直木賞受賞のベストセラー小説「月の満ち欠け」(佐藤正午著)を、大泉洋の主演で実写映画化。12月2日から公開です。“愛する人にもう一度めぐり逢いたい”という強い想いが奇跡を引き起こした壮大なラブストーリーが、リアリティを持って画面に迫ってきます。
『月の満ち欠け』あらすじ紹介
仕事も家庭も順調だった小山内堅(大泉洋)の日常は、愛する妻・梢(柴咲コウ)と娘・瑠璃のふたりを不慮の事故で同時に失ったことで一変。深い悲しみに沈み、故郷で母親とひっそり暮らす小山内のもとに、三角哲彦と名乗る男(目黒蓮)が訪ねてくる。
事故に遭った日、小山内の娘が面識のないはずの自分に会いに来ようとしていたこと、そして彼女は、かつて自分が狂おしいほどに愛した“瑠璃”という女性(有村架純)の生まれ変わりだったのではないか、と告げる。にわかに信じ難い話に、小山内は三角を拒絶する。
その数年後、今度は瑠璃の親友であった緑坂ゆい(伊藤沙莉)から突然の連絡を受ける。「瑠璃が高校時代に描いていた肖像画を探してほしい」。その肖像画には、三角にそっくりな男性が描かれていた…。(プレス資料参照)
【見どころ①】大泉洋が20代から50代まで演じ分け!
主人公・小山内堅役の大泉洋さんは実年齢49歳ながら、28歳、36歳、47歳、55歳と4つの時代を演じ分けています。
柴咲コウさん演じる妻の梢と結婚して娘が生まれた幸せいっぱいの20代、小学生になった娘の成長を見守る30代、高校生になった娘と妻を一度に失う辛い40代、そして失意のまま故郷で母親と暮らす50代の現在。その時ごとの家族を見る目や働く姿、歩き方や姿勢などで演じ分けがきっちりされていて、どの年代も違和感なくすっと観る側に寄り添う感じが素敵でした。
愛する家族を亡くしてからの後半は、笑顔を封印。愛情を注いで育てていた娘について周囲から不思議な情報を寄せられ、苦悩する姿に胸が苦しくなります。
娘・瑠璃が生まれて喜びあふれる20代の小山内。
瑠璃は月を見るのが好きな小学生に成長。
【見どころ②】親子、夫婦、恋人、色んな愛情の形が詰まっている
主人公は小山内ですが、有村架純さん演じる“瑠璃”という女性と、目黒蓮さん演じる三角の切ない恋模様がもう一つ、物語の核となってきます。1980年代の高田馬場を舞台に、レコード店で働く大学生の三角と、どこかつかみどころのない年上の“瑠璃”は出会い、恋に落ちるのですが……。二人の強い魂の結びつき、互いを想い合う気持ちが後の出来事にすべてつながっていきます。
現在TVドラマ「silent」、朝ドラ「舞いあがれ!」と話題作への出演が続き大注目の目黒蓮さんの、悩ましげな表情に注目です!
三角と“瑠璃”は恋人同士の愛の形ですが、小山内の家庭では夫婦愛、親子愛、家族愛であふれていました。大泉洋さんはキャスト全員が登壇したプレミアナイト試写会で「こんな夫婦は少数派」とボヤいていましたが、小山内と梢は何歳になってもラブラブで、互いの好きなところを娘の友達に聞かれても照れながら答えちゃうような夫婦。そんな両親に憧れている娘の瑠璃は、愛情いっぱいに育てられたことがわかる素直な女の子。その後の悲劇がわかっているだけに、幸せいっぱいの家族の様子に胸が締め付けられます。
【見どころ③】ファンタジー要素もすっと入ってきて泣ける
作品全体のテーマは「生まれ変わり」とファンタジックな要素があり、そこを受け入れられるのだろうか? と観る前は少し疑問だったのですが、瑠璃の親友役の伊藤沙莉さんがそのあたり、説得力を持たせる重要な役割を演じています。
廣木隆一監督が公開直前のサプライズ舞台挨拶で、「昔は親戚の誰かが死んだら誰かのところの赤ん坊が生まれて、(亡くなった方の)生まれ変わりだなんていうことがわりと身近にあった」と話をされていましたが、筆者自身も祖母が亡くなって1カ月もしないうちに子どもが生まれ、やはり祖母の生まれ変わりだと言われたりしたことを思い出しました。映画ほどの奇跡ではないにしても、魂の存在を信じる気持ちは誰しも心のどこかで持っているものかもしれません。
欠けては満ちる月のように、魂が巡りめぐる。観終わった後は月を見上げ、劇中で印象的だったジョン・レノンとオノ・ヨーコの楽曲「Remember Love」を口ずさみたくなります。
取材・文/富田夏子
作品情報
『月の満ち欠け』
12 月 2 日(金)全国公開
- 監 督:廣木隆一
- 脚 本:橋本裕志
- 原 作:佐藤正午「月の満ち欠け」(岩波書店刊)
- 主 演:大泉洋
- 出 演:有村架純、目黒蓮(Snow Man)、伊藤沙莉 / 田中圭、柴咲コウ、菊池日菜子、小山紗愛、阿部久令亜、尾杉麻友・寛一郎、波岡一喜、安藤玉恵、丘みつ子
- 音 楽:FUKUSHIGE MARI
- 劇中曲:John Lennon「Woman」(ユニバーサル ミュージック)
- 製 作:「月の満ち欠け」製作委員会
- 配 給:松竹株式会社
©2022「月の満ち欠け」製作委員会
公式HP:https://movies.shochiku.co.jp/tsuki-michikake/