全国一斉休校に始まり、外出制限、緊急事態宣言と続いたコロナ禍。当初は、家族全員が家の中で長い期間過ごすことに大きな不安がありましたよね。次第にこの生活にも慣れてきた今、「ケンカもたくさんしましたが、家族との絆を強めてくれた貴重な時間になりました」と振り返りつつある方も多くいます。家族で家事を分担し、心の余裕が生まれたことも大きいよう。みなさんのエピソードを伺いました。
「ゲームに夢中」から、掃除や洗濯に目覚めた!?子どもたち
「休校が始まったばかりの頃は、ゲームに夢中の子どもたちを注意することで日々疲れていましたが、次第に変化がありました」と北川明子さん。小学生と幼稚園のお子さん2人は、ある時から部屋の拭き掃除をするようになったのだそう。「どうしたの? と聞いたらゲームの中で動物たちもやっているからと。助かる、ありがとうと伝えました。掃除が楽しそうに感じたのかもしれませんね」。
同じく家事に目覚めたのが、櫻井俊子さんの小学生と幼稚園のお子さんたち。タオルを畳むのは2人の役割になったそう。「ぐちゃぐちゃな時もありますが嬉しいですね。以前は学校・習い事と時間に追われ、子どもたちにも時間がなかったですし、私自身も温かく見守る余裕がなかったなと。おうち時間で得た最大の収穫は、子どもへの心の余裕かもしれません」。
料理をしなかった子どもやパパが、キッチンに立ち腕を振るうように!
スイーツやパンを一緒に作ったのは髙橋ひとみさんと小学生のお子さん。「大好きな絵本に出てくるパンをつくりました。こうする?ああする?と相談するのも楽しくて。学校や幼稚園が再開しても、一緒に何かする時間をつくりたいです」。
「この期間で最大の出来事は、9歳の娘が炊飯器でご飯を炊けるようになったこと」と話すのは水田由美さん。「フルタイムで働いているため、夕食づくりはいつも時間との闘いでした。この機会に、お米を研ぐ、水を入れ炊飯器のスイッチを入れるを教えたら…一人で完璧に出来るように。
今までが教えていなかっただけか、一人で抱え込まなくて家族に助けをもとめればいいんだ、私」と目からウロコが落ちる心境を味わったそう。
小学校高学年や中、高校生になると、大人の力を借りずにつくる子たちもいます。安部加代子さん宅の高校1年生、小学生のお子さんたちは、休校中、共同か交代で平日のお昼ごはんをつくるように。
「せっかく時間がある中、生活力をつけさせたくて。以前も少しやっていましたが、私が主導だったので面倒になったので続かなかったのですが、子ども主体で1週間献立を決めるとやる気アップというWEB記事を読み、これだ!と」。食べたいものを2人でリストアップし、動画サイトなどを参考にキッチンに立ったそう。
「炭水化物やがっつり系が多いですが、全部美味しかったですよ」と安部さん。お子さんたちも「献立を考えるのがこんなに大変だったとは知らなかった」「お母さんすごいね。いつもありがとう」と、食事つくりの大変さを痛感したそうです。
これまで料理はしなかったけれどStayHomeをきっかけに「今日は夜ご飯つくるよ」と包丁を手にしたパパも多くいます。
櫻井祐介さんは、特製餃子を子どもたちとつくりました。「公園や体育館で子どもたちと一緒にバスケをしていた休日から、出かけられない休日になり、ならばと子どもたちを誘いました」。家族みんなで美味しくいただいたそう。
同じく手作りの「棒チーズダッカルビ」を家族にふるまったのは花嶋孝司さん。ホットプレートでみんなの目の前で焼き、味も本格的に。
「普段料理をやらないパパでしたが、想像以上に美味しくて上手。今までは時間もなかったからやりたくても出来なかったですね、楽しい食卓になりました」と妻の幸子さんは話します。
家の中でも家族みんなで楽しめることはたくさんあった
旅行の計画、学校行事やイベントへの参加、週末の外食と、家族が一緒に楽しめるイベントが難しくなった期間、おうちの中で一緒に考える・取り組むことで家族の絆を大きく育んでいるファミリーも。
能戸優子さん宅では、家族5人で1000ピースのパズルに挑戦中。幼稚園のお子さんには色分け、中学生やパパ、ママで組み立てとみんなで役割分担。「大好きな海のデザインにし、出来上がりはインテリアとして部屋に飾る予定です。いつになるかわかりませんが、のんびり楽しみます」。
「家にいるので食べることがとにかく楽しみになってしまい、気づいたら私も家族も体重がかなりアップしてしまって」と笑うのは今井由美子さん。これはまずい!とネットで体組成も計測できる体重計を買い、ヘルシーに食べものを意識したり、みんなでダンス系のゲームにチャレンジしたり、家の中で出来るプチダイエットを開始。
「まだ少ししか効果は出ていませんが、体重計にのるのが楽しみなんです」。家族共通の意識がないと、始められず今も続けられていないと今井さんは話します。
壁紙のDIYにチャレンジしようと決めたのは安河内映里さんご夫婦。「お出かけ大好きだったので、家の中でこんなに長く過ごすことは貴重な体験でした。最初は不安な気持ちでしたが、次第に家の中に目が行き、ならば大改造しようと!」。
また、定期的にお花が届くサービスも開始しました。「2週間に1度お花が届くのですが、お部屋の中がぱっと明るくなります。おうちの中が充実していることって、こんなにも心から晴れやかになるのだと改めて実感しています」。幼稚園と未就学のお子さんたちも「かわいいね」と一緒に世話をしているそうです。
鈴木綾子さんは、「特別なことはないけれど、家族の会話が増えたことが大きな変化」と分析。
「以前は日々バタバタしていたので、例えば夕飯に関しても感想とか言ってくれる暇も、聞く暇もなかったのですが、最近は、これいいね、とか、こういうの食べたいなど、テーブル上での会話が増えました。そう言われると、頑張っちゃおうかなと私も前向きに。コロナ禍は、家族が日々健康で、たわいもない話をしあえる日常こそが幸せ、と気づけたきっかけになりました」。
10人に聞けば10人とも「コロナ禍なんてなければよかった」と答えるでしょう。でも、起きてしまったことのなかで新たな楽しみや絆を見つけることができる前向きさこそが、Martで取材をしてきた皆さんの素晴らしさなのだと、改めて感じました。
取材・文/新里陽子