれくらい困っているかどうかを話し合い、娘さんの意見を聞いてみてください。困り具合や娘さんがどうしたいかによって、受診するかどうかやどこまで治療するかなども変わってくると思います。ただし、受診すると決めても、いきなり婦人科に相談に行っても的確な診断を受けるのは難しいかもしれません。
Dさん:なにをしたらいいのでしょうか?
高尾先生:娘さんがもし困っていてどうにかしたいと考えているのであれば、まずは基礎体温をつけてみてください。基礎体温をつけることで排卵の有無や、ホルモンバランスなどが大まかにわかります。
Dさん:排卵があれば、生理が不定期でも大丈夫ということでしょうか?
高尾先生:総合的なことは、基礎体温をチェックし傾向をつかむことで状態が見えてくることが多いです。もしも基礎体温をつけないで受診した場合、婦人科でできるのはエコー検査。検査では、今この瞬間の状態がわかるだけなので、たまたまこの状態なのかいつもなのかが判断がつかない場合があります。そして年齢を考えると、ホルモン検査まではしなくてもいいのではないかと思います。
Dさん:どれくらいの期間、記録する必要がありますか?
高尾先生:目安は3カ月くらい。少なくとも2回分の生理の記録として、2カ月分くらいの記録はないと、判断が難しいです。
娘さん本人の困り具合や考えを聞いてみて
Dさん:娘は生理不順だけでなく生理前のおりものも多く、シートでは足りないくらいシャバシャバで水っぽく、ちょっと匂う茶色のおりものが出るそうです。これも気にした方がいいのでしょうか?
高尾先生:そうですね、実際に診察したわけではないのでなんとも言えませんが、子宮頚部のポリープなど、出血が続く原因がもしかしたらあるのかもしれませんね。ただ、高校生だと内診に抵抗のある子もいると思うので、おりものについてもそこまで細かくなくてもいいので記録して相談してみるといいと思います。
Dさん:わかりました。ちなみに最近子宮頸がんワクチンを受けたのですが、これは生理不順と関連性はありますか?
高尾先生:ワクチンとは関連性がないと考えていいと思いますよ。
Dさん:そうなんですね。気になっていたので知ることができてよかったです。ほかに気になっているのは、ピルのことです。実は以前、ピルを勧められたことがあるのですが、ピルは有効なのでしょうか?
高尾先生:周期を整えたいという希望をお持ちであれば、ピルを服用することで見せかけ上ではあるけれど生理周期が定期的になるので、有効と言えますね。出血量が多くて困っている方にも効果があります。
Dさん:ピルは私が不安でどうしても踏み切れなくて……。
高尾先生:今の10代の子の親世代のうち、親自身が10代のときにピルを服用した経験がある人はあまりいません。自分が使ったことがないものを娘に服用させることに抵抗があるのは、気持ちとして私もよくわかります。でも、ピルは正しく服用すれば効果があるもの。もし娘さんが、今の状態がつらくて悩んでいて、娘さん自身がピルを飲むことに抵抗がないのであれば、親のこだわりで選択肢を減らさないでいただけるとありがたいです。
Dさん:確かにそうですね。
高尾先生:繰り返しになってしまいますが、やはり大切なのは娘さん自身の意思です。困っていることがあるのか、生理不順で生活に不具合があるのか、それをどうにかしたいと考えているのか……。本人の意思がないと、基礎体温を毎日測るのも難しいですよね。でも困っていれば、面倒でもきちんと測ると思うんです。逆にもし本人があまり困っておらず、生理不順のことをそこまで気にしていないようであれば、少し見守ってあげてもいいかもしれませんね。
Dさん:わかりました。一度娘ともしっかり話し合ってみます。ありがとうございました。
【高尾先生のお悩み処方箋】娘の生理不順への対処法
- まずは本人の困りごとや考えを聞く
- 3カ月程度基礎体温をつける
- おりものが気になるようであればそれも記録する
- 基礎体温などの記録を持って婦人科に相談する
- 本人に抵抗がなければ、ピルも選択肢の1つとして考える
【相談を終えて】娘の相談をいつでも受け入れられる準備をしておきます!
私の悩みと娘の悩みが必ずしもイコールではないこと。先走って不安をあおるようなことをしてしまったのではないかという気持ちになりました。これからは娘の気持ちを大切にして寄り添っていきたいです。
まだ相変わらず周期も落ち着かないのですが、娘本人は基礎体温に興味を示すように。「困ったらすぐ相談するから今は大丈夫」と伝えているので、私は娘の相談をいつでも受け入れられるようにしておこうと思います。
娘は毎日生理のことを忘れるくらい充実した毎日を満喫しているので、そうこうしているうちに落ちついてくれたらいいなと思います。自分だけで悩んでインターネットで検索してはさらに心配になることの繰り返しでした。このたびは本当にありがとうございました。