屋外で過ごすのが楽しい季節がやってきました。青空の下で食べるごはんはいつも以上に美味しいし、家族との思い出をつくるのにぴったり。
家族でキャンプや車中泊旅を楽しんでいるキャンプコーディネーター/防災士の三沢真実さんによると、アウトドアランチは、楽しみながら美味しい防災メニューを見つけられる一石二鳥の過ごし方。保存食や燃料の期限切れ防止にも役立つとのこと。無理をしない楽しみ方を教えてもらいました。
ストックしている食品を持って出発
三沢さんは「キャンプのある暮らし」をコンセプトに地球の未来を創造する会社「CAMMOC」の合同代表を務めていて、防災士としての知恵を生かした「SDGs防災キャンプ」や「備えない暮らしフェーズフリー」を提唱中です。SDGs防災キャンプとは、キャンプをするために揃えられる道具や自然に身につく知恵で無理なく楽しく防災することで、今回のアリくんとのアウトドアランチにもまねしたい防災の知恵が詰まっていました。
この日のメニューは具だくさんの炊き込みご飯、鍋を汚さずにつくれる卵焼き、味噌汁。
「乾燥野菜はいろいろな料理に使えて保存性もいいから備えにぴったり。卵焼きはポリ袋に味つけした卵液を入れてもみほぐし、湯煎にかけるだけでプリンプリンに。家族みんなの好物です。湯煎で使ったお湯を味噌汁や食後のコーヒーに使えば燃料も水も無駄になりません。後片づけも簡単」と三沢さん。
洗い物が少なく、捨て汁もないので防災メニューにぴったりです。
洗い物が少なく、捨て汁もないので防災メニューにぴったりです。
自宅で非常用にストックしている水や保存食から必要な分だけ持ち出し、同時に賞味期限切れがないようチェック。また、自宅の冷凍庫にはゼリーを凍らせておき、キャンプの保冷剤代わりにしているとも。いい具合に溶けた冷たいゼリーを食べながら帰るのが楽しみなんだとか。
現地では皮むきや繊細な計量は不要! 三沢さんが見守り、アリくんがつくることも珍しくありません。大人の目が届く範囲限定ですが、アリくんはバーナーやナイフを器用に扱っていて、その手つきは大人顔負け。キャンプでは生きる力と自信が身につくといわれますが、10歳にしてキャンプ歴10年のアリくんを見ると納得です。
さて、アウトドアランチで使うのはチェアとテーブル、調理道具くらいですが、三沢さんは救急セットも用意しています。
「ソフトクーラーに常備薬やトイレ代わりになるペットシーツを詰めて自宅に保管し、お出かけや避難時に持ち出しやすいようにしています。各自の避難用バッグには水と簡単な食料、最小限の着替えなど一次避難に必要なモノを。試しに避難用品だけで過ごしてみると、必要なモノがわかっていいですよ」(三沢さん)
気負わず、身近な自然の中で過ごすひとときが防災に役立つなんて最高ですね。
QOLを高める小さなバーナー
防災の観点では水・食料・防寒具・トイレの確保がとくに重要とされていますが、それだけでは味気ないのも事実。バーナーがあるとホッと一息つく時間が手に入るので、三沢さんも長引く可能性のある二次避難・在宅避難用に用意していると言います。
いろいろなバーナーがありますが、登山やキャンプ用のバーナーは屋外専用設計のため風や寒さに強く、そのうえ軽くてコンパクト。
小さな鍋に入れて持ち出せる携行性のよさが身上で「二次避難だけでなく災害発生直後に身を寄せる屋外の一次避難場所にも持っていけます。背が高く、つまみがバーナーの下にあるので不安かもしれませんが、慣れるとなんてことはありません」と三沢さん。
スマホで検索すればその都度、使い方を確認できますが、いざというときに通信が安定している保証はありません。それに紙の説明書があったとしても暗くて読めないことも。防災メニューもそう。つくり方は簡単ですが、すべてが口に合うとは限りません。日頃から使ってみたり、食べてみることが大事です。
だから週末はアウトドアランチ!
家族みんなで美味しい防災メニューを探しているうちに、小さくてかわいいバーナーの扱い方に慣れ、多様な防災の知恵も身につきます。最初は庭で、お気に入りのレトルトスープをあたためるだけでOK。無理せず続ける防災の第一歩となりますよ。
撮影/逢坂 聡 取材・文/大森弘恵