【働くMartミセス】相手に“寄り添う”仕事が、自分の世界を広げるきっかけになった

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仕事と子育てを両立しているMart世代の女性にフィーチャーする「働くMartミセス」。今回、お話を聞かせてくださったのは、子育てをしながら障がい者向けの在宅介助者として働く伊藤翠さんです。

手に職をつけて、ライフワークとして続けられる仕事に就きたい。そんな考えのもと、今から10年ほど前に出合ったのが障がい者向けの介護の仕事。育児と両立させながら仕事を続ける今の思いを聞きました。

【プロフィール】

障がい者の在宅介助者 伊藤翠(みどり)さん
週に3~5日、障がい者向けの在宅介助者として勤務。趣味はアクセサリーなどのハンドメイドやブログ。100均やニトリで季節小物をチェックするのも好き。夫と娘( 9歳)の 3人家族。

相手に“寄り添う”ことで自分の世界に広がりが見えた

人と関わるのが好き。11年続ける介助の仕事は自分に合う雇用形態で

「仕事を終えて利用者さんの家を出るときに『スムーズに一日を送れた』と思える瞬間がいちばんうれしい。利用者さんも同じ思いでいてくれたらいいなと思います」

週に3〜5回、障がい者向けの在宅介護の介助者として働く伊藤さん。比較的若く元気な女性の障がい者の自宅に出向き、日常生活をサポートするのが仕事。「この仕事を始めて 11 年目です。長いこと続けて実感するのは『自分に合っている』ということです」

人と関わることが好きな伊藤さんにとって、相手の生活のなかに入って支えられるのが介助の仕事の楽しさだという。さらに、育児と無理なく両立できる点も魅力的だそう。「以前は正社員でしたが、子育てと両立したいので、今は同じ会社の契約社員として働いています。人手不足の業界なので、雇用形態に固執せずとも、そのときどきのライフスタイルに合った働き方が選択できるのもいいですね。今年は娘の小学校のPTA役員も務めていますが、仕事の日数を調整できるので、無理なく両立できています」

仕事で学んだ。自分の固定概念を捨て相手に寄り添うこと

「昔から手に職をつけ、ライフワークとして取り組める仕事に就きたいと思っていました」

動物好きだったことから、ペット系の専門学校で学び、卒業後は動物病院に看護師として勤務。しかし動物が好きなだけに、病院で弱った動物の世話をする仕事は心が痛くなった。 「長期入院している動物には、情も湧いてきます。そんな動物が死んでしまったときなどは、精神的にもこたえました」

次第に動物の看護を仕事にすること自体辛く感じるなか、ハードな勤務形態も追い打ちをかけた。「手術や出産が始まると、終わるまで帰宅はできません。仕事の終わりが見えない働き方では、長く続けるのは難しいと感じました」。転職を決意した伊藤さんが仕事に求めたのは「手に職をつけられる」「元気な人と関われる」「就業時間がはっきりしている」の3つ。

そんなある日、近所の障がい者向けの在宅介護の会社が介助者の募集をしていることを知る。 「障がい者に接したことはなかったですが、利用者さんは皆元気な若い人だったので、最初からスムーズに取り組めました。それに、働きながら資格が取れるという点も魅力的でしたね」

研修を受けてから仕事に臨んだ伊藤さんだが、失敗から学ぶことも多かったという。「利用者さんの朝食を、サラダ、フレンチトースト、卵と別々のお皿に分けて出したところ『、同じお皿でいいんだけど』と言われたんです。異なるメニューはお皿を分けるというのは私の『常識』で、無意識のうちにその『常識』を相手にもあてはめていたことに気づき、ハッとさせられました」

今は小さなことでも、利用者がどうしたいと思っているかを把握して動くことを大事にしている。「自分の常識や『こうすべき』という考えから離れ、相手の生活に寄り添うのがプロだと思っています。指示が聞きとれないときも、変に気を回すのではなく、何度でも聞き直し、相手に寄り添うことを徹底しています」

仕事からの刺激で、プライベートの楽しみもどんどん広がっていく

プライベートでは在宅介護の仕事を始めた翌年 32 歳で結婚。その翌年に産休を取り、娘を出産した。「娘が1歳になったときに育児の気分転換にと、週1ペースで仕事を再開しました。仕事を再開して大人と話せる環境を得られたことがうれしかったですね。私はオンとオフのメリハリがあるほうが動けるタイプなので、多少でも仕事をしているほうが育児などのプライベートもうまく回ることも実感しました。何より利用者さんから『戻ってきてくれてよかった』と言われたのがうれしくて、今でも覚えています」

以来、週数回のペースで仕事を継続してきたが、夫の転勤で一時期仕事を辞めた時期もあった。「当時幼稚園の年中だった娘が『ママと一緒にいられる時間が増えた』と喜ぶ姿を見て『そんなに働かなくてもいいのかな?』と頭をよぎったりもしました」

それでも伊藤さんが働き続ける理由は2つある。「一つは働くことで家計の足しになること。私が働いたお金で娘に習い事の選択肢を増やしてあげられるのは大きなモチベーションです。それともう一つは、純粋に仕事が好きだから。好きな仕事に没頭できる時間は、幸せです」

介助の仕事の面白さは利用者から刺激を受け、自分の生活にも広がりが出る点だという。「若く元気な利用者さんに寄り添うので、毎日に変化があって楽しいんです。仕事につき添ったり、お買い物につき添ったり。利用者さんがライブに行きたいと言うので、車イスを押してつき添った会場でそのアーティストのファンになったこともありました(笑)。感 心したり、自分もやってみようと世界が広がることがたくさんあるのが面白くて。つくったことのない料理でも、言われたものをパッとつくることもできるようになりました」

「人が好き」、そう話す伊藤さんの介助の仕事への目線は極めてフラットだ。「利用者さんに特別なことをしてあげたいとか、感謝をされたいという気持ちはありません。利用者さんがその日一日、あるべき日常を送ることができ、欲を言うならばちょっとだけ楽しい日になればいいです」

自分も相手も等身大の一日を送れることが幸せだと語る伊藤さん。この先も今のペースで長く仕事を続けたいと言う。「体力が必要な仕事なので、無理をして疲れてしまっては本末転倒。楽しいと感じられる範囲で、長く続けていきたいです」

生活も仕事も大切にしたいから無理はしない。伊藤さんの笑顔の秘訣はその一言に凝縮されていた。

【伊藤さんの仕事の日のスケジュール】

6:30 起床
7:00 朝食
7:30 子ども送り出し
8:30 家を出る
9:00    仕事開始
17:30 仕事終了
18:00 帰宅
18:30 娘と夕食
20:00 お風呂
21:00 娘就寝・片付け・ 自由時間
22:30 夫帰宅&夕食
23:00 翌日の食事準備・ 洗濯
24:00 就寝

つくり置きではなく「切り置き」で 無印良品の冷食も利用


忙しい平日の食事づくりを助けてくれる時短食材は、時間のあるときにカットし、冷凍してある野菜と買い置きの冷食類。「買い物に行った日や時間のある土日に、よく使う野菜はカットして冷凍しています」。玉ねぎ、長ねぎ、にんじんはそれぞれくし形切りや、みじん切りにして冷凍。エリンギ、まいたけ、しめじなどのきのこ類は混ぜて冷凍し、自作の「きのこミックス」に。「野菜がすぐに使える状態だと時間のない平日もスピーディーな調理が可能になります」。


ほかに時短のために常備しているのは、無印良品のサムゲタンや五目いなりといった冷凍食材や、揚げたてが美味しい子どものおやつ用の冷凍ポテトなど。「無印良品の冷食は美味しいので、『一品足りない !』というとき用に常備しています。いざというときに何とかなるよう、普段から準備しておくと、少しだけ気持ちが楽ですね」

無心になれるハンドメイドがオフの日の息抜きに


手づくりが趣味という伊藤さん。最近ハマっているのはミニチュアフード。「ここ2年くらいつくっていますが、粘土でパーツをつくっていくのが楽しくて。オフの日の楽しみです。できたものは家に飾ったり、手づくり仲間のママ友にプレゼントしています」。その他にもピアスづくりやポーセラーツなどにも取り組む。「介助ワークの邪魔になる指輪やネックレスは着けられないので、手づくりするアクセサリーはもっぱらピアスです。欲しいものを探しまわるより、自分でつくったほうが早いので、ネットでかわいいデザインをチェックしては、貴和やパーツクラブに行って、自分用のピアスをつくっています。ポーセラーツも同じで、欲しいデザインのお皿が手に入るのが魅力です」。つくる楽しさは「無心」になれる瞬間だそう。「手づくり時間は私にとって大事な息抜きになっています」

子育ての目下の悩みは 娘とスマホのつき合い方 


目下の悩みは娘のスマホ。2年生で学童保育をやめて以来、放課後の居場所 を把握するためにGPSを持たせたが、自宅に置いて出かけてしまうことが多い のが悩みだったそう。「同級生もスマホを持つ子が増えてきたので、居場所を 把握する目的でスマホを持たせることにしましたが、SNSやネットゲームの使 い方など新たな不安も出てきています」。娘との間では「アプリで新しい友達 を追加したときは親に伝える」「SNSで友達の悪口は書かない」という約束をし ているほか、使えるアプリやアクセスできるサイト、使える時間を制限してい る。「娘を信頼していないわけではないのですが、ネットの世界は親からは見 えないので心配は尽きません。何かあってからでは怖いのでたまに娘が寝た あとにスマホを見て、想定外の使い方をしていないかなど確認していますが、 スマホ問題はこの先も心配が尽きなそうです」

撮影/平林直己(BIEI) 取材・文/須賀華子  構成/富田夏子

Mart2020年1月号 働くMartミセス より

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