【働くMartミセス】“ママであること”を生かせる天職(前編)

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天職とも思える仕事に邁進し、出産後は専業主婦としてこだわりの育児を謳歌してきた、Mart読者の皆見さん。そんな順風満帆な生活で双子を妊娠。「2歳と双子の3人の育児なんて、自分にできるの?」と不安ななか、必死に毎日と向き合い子育てをしてきた。そんな日々が少しずつ落ち着き3年前から仕事を再開。母として成長した今だからこそ、もう一度仕事と向き合うという今の気持ちを聞きました。

【PROFILE】

皆見芳江さん(40 歳)東京都世田谷区在住/幼稚園教諭
3年前から、かつて新卒で教諭として勤めていた幼稚園にパートで復帰。現在は週3日勤務。趣味はパンづくり。休日は息子の少年野球を家族で応援。夫と息子(小学3年生)、双子の娘(小学1年生)の5人家族。

〝先生〟と〝母〟を行き交いながら先へと進むための原動力を、3人の子育てで手に入れました(前編)

“ママであること”を 職場で生かせるのがうれしい

「園児たちが『先生もっと一緒につくろうよ』『明日もこの遊びの続きやろうね』と遊びに共感してくれたときの一体感が何とも言えず、まさにこの仕事冥利に尽きる瞬間です」
幼稚園教諭として週に3日働く皆見さん。小3の男の子と小1の双子の女の子を育てる母親だ。
「新卒で就職し勤務していた園に、3年前からパートとして戻っています」
若い先生たちの多い職場で、皆見さんは今やベテラン。
「子育てを経験したぶん、以前に比べて職場でも余裕を感じます」
自身の育児経験から、たとえば子どもは頭ごなしに叱るより10分好きなことをさせたあとのほうがスッと行動できることなどを知っているため、園でも「ちょっと好きなことをやらせてあげよう」と、取るべき行動がわかるのだそう。
「ほかの先生に『保護者としてどう思いますか?』などと、意見を聞かれる機会もあるんです。母親としての自分が職場で頼られるのは純粋にうれしいですね」
仕事は昼過ぎであがり、子どもたちが学校から戻るまでには、帰宅する。
「子どもの生活をいちばんに考えたいと思っているので、だからこそ、無理なく両立できる環境に感謝しています」

3人の子育てで学んだ適当に手を抜く大切さ

大学で幼児教育学科に進んだ皆見さん。幼児教育に携わっていこうと決めたのは、大学2年生のときだそう。
「実習で、ある幼稚園に行ったんです。園児たちと思いっきり笑いながら遊んだら、子どもたちが寄ってきてくれて。純粋で真っすぐな子どもたちを相手にする仕事に魅力を感じました」
それこそが、幼稚園教諭の仕事を「天職かもしれない」と感じた瞬間だった。
卒業後は都内の幼稚園に就職。園児たちと心を通わせ、順調な仕事生活を送っていた。ところが3年目に、その後の幼稚園教諭としての価値観に大きく関わる出来事が起きた。
当時、体操の授業を年配の男性が担当していた。
「勤め先はお受験幼稚園だったので、体操の授業では輪から外れるような行動は厳しく叱られたのですが、ある活発な男の子が度々怒られてしまっていたんです」
あるとき、男の子の母親から「体操の授業で怒られたと家で泣いている」と相談を受けた。
「担任としてもっと彼に寄り沿い、時に気持ちを代弁してあげるべきだったと反省しました。体操の先生は子どもに対して厳しすぎることもあると感じていましたが、私にとっては上司だったこともあり、遠慮して意見を言えずにいたんです」
このときの経験は、子どもの目線に立ち、子どもの考えを代弁していくという、今の皆見さんの幼稚園教諭としての在り方を支えている。
プライベートでは28歳で結婚。結婚後、転居に伴い園を退職し、31歳で出産。待望のわが子に、ベビーマッサージや、手づくりの離乳食など、こだわりの育児を楽しんだ。そして2年後、双子の娘たちを妊娠。それまで園で双子とも接してきた経験から、双子育児の大変さは十分想像がついた。
「病院で双子と聞いた瞬間、2歳の息子と双子を育てるなんて無理だと思い大泣きしました」
そんな皆見さんを救ったのは「3人も育てられるなんてラッキーじゃん」という夫の言葉。
「『楽しいことが待ってるんだ』と、気持ちを立て直すことができました」
とはいえ育児の日々は壮絶。頭の中では常に「今この瞬間、誰を優先するか」でいっぱい。夜中も双子の授乳で寝る暇はなく、3時間連続して眠れればマシなほう。
「夜は1人が泣くと他の2人も起こしてしまうんじゃないかとストレスでした。日中も朝から晩まで子どもの世話に追われ、夜になっても朝食の片づけに手がついていないこともあったほどです」
当時の健診ではお酒も飲まないのに肝機能がD判定。極限状態だった。
「大変な毎日のなか、学んだこともありました。それまでは家はいつもきれいにすべきだと思っていたし、育児にもたくさんこだわりを持っていました。でも、生活を回すためには手を抜くことも大事なんですよね。『適当でいい』と思うことの大切さを学びました」
(後編につづく)

 

Mart2020年11月号 働くMartミセスより

撮影/平林直己(BIEI) 取材・文/須賀華子 構成/富田夏子

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