なかなか寝つけず、寝たと思っても夜中に目が覚めてしっかり眠れません【高尾美穂先生のお悩み処方箋】

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産婦人科医の高尾美穂先生が、相談者の心に寄り添って優しくアドバイス!Mart読者世代である30~40代女性の人には言いづらいお悩みにお答えいただきます。第12回は、眠りが浅く熟睡できない悩みについてです!


教えてくれたのは
高尾美穂先生
産婦人科専門医・婦人科スポーツドクター・ ヨガ講師。産婦人科専門医として、女性の健 康をサポートしつつ、それぞれのライフステージ・ライフスタイルに合った治療を提案す る一方、スポーツドクターとして、女性のプロアスリートへのサポートも行っている。

【相談テーマ】最近、眠りが浅く熟睡できません

読者プロフィール写真

相談者:Mさん(39歳)
大阪府在住
13歳、6歳の母
パート

眠くなっても昼寝は我慢!日中は体を動かすようにしましょう

Mさん:最近眠りが浅い気がしますし、あまり熟睡できないんです……。いつもだいたい3時間おきに、ひどいときは1時間おきに目が覚めてしまいます。トイレに行きたくなって起きてしまうこともあります。

高尾先生:40代になると女性は眠りが浅くなり、熟眠感が下がるという研究結果があります。Mさんは39歳なので、その傾向がすでに出ているのかもしれませんね。日中はしっかりと体を動かしていますか?

Mさん:実は、コロナ禍や子どものリモート授業が増えたのを機に、仕事を大幅に減らしました。その影響で外に出たり電車に乗ったり、といった機会が減った分、以前よりもだいぶ運動量が減ったと思います。

高尾先生:そうだったんですね。その影響は大きいかもしれません。人間は疲れていないと、熟睡することができません。コロナ禍でリモートワークになり動く量が減った人の中には、同じような悩みの人が多いかもしれませんね。Mさんはお昼寝をすることはありますか?

Mさん:夜に眠れないせいで日中にどうしても眠くなってしまうので、辛いときは昼寝をするときもあります。

高尾先生:しっかり眠れていないと、昼間は頭が働かないし大変ですよね。辛いと思いますが、なんとか昼寝せず起きるようにしてみてください。人間は目を覚ましている間に、睡眠物質と呼ばれる物質を脳に蓄積することで眠気を催します。特に夕寝をしてしまうと、せっかく溜まった睡眠物質をそのタイミングで使ってしまうことに。そのため夜、眠りたいときにさらに眠れなくなってしまいます。

Mさん:ちょっとだけ、と思って眠ったのもよくなかったんですね……。

高尾先生:まずは、日中に眠くなったら昼寝をせず散歩するなど、体を動かしてみましょう。太陽の光を浴びて体温を上げると、日中は交感神経が活発になります。規則正しい生活を送ることで自律神経が整い、夜は心や体をリラックスさせる副交感神経が優位に働くようになり、眠りにつきやすくなりますよ。どうしても睡眠時間が足りていない場合のお昼寝は15時までにして、長く寝すぎないように気をつけてください。またトイレで目が覚めないように、夜は意識的に摂る水分量を減らすようにしてみてくださいね。

Mさん:早速今日から心がけてみようと思います。ところで、今は0時半に布団に入り、7時に起きることが多いです。間に目が覚めてしまっていますが、これで睡眠時間は足りるのでしょうか?どれくらいの時間、眠るのが理想ですか?

高尾先生:成人は7〜9時間睡眠が理想とされているので、できれば睡眠のための時間を7時間半は確保しましょう。お布団に入ったからといってすぐに眠れるわけではないので、ここからさらに睡眠時間は減ります。7時に起きなければいけないなら、23時半には布団に入るように、意識してみてください。

高尾美穂先生

不安を取り除いたり、心がとらわれ過ぎないよう心がけて

Mさん:眠りが浅くなったのはコロナ禍になってからなのですが、メンタル的なことも関係がありますか?

高尾先生:心に不安があると眠れないというのは、データでも出ています。Mさんは、眠れないことのほかにも気になる症状はありますか?

Mさん:喉のつまりを感じることもあって……。

高尾先生:それも不安からくる代表的な症状ですね。不安が原因でさまざまな症状が出る場合、いちばんの治療法はその原因を取り除くこと。考え方や気持ちの持ちようを変えることが大切です。

Mさん:そうなんですね。具体的にどうしたらいいのでしょうか?

高尾先生:Mさんが不安に思っていることがあるならば、まずはそれを紙に書き出してみましょう。もし自分が努力して解決、軽減する不安であれば、どうすれば解決できるか考えて努力してみましょう。でも、コロナ禍や天候など自分でどうにもできない不安であれば、悩んでいても事態が変わることは期待できないですよね。そんなときは、気分転換に体を動かしたり、夢中になれるものを見つけて、深く考えすぎないように心がけてみてください。

Mさん:できることからやってみようと思います。ちなみに、寝つけないときにスマホを見てしまうことがあるのですが……。これはやっぱりよくないですか?

高尾先生:スマホが発するブルーライトは、太陽光にも含まれるくらい明るいものです。そのため眠れないときに見るのは、やはりおすすめできないですね。落ち着いた音楽や好きな香りなどでリラックスする方が、眠りやすくなると思いますよ。

Mさん:眠れないときにソファに移動することもあるのですが、それもダメですか?

高尾先生:もし夜中に目が覚めてベッドでは眠れないと思ったら、明かりを落としたまま場所を変えるのは気分転換にもなっていいと思います。眠くなったらベッドに戻って、寝てみてくださいね。

Mさん:わかりました。いただいたアドバイスを試してがんばってみます!

高尾先生:ぜひいろいろ試してみてくださいね。睡眠のは努力してもすぐによくなるものではありません。でも「自分はがんばっているのによくならない」と思うことが、いちばんよくありません。「少しでも寝られてよかった」「前よりもがんばれている」と、いいことに目を向けて、気持ちを前向きに過ごしてくださいね。あまりにも辛いようであれば、睡眠外来などで相談してみるのもいいと思いますよ。

【高尾先生のお悩み処方箋】眠りが浅く熟睡できないときにできること

1 日中はできるだけ動いて体を疲れさせる

2 夕寝は夜の眠りの妨げになるのでNG!

3 不安は解決に向け努力する、または考えすぎないようにする

4 眠れないと思いつめすぎず、今の自分も認めよう

 

【相談を終えて】昼寝はせずに体を動かしてみます!

これまでは夜に熟睡できていない分、昼間の仕事や家事がひと段落したときにソファに座ると、うとうとしてつい昼寝してしまうことが多かったです。でも、眠いと感じたらベランダに出てみたり、少し散歩に出かけたりしてみるようにします!

ウォーキング

眠る時間も急に大幅に時間を前倒しするのはむずかしいですが、30分でも早く布団に入れるよう心がけたいです。そうすれば、たとえ眠れなくても「あと○時間しか寝られない…」…という不安が減らせそうだなと思いました。

撮影/中林 香 取材・文/酒井明子

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