「楽天グループ」と「日本郵政グループ」が資本・業務提携に合意したことが発表されました。全国展開している郵便局のネットワークと、1億人以上の会員を持ち70以上のサービスを展開する楽天経済圏がタッグを組むことで何が変わるのでしょうか?
解説いただいたのは
安田洋祐さん
経済学者。専門はゲーム理論。政策研究大学院大学助教授を経て、2014年4月から大阪大学准教授に就任。『報道ランナー』(関西テレビ)や『ミヤネ屋』(読売テレビ)にコメンテーターとして出演するほか、財務省「理論研修」講師、金融庁「金融審議会」専門委員等を務めるなど多方面で活躍。ユニークな視点での経済解説に定評がある。
提携でどんなことをするの?
- 共同の物流拠点や効率的な配送システムをつくる
- 日本郵便と楽天が保有するデータを共有
- 楽天モバイルの申し込みカウンターを郵便局内に設置
- 日本郵政の配達網を活用した楽天モバイルの販促活動
- 楽天から日本郵政に、デジタル技術に詳しい人材を派遣 など
\安田洋祐さんが考える/
提携で楽天のモバイル分野はどう変わる?
- 郵便局に基地局を設置でき通信インフラの整備が進む
- 郵便局にカウンターを設置することで申し込みしやすくなる
- モバイル業界の勢力図を塗り替える存在になる可能性も
さらに……
モバイル分野以外もさまざまなメリットが期待できそう
モバイルでは申し込みや基地局数の課題が解決⁉
先日、「楽天グループ」と「日本郵政グループ」の資本・業務提携が発表されました。両社は、物流・モバイル・DX※(デジタルトランスフォーメーション)といった分野で連携していく予定です。そのなかでも今回は、モバイル分野に注目して今後の流れを予想してみましょう。
現在、楽天モバイルはモバイル業界で第4位。実店舗の不足や、通信インフラ整備のための巨額の設備投資など、大手三社と肩を並べるために越えなければいけない壁がいくつもありました。しかし、日本郵政との提携で、こうした課題の解決が一気に進む可能性があります。
全国で約2万4000の郵便局がある日本郵便や、通常貯金口座数が約1億2000万のゆうちょ銀行、保有契約数約2600万件のかんぽ生命を持つ日本郵政グループ。郵便局内に楽天モバイルの申し込みカウンターを設置すれば、店舗数を急激に増やすことができます。また、郵便局の屋上などに基地局を設置すれば通信インフラを効率的に整備することもできます(すでに400局を設置済)。
※DXとは、デジタル技術を活用することで、従来なかったビジネスモデルを生み出すなど、革新的な変化をもたらすこと。
さまざまなサービスで利便性向上の期待も!
オンラインはお手のものの楽天が、どこよりも強いオフラインネットワークを持つ日本郵政と組むことによって、圧倒的に便利なモバイル事業者に進化するかもしれないのです。
最近は大手三社が発表した格安の新料金プランが話題になっていますが、いずれもWEB上での申し込みを条件にするなど若い世代をターゲットにしたもの。シニア世代にとって、すべてをWEB上で行うのは簡単なことではありません。「わからないことがあったら郵便局に行って聞けばいい」となれば、インターネット上の手続きに不安を持つユーザーは安心できるのではないでしょうか。
基地局が増えれば都市部だけでなく地方でも電波が届くようになりますし、「安くて便利な楽天モバイル」がモバイル業界の勢力図を塗り替える可能性があります。モバイル分野に限らず、楽天と日本郵政の提携が我々の生活にもたらすメリットははかり知れません。どのようなサービスが生まれるのか、大いに期待して見守っていきましょう。
※掲載中の情報はMart誌面掲載時のものです。
イラスト/熊野友紀子 編集/倉澤真由美 構成/Mart編集部
2021年6月号
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