二酸化炭素の排出量を減らし地球環境を守るため、政府は2030年代半ばを目標にガソリン車の新車販売をなくす方針です。東京都ではさらに前倒しで2030年までを目標に。これにより生活はどう変わるのでしょうか?
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解説いただいたのは
森永卓郎さん
経済アナリスト。日本専売公社(現日本たばこ産業)ほか数々の企業に勤務後、現在は獨協大学教授。専門分野はマクロ経済、計量経済、労働経済、経済政策。『がっちりマンデー!!』(TBS)、『情報ライブ ミヤネ屋』(YTV)などにレギュラー出演中。むずかしい経済を明快に解説するわかりやすい語り口に定評がある。
日本の「脱ガソリン車」目標とは?
国内でガソリンのみで走る乗用車の新車発売を2030年代半ばになくし、すべて電気自動車やハイブリッド車などの「電動車」にする目標。
\森永卓郎さんが考える/
「脱ガソリン車」で注目のポイント
- 電気自動車やハイブリッド車は高額なものが多く家計の負担に
- 今の軽自動車はほぼガソリン車なのでなくなる可能性も⁉
- 環境のためには燃費の悪い車の規制も一考するべき
- 車本体をつくるエネルギーも考える必要が
東京都では2030年から脱ガソリン車が目標に
小池百合子都知事が、2020年12月8日の会見で、都内で販売される乗用車について、2030年までにガソリン車の新車販売をゼロにする目標を表明しました。都内では10年以内に、ガソリンエンジンの新車が買えなくなってしまいそうです。
家計にとっては大きな負担になります。電気自動車はまだ高嶺の花ですし、ハイブリッド車はガソリン車と比べると新車価格が35万円ほど高いからです。もちろんハイブリッド車にすれば燃費は向上するのですが、コンパクトカーの場合、およそ10万㎞以上走らないと初期コストの高さを取り戻せません。
また、もっと困る問題は、軽自動車が市場から消えてしまうことです。スズキが「マイルドハイブリッド」車を発売していますが、これはエンジン走行をモーターが補助しているだけで、電気だけで走行することはできません。そのため、正式にはハイブリッド車としては認められないとみられます。ほかの軽自動車メーカーが製造しているのは、すべてガソリン車なので、このままでは軽自動車そのものが販売できなくなってしまうのです。
環境のためには燃費が悪い車の規制も必要⁉
私は、地球環境を守るために二酸化炭素の排出量を抑える政策には全面的に賛成です。しかし、今回の脱ガソリン車という政策には、少し疑問を持っています。
例えば、軽自動車で最も燃費のよいスズキアルトのJC08モードの燃費は、1ℓ当たり37㎞になっています。ハイブリッド車で、これより燃費の悪い車はいくらでもあります。本当に地球環境を守りたいのであれば、燃費の悪い車の規制をするべきではないでしょうか。
また、もう一つ考えないといけないのは、車をつくるのに必要なエネルギーです。車の素材である鉄やプラスチックやガラスをつくるのにはエネルギーが必要です。そのことを考えると、環境に負荷がかかるのは、実は大型車なのです。
ただ、ガソリン車禁止は、世界の潮流なので覆ることはないでしょう。私は、できるだけ早い時期に、自動車メーカーにハイブリッドの軽自動車をつくってほしいと考えています。
※掲載中の情報はMart誌面掲載時のものです。
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イラスト/熊野友紀子 編集/倉澤真由美 構成/Mart編集部
2021年3月号
最近気になるNEWSな言葉「脱ガソリン車で暮らしはどうなる?」より