大阪を舞台に、特殊詐欺の犯罪グループ内部と、彼らを追う警察や裏社会の人々を描いたクライムサスペンス『BAD LANDS バッド・ランズ』。9月29日より全国公開中です。安藤サクラがダーク・ヒロインを演じ、彼女のサイコパスな弟役に山田涼介。壮絶な過去を背負いながら犯罪に加担し、過去から逃げるも常に何かに追われている、強い絆で結ばれた二人のヒリつくような姉弟バディに注目です。
『BAD LANDS バッド・ランズ』あらすじ
<持たざる者>が<持つ者>から生きる糧を掠め取り生き延びてきたこの地で、特殊詐欺に加担するネリ(安藤サクラ)と弟・ジョー(山田涼介)。二人はある夜、思いがけず“億を超える大金”を手にしてしまう。
金を引き出す……ただそれだけだったはずの2人に迫る様々な巨悪たち。果たして、ネリとジョーはこの<危険な地>から逃れられるのか。(公式サイト参照)
【見どころ①】原作からのある設定変更が共感性を高める
映画の原作となったのは、直木賞受賞作家・黒川博行さんの小説『勁草(けいそう)』。特殊詐欺グループの元締めを務める主人公は、原作では実は男性。その主人公の性別を、原田眞人監督が女性へと変更し、さらに安藤サクラさんをキャスティングしたことで女性が観やすいエンタメ作品に仕上がっていました。映像にすると男くさい犯罪物語になりそうなところが、ガラッと変化。強く、軽やかで、美しく、したたかだけど優しい主人公“ネリ”の存在が魅力的で、観る側は次第に共感し、応援する気持ちすら生まれてくるのです。
【見どころ②】安藤サクラ×山田涼介のダークな姉弟バディ
安藤サクラさんが演じる主人公のネリは、特殊詐欺の受け子のリーダー、通称「三塁コーチ」をしながら社会の最底辺で生きる女性。壮絶な過去を持っており、片耳が不自由です。
ネリとは血のつながりがない弟・ジョーは、姉のネリに対して執着にも近い愛着心を持っています。犯罪歴があり、純粋無垢かつ無鉄砲でサイコパスという難役を山田涼介さんが演じ、整った顔立ちで無邪気な笑顔を浮かべながら、何をしでかすかわからない危うさを漂わせていました。
この二人の姉弟バディが、犯罪者とはわかっていても、すごくかっこいい。壮絶な過去を乗り越え、共に生き抜いてきたからこその絆が根底にあり、その気持ちの強さが思わぬラストへとつながっていきます。
【見どころ③】特殊詐欺がテーマのクライムサスペンス
詐欺は絶対に許されないことなんだけど、ネリを通して明かされる犯罪手口はあまりに鮮やかで見事。元締め、掛け子、受け子、出し子など役割が細かくきっちりしていて、警察への対策も考えられています。
一方で、元締めの表向きの顔はNPO法人の福祉事業者ということや、様々な理由で犯罪に手を染めざるを得ない人たちの困窮ぶりも描かれ、複雑な気持ちにもなります。また、ネリの言動からは、生活に困る受け子への取り分を少しでも多くしてあげようという優しさや、受け子の生活を守ろうという使命感も見られます。
もちろん、大阪府警も特殊詐欺を撲滅しようと必死。捜査の手は、だんだんネリ周辺に伸びてきます。また、ネリを追う人物は他にもいて……先が読めないクライムサスペンスにハラハラドキドキ。
元締め役の生瀬勝久さん、ネリのことを幼いころからよく知る元ヤクザ役の宇崎竜童さん、大阪府警の刑事役・吉原光夫さんら、脇を固めるキャストの迫力・凄みは期待以上です。
そして、裏社会の謎多き女を演じたサリngROCKさんは関西の劇団で活躍する気鋭の劇作家。観終わった後必ず「あの存在感が強い女性、誰だったの?」となるはず。映像作品初登場にして強烈なインパクトを残しているので、ぜひ注目してください!
どの場面、どのキャストからも目が離せない『BAD LANDS バッド・ランズ』。劇場の大画面でどうぞ。
文/富田夏子
作品情報
『BAD LANDS バッド・ランズ』全国公開中
監督・脚本・プロデュース:原田眞人
作:黒川博行『勁草』(徳間文庫刊)
出演:安藤サクラ 山田涼介
生瀬勝久 吉原光夫 大場泰正 淵上泰史 縄田カノン 前田航基
サリngROCK 天童よしみ / 江口のりこ / 宇崎竜童
配給:東映/ソニー・ピクチャーズエンタテインメント
©2023「BAD LANDS」製作委員会