プラセンタは医薬品に使われるだけではなく、最近は美容ドリンクやサプリメント、化粧品にも取り入れられていて、興味があるという人は多いはず。そこで今回は「プラセンタとはどんなもの?」「どんな効果があるの?」そんな疑問に皮膚科医がお答えします。
プラセンタとは?
プラセンタとは「胎盤」のことです。胎盤は、妊娠中に子宮内で形成される臓器です。胎盤は赤ちゃんと母体をつなぐ大切な役割があり、赤ちゃんは胎盤を通して母体から栄養や酸素をもらうと同時に、胎盤を通して老廃物を母体に受け渡します。
プラセンタには、細胞の増殖や分化を促進するタンパク質である増殖因子、ホルモン、酵素や、さまざまな生理活性作用に関わる生理活性ペプチド、ビタミン、ミネラルなど、多様な栄養素がとても豊富に含まれています。
哺乳動物もヒトと同じく妊娠期に胎盤が作られます。哺乳動物は産後、胎盤を食べることがありますが、それは産後の栄養補給のためでもあるといわれています。
プラセンタの活用
このように栄養価の高いプラセンタは、医療現場では以前から肝機能障害や更年期障害の治療のため、胎盤由来製剤の注射薬として使われてきました。
最近では、美容ドリンクやサプリメントとして、プラセンタエキスを内側から取り入れるタイプのものや、化粧品としてプラセンタエキスを外側から肌に塗る美容液なども販売されています。
プラセンタのメリット
プラセンタを取り入れることで、プラセンタの効能によるさまざまなメリットが享受できます。
医薬品としての効能・効果
医薬品として用いられているプラセンタエキスを配合した注射薬は、添付文書上の効能効果として「更年期障害、乳汁分泌不全」、「慢性肝疾患の肝機能の改善」などが記載されています。
上記の効果を目的とする場合は、保険適応となります。
美容・健康成分としての活用
また、プラセンタには自然由来の多様な栄養素が豊富に含まれており、私たちのからだにさまざまな効果をもたらしてくれるとされています。
- 抗酸化作用
- 疲労回復
- 免疫機能の改善
- ホルモンバランスの改善
- 血行改善(冷え性、肩こり)
- 自律神経機能の改善
プラセンタの注意点
プラセンタを使う際の注意点についても頭に入れておきましょう。
安全性の高いものを選ぶ必要がある
プラセンタエキスが含まれているものには、医薬品、美容ドリンク、サプリメント、化粧品などがあります。そのうち、医薬品はその製造工程から市販後までさまざまな安全対策が取られているため、安全性が高いといえます。
しかし、未知のウイルスや病原体の存在を完全には否定できず、感染症などのリスクがゼロとはいえません。そのため、医薬品のプラセンタ注射薬を打つ際には同意書が必要になります。
また、市販の美容ドリンク、サプリメント、化粧品は、製造会社ごとの自社基準により製造されています。そのため、商品を選ぶ際は、以下の点をチェックしましょう。
- 会社名
- 原材料、産地
- 日本健康・栄養食品協会(JHNFA)などの基準を満たしているか
- 豚プラセンタの場合、「SPF豚」かどうか
SPF豚とは、日本SPF豚協会の定めた基準をもとに飼育された豚のことで、安全性が高いといわれています。
献血ができなくなる
医薬品として、ヒト由来のプラセンタエキスの注射をされる場合は、異変型クロイツフェルト・ヤコブ病(vCJD)のリスクが完全に否定できないといわれており、その理由から献血ができなくなります。
実際には、ヒト由来のプラセンタエキスの注射によってvCJDが発生したという報告はありませんが、未知な部分が多いためこのように決められているのです。
化粧品などのスキンケア商品や、ヒト由来でないプラセンタエキスによる美容ドリンク、サプリメントの場合は問題ありません。
美肌やエイジングケアには漢方もおすすめ
美肌や老化防止に対する内側からのアプローチとしては、漢方薬もおすすめです。
肌トラブルや老化は、「加齢によって内臓の機能が低下し、皮膚に栄養が届いていない」「水分のバランスが乱れたことで潤いが減ってしまった」などの原因が考えられます。
漢方薬では血流や水(すい)の巡りをよくすることで、全身に栄養を届け肌のハリをよくしたり、潤いを取り戻したりするなどのアプローチを行います。
加えて、代謝を上げ、自律神経を整えることで、疲れにくくストレスに強いからだを手に入れることもできるでしょう。
もちろん、バランスのとれた食事や毎日の運動で体質改善を目指せるようでしたら、それに越したことはありません。しかし、忙しい毎日のなかで食事の工夫をしたり運動をしたりするのは、なかなかハードルが高いという方も多いでしょう。
漢方薬であれば、自分に合ったものを選んで毎日飲むことで望ましい体質を目指すことができるので、忙しい人でも手軽に体質改善を始められますね。
<美肌や老化防止におすすめの漢方薬>
桂枝茯苓丸加薏苡仁(けいしぶくりょうがんかよくいにん)
比較的体力があり、肩こり、頭重、めまい、のぼせ、足冷えなどがある方のニキビ、シミ、手足の湿疹に効果的な漢方薬です。
漢方では、「血(けつ)」が全身を巡り各組織や器官に栄養を届けると考えられています。「血」の巡りが悪くなると栄養が十分に届けられなくなり、シミなどの色素沈着や肌の湿疹などが出やすくなると考えられます。桂枝茯苓丸加薏苡仁は「血」の巡りを良くすることで肌に栄養が届くのを助ける働きが期待できます。
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【第2類医薬品】「クラシエ」漢方桂枝茯苓丸料加ヨク苡仁エキス錠 48錠
当帰飲子(とうきいんし)
体力が中等度以下で、冷え性、肌の乾燥がある方の湿疹、皮膚炎、かゆみに効果的な漢方薬です。
全身を巡る「血」が不足すると各器官への栄養が不足して、肌にはシミなどの色素沈着とともに乾燥が起こり、かゆみが生じるようになります。当帰飲子は「血」を補う働きの生薬を中心に、からだの活力となる「気」を補う生薬と、かゆみを止める生薬を配合しており、肌の乾燥によるトラブルに効果的な漢方薬です。
どの漢方薬が自分に合っているのかを見極めるためには、漢方に精通した薬剤師の力を借りるのがおすすめです。もし合っていなければ、目指している健康状態を手に入れられないばかりか、副作用が起こることもあります。
最近では、オンライン上で漢方の相談ができるサービスもでてきています。
漢方に詳しい薬剤師がAIを活用し、個人に効く漢方薬を見極めてくれ、お手頃価格で自宅まで郵送してくれる「あんしん漢方」などのオンライン漢方サービスに、一度相談してみるのもいいでしょう。
自然由来の栄養をたっぷり含んだプラセンタには多くの効果があります。プラセンタの注意点も確認したうえで、上手に生活に取り入れてみるのも良いですね。
<この記事を書いた人>
皮膚科医 金城 里美
医師/薬剤師
東京大学薬学部卒業後、医師を目指して、東京医科歯科大学医学部に入学。
体、精神とも関わって多様に現れる皮膚の病態に興味を持ち、皮膚科医の道を選ぶ。卒業後、大学病院、総合病院、クリニックでの皮膚科勤務を経て、一般皮膚科から美容皮膚科まで皮膚科領域の診療を幅広く行う。現在、総合病院の皮膚科常勤医として勤務。
皮膚がより良くなることで、その人の毎日がより明るくなることを目指して日々診療を行う。
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